44発目 ルーツ
「くっそせっかく顔がいい女抱けるとこだったのにな」
「それな、でもあいつを敵に回してまで抱く相手でもないだろ」
「確かになー」
うっすらと空き教室から声が聞こえる。
唯我が持ってきた情報は正しかったようだな。
「あの喧嘩しか脳がないゴミ本当に厄介だな。俺らで1回フクロにするか? 数用意すりゃ勝てるっしょ」
「あ? 誰がどのゴミをフクロにするって?」
「ひっ!? 獅童澪!!?? なんでここに?」
空き教室で堂々と話すクズどもは、オレの登場に顔を青くする。
「オレがいたら不都合か? この犯罪者どもが」
「は、はぁ? 何が犯罪なんですかぁ? 変な言いがかりやめてくださーい」
「おいお前やめとけって……殺されんぞ」
怯え散らかす奴らだけだと思ったが、中にはいい度胸したクズも紛れているらしい。
「変な言いがかりつけてくるこいつが悪くない? お前ら囲め、ここでやっちまうぞ」
1人がそう指示すると、ニヤケヅラを浮かべて数人がオレを取り囲む。全く、この程度で勝てると思ってんのかよ。
「おら死ねや獅童!」
「ここに尺を割くのはエンタメじゃないんでな。素早くくたばれよ」
***
〈ユリリサイド〉
「え……? 退学?」
「そうみたい。さっき先生と親御さんがきて謝罪と報告に来たのよ。今、被害者の家に回ってるらしいわよ」
「あーし意味分かんないんだけど……」
なんで急に?
あの非道でモラルとかもないような人間の親が謝罪? 意味がわかんないんだけど。
「母さんも良く分からないんだけど、獅童くん……? って子が被害者たちのために動いてくれたそうよ」
え、あいつらが怯えてた人? 微かに聞いた名前が確か獅童だった気がする。
「今どきいるのねぇ、人のために動ける子」
あーしのためだけじゃないことは分かってる。
もしかしたら恋人が被害にあってキレてたのかもしれない。だけど、どうして?
あーし、めっちゃトキメイてる!
どうしよう、あーし、すごい気持ち伝えたい! 彼女がいてもいい! いや、極力いてほしくないけど。伝えたいのこの気持ち!
「――って感じであーしはお姉さまに惚れたわけ!」
「あら素敵じゃない。分かるわよその乙女心」
「そんな筋肉質なのに分かるのか?」
おねーさま達が所持する魔法アイテムのおかげで穏便な野営。
みんなで料理しながら談笑している。
コブタちゃんはフライパンを振りながらあーしらの会話に口を挟んでる。
「アタイは生前女よ? 分かるわよ乙女心くらい」
「マジか!?」
「あーしは立ち振る舞いとかで薄々感じてたよ、ベイクが元々は女性だって」
普通分かるでしょ。
やっぱコブタちゃんは雑魚。
あーしが心の中でディスったのを察したのかコブタちゃんは悔しそうにあーしを睨んでる。
「人間を外見で判断してちゃダメよミスターソロ」
「そうだよな、悪かった」
「あら素直じゃない、いいわね」
あーしには反抗しかしないくせにコブタちゃんは素直に謝ってチャーハンを机にならべた。
「ミオンたちはまだお説教されてんの?」
「そうみたいよ。ママさんにこってりお説教されて、ミスターダートルが鍛え直しという体でボコボコにしてるわよ」
「おねーさま怪我してないかな……」
さっきから外で振動が聞こえる。
激しい特訓が行われているのが肌で感じれる。おねーさまが無事かどうかしか気にならない。
「ミオン、こってりしぼられてるんだろな」
「ミスミオンはきっとどんなお説教をされても自分のスタイルを曲げる人間じゃなさそうだけどね。ミスライラも」
「良く分かってるな、まじでその通り」
2人は既に分かりあったように言葉を交わして美味しそうにコブタちゃん作のチャーハンを頬張っていた。
……悔しいけど美味しいじゃん。
「お、美味いって顔してるな地雷女」
「うっさい、レシピ教えろよ」
「うわ、可愛げなさすぎだろ」
「これも可愛さよミスターソロ」
ベイクは楽しげに笑みを浮かべている。
あーしの良さを理解してくれる人大好き。でもおねーさまが1番大好き。
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