第46話 フェリス王国編――ヤバイ再び

『アリス、出来たよ~』

『アリス、フーマ出来タ』

「わぁ、凄い! 二人ともありがとう!!」


 ユーランとフーマが、石を仕上げてくれたことにお礼を言ったアリスは、二人をゆっくりと撫でた。

 撫でられたことが嬉しかったらしい二人は、もっともっととアリスにせがむ。

 そんな二人にアリスは答え、かなりの時間を使って二人を撫でまわした。 


 そうして、ひとしきり撫でたアリスは、出来たボディバックを持ってユーラン、フーマと共に宝飾台へと移動する。

 宝飾台へと移動したアリスは、レッサーアリゲーターの皮の色——ターコイズブルーに合わせ、少しだけ濃い水色と黄色の皮紐を取り出した。

 

 アリスは取り出した革紐を二本合わせて、四葉のクローバの形に叶結びかのうで結んでいく。

 少し輪の大きさが違うが、自分なりに良くできたとアリスは思う事にした。


 次にミスリルの鎖を五本取り出す。

 ミスリルの鎖とユーランに作って貰ったマカライト製の四つ葉のクローバーを机に置く。

 そしてアリスは、それの側面をミスリルで包み、後ろには四か所に刃のついた留め具があるようにイメージした。

 

「どうかな~? ん~、止まるとは思うけど……微妙かも? これならいっそ、一緒にくっつけた方がよさそう!」


 出来栄えが微妙だと思ったアリスは、叶結びで作った四つ葉の革紐とさっき作ったミスリルとマカライト製の四つ葉。

 そして、フーマに作って貰ったヘマライトの丸い球を四つ、ミスリルでできた鎖を二つ机の上に置きなす。


 まずはしっかりとイメージを持つ。

 叶結びで作った四つ葉の結び目の上に、マカライト製四つ葉がミスリルでコーティングされ、紐が出ている部分から後ろへ回り抱き込むように。

 更に、紐先にヘマライト、ミスリル製の飾り筒が二ずつぶら下がる。


 ぱぁ、と光が上がりすべての材料が机の上から消えると再び、アリスのイメージ通りの飾り紐が現れた。


「おぉ、凄くキレイ!!」

『アリス、凄イ』

『アリス、凄く綺麗だね~』


 出来上がりを喜んでいたアリスの肩の上で、ユーランとフーマも一緒になって喜び跳ねる。

 

「よし、仕上げだね!」


 アリスは気合を入れ、ボディバックと出来上がったばかりの飾り紐、余りまくっているミスリルの鎖を五本机に置いた。

 そうして、鞄の側面——ファスナーが無い方にミスリル製の留め具を作り、そこからミスリルの鎖で飾り紐を繋ぐようイメージする。

 再びぱぁ、と机の上が光り、鞄や飾り紐が消える。

 そして、ついにアリスはジェイク用のボディバックを手に入れた。


「出来たぁ!! ボディバックだから、出来るだけ中身が入って軽い物がいいよね! これはおばあちゃんに頼むとして、背中側が守れるようになればいいなぁ~。後でお父さんに相だ――」


 相談しようねと言いかけたアリスは、途中で言葉を止める。

 何故なら、ボディバックがブレスレットの時同様、一瞬眩く光ったからだ。


「どうしよう……鑑定するのが怖い」


 そう言ってもみるしかないと覚悟を決めたアリスは、机の上にあるボディバックを手に取った。

 鑑定と頭の中でスキル名を呟きボディバックを見る。


============================= 

 名前 : 自動出し入れ機能付き・ボディバック

 所有者 : ????

 材料 : レッサーアリゲーター皮、革紐(黄色、水色)

      最上級ミスリル銀、最上級マカライト

      上級ヘマライト 

 製作者 : アリス・インシェス

 付与者 : ユーラン フーマ アリス・インシェス

 効果 : 水属性攻撃無効 水属性相性向上

      風属性相性向上 移動速度向上 完全防水

      荷重軽減 収納(一〇メートル四方)

 技能 : 背面盾バックシールド

=============================


 これは……まずいと言うよりも、もう何がなんだかわからない。

 呆然と効果や技能を見ていたアリスは、考えることを放棄した。

 とりあえずボディバックをストレージにしまったアリスは、どうしても甘いものが食べたいと神のキッチンに移動する。


「よろしくお願いします」


 キッチンに入ったアリスは、一言キッチンさんに挨拶する。

 今アリスがどうしても食べたい物、それはクレープだ!

 

「薄力粉、牛乳、卵、砂糖とボール、それから泡だて器を出してください」


 キッチンが出してくれたボールにすべての材料を入れたアリスは、泡だて器を持ち今は何も考えたくないと無心でかき混ぜる。

 小麦粉のだまが無くなり綺麗に混ざったところで、フライパンを出して貰い薄く油をひきいったんフライパンを下ろす。

 下ろしたフライパンにお玉で一杯半分生地を入れたら、あとは伸ばしてきつね色になるまで焼く。

 裏側も焼けたら、トレーもしくはラップの上に取り出して次を焼く。


「キッチンさん、あとはよろしくお願いします。その間にバナナと苺、溶かしたチョコレート、あといつもの生クリームをください」

『アリス、ボクも食べたい』

『フーマモ、フーマモ食ベル』

「ユーランとフーマは何がいい? 果物かな?」

『うん! 甘い果物が良いな~』

『フーマモ、甘イ食ベル』

「うん。じゃぁ、キッチンさん完熟マンゴーを二つ下さい」


 キッチンに頼み完熟マンゴーを出して貰ったアリスは、種を避けるようにしてマンゴーを切るとさいの目の形に包丁を入れる。

 

「二人とも、マンゴーの端を持って?」

『持ったよー』

『フーマモ持ッタ』

「そしたら、下から真ん中を上に押して」

『おー!! マンゴーの実が出てきたー!!』

『フーマモ、フーマモ出来タ!』

「ふふっ、二人とも上手にできたね~」


 興奮するユーランとフーマの頭を撫でたアリスはバナナの皮を剥き、包丁で適当な暑さに切る。

 そして、クレープ生地の中央から上に生クリーム、溶かしたチョコレート、バナナを乗せて半分に折り、くるくるっと巻けばクレープの出来上がりだ。


「キッチンさん、苺は半分に切ってね。後は同じようにして作って下さい」


 後はキッチンに頼み、アリスは早速クレープを食す。

 焼いた生地はもちもちっと、生クリームはほんのり甘く、バナナは完熟で、チョコレートの甘さが更に引き立つ。


「ん~、美味しい!!」

『コレ、フーマ好キ』

『ボクも~』


 ボディバックに変な機能がいっぱいついてしまったけれど、こうして甘いものを食べれるって幸せだな~とアリスは思った。

 

 大量に出来たクレープの一部を、手紙と一緒にメールでシュカに送る。

 

「メール」


 ウィンドウが開き、宛先を見たアリスは苦笑いを浮かべる。

 宛先には、”ルールシュカ” と記入されていた。

 本文には手紙を入れ、添付と言う部分にクレープを各五個ずつ入れる。

 そして、送信と言うボタンを押せば小さな小鳥が飛び立っていった。


 ルールシュカとの約束を果たせたことにホッと胸を撫でおろしたアリスは、ボディバックの存在を忘れたまま馬車へ戻ることにした。

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