○前向きな人○

 「え...私、が...?」

「あんたしかいないでしょ」

一琥が...そんなこと言うなんて...。意外。でも、なんか褒められてめっちゃ嬉しい。

「前向きな人からって、勇気とか、希望とか、もらえる気がする」

なるほど。確かに、そうだ。

「でも何で急に...」

「実はさ、私、転校してきたでしょ。3年生のとき」

そう。一琥は転校してきた。3年生のとき、同じクラスだったが、もう、いかにもクールキャラで話しかけづらいなぁと思って、あまり関わろうとしなかった。でも、ある日グループ活動で同じになって、話し合いを進めるとき、みんなをまとめてくれるし、はずかしがらずにハキハキしゃべってくれるし、本当に、尊敬するようになった。

「親の転勤〜とか言ってここに来たけど本当は親が死んで親戚にひきとられただけなの」

「...そうだったの...?」

そんなこと、思っても見なかった。

「ふふっ...な〜んか、恥ずかしいなぁ〜...」

はずかしい?どういうこと?

「なんか、みんなの役に立とうと必死で...ときどき、みんながうらやましくなる」

「うらやましい...?」

「うん。乃茜は、ダメなところはダメって言えるし、桜美は、いつも周りを気にしてくれるし、結菜は、いつもみんなが楽しめる遊びを提案してくれるし、凜は、1人1人ぼ悩みとかにちゃんと向き合ってくれるし...」


一琥の観察力がすごい。

「そして......蕾花は、ドジだけど優しい。舞華は...もう、本当にたよりになる」

ううん。そんなことない...。一琥、一琥は、全部もってるよ。

「一琥は...」

もっと自分を大事にして。もっと自分と向き合って。

そう言いたいけど、なんだか喉の奥がツンとして...

「ちょっ...舞華っ!!なんで泣くのっ...」

そう言う一琥だって、涙目だ。

「えへっ...褒めてくれてありがとう。でも...一琥も、おんなじくらい、すごい...いい子だよ...。尊敬してる!」

「...ありがとう!!」

尊敬するよ。一琥は、みんなとおんなじ、それ以上かも。前向きだよ。たとえ一琥が前向きじゃなかったとしても、ずっと親友。大丈夫。ずっと一緒だから。

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