第008話 高貴な狼の詩

・リーエ:二十一歳、鬱病に苦しむ徹攻兵、一年生

・チーヤ:十九歳、リーエの案内役、二年生



 チーヤが玉砂利の敷かれた床の上に膝を立てると、祈りの石の上に両肘を立て、両手の指を組みあせて額の前に掲げる。

 そして、静かに祈りを捧げる。

 「北の民が我らを巨人とののしる時、

 南の民が我らを矮人とあざける時、

 東の民が我らを獣とそしる時、

 西の民が我らを魔物とけなす時、

 外からの民が正義を背負い、我らの大地を狭めんと襲いかかる時、

 その狼は暗き森の奥深くより現れる。

 気高き狼は現れる。

 迷いを心に抱き、

 郷土を愛する戦士達は、

 黒金のたてがみを持つ狼に跨がり、

 戦地を縦横無尽に駆け巡る。

 もしその狼死せる時、

 戦士は狼の皮を剥ぎ、

 その身にまといて激しく戦う。

 戦士は郷土を守り抜く」

 ゆっくりと落ちついてそこまでの祈りを捧げると、チーヤが立ちあがる。

 「徹攻兵はね、高貴な狼とも呼ばれているの。

 この国の伝統を守るために、ともに高め合いましょう」

 リーエは、なぜだかわからないが、なにか自分を認めてあげいい気がした。

 「はい、がんばります」

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