○一日目の夜○

 路地裏にもどった私達2人は、少し、怖くなった。

 

夜になった。路地裏の夜は、思っていたよりも暗い。また、恐怖が襲ってきた。夜の大通りの、明るい街灯の下を歩きたい。そう思ったのははじめてだ。

まだ白い女を発見して、追いかけられた...という実感がわかない。そして1日目の夜だというのに、つかれきっている。...?


2日目の夜、3日目の夜も...あるのか...?

白い女から逃げ切れるのか...?

「これ、いつまで続くんだろう...」

一琥に、聞いてみた。

「蕾花が殺されて、追いかけられて、今は路地裏に隠れて」

体が苦しい。今日一日におきたことの整理がつかない。脳みそが、ぐるぐるする。


「...明けない夜はない」

「え?」

「止まない雨はない」

「...夜?雨?」

なんのことか、よく分からない。

「真っ暗な夜だって、いつかは朝日が昇る。土砂降りの雨だっていつかは止んで、青空に虹がかかる」

そういうことか。


「「この状況も、いつかはかわる。」」


2人の心がつながった。いつもつながってると思ってた。そのとおりだけど、今、ここで、実感できた気がする。

この状況がかわる「いつか」が、いつくるかわからないけど、でも、かわる日はくる。絶対くる。

「というか、一琥って、すごい元気付けるのうまいよね」

「え、なんで?」

「いや、私だったら、大丈夫だよとかで終わっちゃうけどさ、明けない夜はない!とか言われたら...ものすごい元気が出る‼」

「え...私、そんなこと言ってたの...?恥ずかしすぎ...」

「あははっ、そんなことないってっ!大丈夫っ!」

「あははっ...そろそろ、ねよっか」

「うん」

布団でねない夜は、はじめてかもしれない。足はのばせるけど、やっぱり壁にもたれてねる、というのは、違和感がある。


「...でもさ、大丈夫、が一番元気付けられるかも」

一琥がぼそっと言った。

「え、何て?」

「何でもないよ。舞華、おやすみ」

「うん...おやすみ」

名前を呼んでくれる安心感がハンパない。

一琥がとなりにいることを確認して、蕾花が、朝起きたらとなりにいることを願って、ゆっくり目を閉じた。


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