○二日目(1)○

 「んん...」

目が覚めた。

「ふぁぁ...っ」

つられて一琥も起き、あくびをする。

となりを見た。


 蕾花はいなかった。いるわけが、なかった。

昨日の夜、無駄に期待をつのらせて、朝起きたらこれだ。


 絶望感。


朝、起きて、こんなに絶望するの?はじめてだよ。

「舞華...」

うつむいていた顔を、一琥に向ける。

「おはよう」

「...おはよう」

あいさつしてくれる相手がいる。嬉しい、しか言いようがない。


「一琥、スマホ持ってたっけ?」

「あ~、えっと...」

一琥が、ポケットの中をさがす。スマホは、ある方が絶対いい。

「あった‼」

「よかった...。今、何時?」

時間は、把握しておかないと。

「えっと、7時6分......うわっ!」

「えっ⁉...何⁉」

急に悲鳴をあげる一琥。

「...充電が、切れちゃった...」

「うわ...」

もう、それは最悪の事態だ。


「あ、モバ充は?」

「えっと...」

「...公園のバックの中だ...」

「う~ん...」

これは...取りに行った方がいいかな...。

私は、立ち上がって、

「公園に、行こう...!取りに行こう!」

「...っ」

こうして、路地裏を抜けた。

太陽がまぶしい。

「急ごう!」

「うんっ」


頑張って走ろうとするが、昨日なんにも食べてないせいか、力が出ない。

そして、なんとか走っていると、蕾花のことを思い出してしまう。

足を無理矢理前に出していたが、公園につくまでに、力つきていた。

やっとのことで、あのベンチにつき、バックを手に入れた。

みんなの荷物は、もうなかった。すでに持って行ったのかもしれない。無事なのかもしれない。いや、無事だ。きっと。


「そこの女の子!!ちょっといいかな?」


私達に声をかけたのだろうか。ふり向いたら、分かった。

警察だ。

こっちに、向かってきてる。

…あれ? な、なんか…息が…苦しい…

「はぁっ…はぁっ…う…はぁっ…」

呼吸がうまくできてない。

苦しい。

「…舞華!!行こう!」

腕を引っ張られる。これで何回目だろ。

重たい足を動かす。

おっ…追いかけられてるっ…!!

「一琥っ!もっと早く逃げよう!!」

私は言った。

本当に、最後の気力をふりしぼって、全力で走った。

もう、警察は追ってこなかった。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

つかれた。もう、本当に限界だ。


「だいじょぉぶ?おねーちゃんっ」


誰っと、すぐ、声のするほうに顔を向けた。

歩道の真ん中でたおれこんでいるんだ。声をかけられて当然。

でも、こんなちっちゃい男の子に「大丈夫?」なんて、ちょっと情けない気がする。

「大丈夫か?」「何かあったの?」

よく見ると、4人家族のようだ。優しそうなお母さんとお父さん。かわいい幼稚園児くらいの男の子と、私と一緒。もしくは年上の女の子。でも、その女の子だけ、3人と何かがちがうような…。


「ずいぶんつかれているようだけど…」

母親が言った。

「何かあったのかい?」

父親が言う。

話すのが、怖かった。

もしかしたら、誰かが、聞いているかも。

もしかしたら、白い女の仲間がいるかも。

本当に、はなしていいのか。優しそうだけど…。


「実は…」


一琥が口を開いた。


「家出してきちゃったんです」


「え…」

思わず声がもれた。すると一琥が、なにも言わずにこちらを見る。合わせろってことか。

「あら、そうなの?」

「家によっていくかい?」

「その前に、おうちに連絡しなきゃ…」

わ…まじの雰囲気だ。

「だ、大丈夫です。すぐ帰りはしないけど、家がすぐ近くなんで」

おぉ、一琥、言った…。

「…そう。でも、これを受け取ってくれないかしら?」

母親が肩にかけていたバックから、白い箱を取り出した。

手の平サイズの小さい箱。

ひとまず受け取る。

「あけていいですか?」

「えぇ」


パカッ…


「それはね、一粒食べれば、1ヶ月お腹が空かないアメなのよ」

アメは、カラフルだった。赤、青、黄、緑、黄緑、水色、それに紫。ピンクもある。

「あやしいとは思うけど、そのアメ、役に立つといいわ」

「気を付けて、できるだけはやく帰るんだぞ〜」

「おねーちゃん、ばいばぁ〜い」

「ありがと〜」


また、住宅街の路地裏にやってきた。

お腹が空いた。今すぐにでも、このアメを食べたい。

でも…危険なものかもしれない。だいたい、、アメ一粒で1ヶ月もつなんて、考えられない…。一琥もつかれきっている。

箱を、ぎゅっとにぎりしめた。


「み〜つけた」

「ひっ…」

突然の声。おそるおそる見ると、あの女の子だった。

「あ…う、あ…」

「…何か用?」

とまどう私に対して、一琥が冷静に言う。

「用も何も、あなたたちを少し助けようと思って」

「…はぁ?」

何か…上から目線?

でも何か…本気っぽい。

「助けるって?」




✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄


今回はここまでです!◯二日目◯は、結構長いので、2回に切らせていただきます!では、次回もお楽しみに!ばいにっく★

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