第六話~第十話

第六話 痣 


ノアは食事を作り終わるとユキを呼び食事をした。

ユキ「そういえばこの部屋にはベットが無いけど昨日何処で寝てたの?」

ノア「寝てない」

ユキ「え?」

ノア「言ったろ?昨日は忙しかった」

ユキ「昨日…うっ」

ユキは両親の死体を思い出し吐いてしまう…

ノア「キツイと思うがお前には選択肢がある…一つ目、俺の弟子になり悪魔のクソ共に鉛玉ぶち込む…二つ目、このいざこざが終わったら援助を受けながら普通の生活を送る…どっちが良い?」

ユキ「…私が悪魔を殺せば…私みたいな人は減りますか…?」

ノア「減るだろうな…ほんの少しだがな、それこそ砂漠の砂をバケツで運び砂漠を無くせるかと言う事に似ている…」

ユキ「それでも減るなら…」

ノア「おい、人の為に戦うなどと簡単に口にするな…他の奴も死ぬがお前はもっと残酷な死に方をする事になる」

ユキ「ならはっきり言うわ、悪魔を殺したい」

ノアはユキの目を覗く…

ノア(ほぉ…コイツは…)

ノア「良いだろう、飯食い終わったら片付けて寝ろ、明日からお前にも悪魔祓いを教えてやる」

そう言ってノアは奥の扉を開く

そこには巨大な十字架とその下に大きなベットがあった

ノア「ここで寝ろ、まぁベットは一つしか無いが他の部屋より安全だ」

ユキ「まだ他にも部屋があるの?」

ノア「秘密だ」

ユキがノアの方を見るとシャツを脱ぎ上半身が裸体になったノアが居た…

ユキ(え?刺青…?身体中に黒い模様が…)

ユキ「刺青入れてるの?」

ノア「痣だ」


第七話 理由


ユキ「でも痣にしては…」

ノア「これは俺がまだ幼い頃悪魔に飼育されていた時につけられた呪いみたいなものさ…」

ユキ「飼育…?」

ノア「あぁ、俺の親は愚かにも悪魔を呼び出し契約を結ぼうとした…だが器が脆く侵食され悪魔に受肉された」

ユキ「それって…」

ノア「大丈夫さ、しっかり母親は殺された…俺の目の前で悪魔に受肉され形が変化していく父親がその手で母親の口を裂き腹を割り内臓を貪り死にきる事もできず声にもならないような絶叫を上げ死んだ」

ユキ「…」

ノア「俺はまだ鮮明に覚えている」

ノア「人はその精神性により体や魂の形が変わる…俺はそれを見て悪魔に寄っていたらしい…だから生かされた…首輪をつけられ、汚物に塗れ浴びる血に温度を感じなくなった頃、俺はある悪魔祓いに助け出された…そいつに教えられて今俺は奴らを殺し回ってる」

ユキ「なんで普通を選ばなかったの…?」

ノア「母親の絶叫が頭にこびり付いて離れないんだ…だから奴らの絶叫で掻き消してる…」

ユキ「…それじゃまるで…」

ユキ(まるで…悪魔みたいじゃない…)

ノア「今日はゆっくり寝ろ、明日からは死ぬまでやって来ない最後の平穏だ」

ユキはシャワーを浴びベットに入ってもずっと考えていた…

ユキ(私も悪魔みたいになっちゃうのかな…)

ノア(丁度いい…明日は淫魔と低級悪魔の依頼だな…経験になるだろう…それに影について調べなくてはな…)

ユキ「ノアは寝ないの?」

ノア「寝る前に一服する」


第八話 教会


第三都市郊外…人里離れた場所にとてつもなく大きな森のあるこの場所には巨大な教会が潜んでいる…

グースはまるで廃墟のような古びた教会の巨大な扉をノックする…

扉の中から小さな声で「合言葉」と囁かれる…

グース「朝に月…夜に太陽…暗き光」

グースは扉に向かい囁く

直後、グースは煌びやかな教会の中にいた…

神父「御用は?」

グース「円卓と掃除屋に用がある」

神父「では円卓の方々からどうぞ、先程から待ちかねております」

グースは瞬きをすると先程とは違い暗く威圧感のある部屋に居た…

???「一体何の用だ?」

斜め上から老婆の声が聞こえる

グース「第三都市にて影と交戦しました、レリックの攻撃でも完全には祓いきれませんでした…」

直後辺りから老人達の笑い声が聞こえ始める

???「影は此方に来れない、常識ではないか…もしや其方は我らを笑わせる為に来た道化か?」

グース「ノアに依頼しました」

その言葉が広い空間に響くと同時に空気が張り詰める…

???「あの異端児か…ならば我々は尚更協力はせん…」

グースは深く笑い言い放つ…

グース「構いません…がノアに些か大き過ぎる貸しを作ることになりますな」

???「くっ…」

老人達が唇を噛む音が聞こえる…

グース「では私はこれで」

グースが瞬きをすると先程の煌びやかな教会の中にいた…


第九話 掃除屋 


神父「戻られましたか、掃除屋の方は奥の椅子に座っていらっしゃいます」

グース「ありがとう」

グースは神父に感謝すると奥へ進んだ…

???「身長174…体重89キロ…ん…片足が義足か…」

グース「貴方が…」

???「そう…私は教会の犬…いや狼かな?ま、掃除屋さ」

グース(後ろ向きで俺の身長と体重を当てた…更に義足だとも看破している…)

???「今、私が君の身長と体重を当てたと言う事を考えていたね?」

グース(何故分かる!?)

???「分かるさ、聞こえるからね」

掃除屋が椅子から立ち上がる…

グース(まさか…)

アリサ「申し遅れた、私はアリサ…史上初の女性の掃除屋だ」

グース「私はグースだ…依頼がある」

アリサ「ノアに協力してゼノの影を祓うんだろう?」

グース「心が読めるのか?」

アリサ「心以外もだ」

アリサ「私の特性は…」

???「師匠…」

アリサ「なんだ?」

???「それ以上は教える必要が無いかと…」

グース「其方の方は?」

???「お前は知る必要が無いだろう?」

その男はグースを睨む

刹那、男がぶん殴られる…

アリサ「私の弟子が失礼をした…ノアに協力はするが一つ条件がある…そこで伸びてる私の弟子も同行させたい…」

グース「…ノアは歓迎しないだろうが奴も弟子を取ったみたいだし仲良くできるだろう」

アリサ「交渉成立だ…」


第十話 仕事


日が上り始めた頃…

ノア「起きろ…仕事だ」

ノアはユキを起こしていた…

ユキ「ん〜今何時?」

ノア「5時だ…」

ユキ「いつもこんなに早いの…?」

ユキは目を擦りながら立ち上がる

ノア「いや…」

ユキ「ならどうして?新人いびり?」

ノア「サキュバスは朝方にある場所に帰る…その場所の中は中立だから殺せないが外は別だ…」

ユキ「サキュバス?」

ノア「あぁ、殺すかは別だが兎に角行くぞ」

ノアはユキに顔を洗わせ髪を整えさせると白いシャツと黒いズボンと黒いネクタイを渡した…

ノア「着ろ、早くな」

ユキ「は〜い」

ユキが着替えネクタイを締めているとノアがコートを羽織り此方にやってきた…

ノア「次は武器だ」

ノアはユキを連れ部屋の地下に向かった…

そこには巨大な金庫の扉があった…

ノアは手をかざすと取手が回転し扉が開く…

扉が開くとそこにはとんでも無い量の武器や瓶に入った色とりどりの水や十字架や縄など沢山の物があった…

ノア「お前はこれが良いだろう…」

そう言ってノアはユキに杖のように長い十字架を渡した…

ユキ「これは?ピカって光ったりするの?」

ノア「それは剣だ」

ノア「レリックでは無いが血を吸って刃が赤く染まり強靱になっていく」

ユキ「へ〜」

ノア「行くぞ」

ノアはユキを連れ部屋を出ると青がかったグレーに霧がかかった街に出た…

ユキ(この時期なのに寒っ!)

ノア「心配するな…この仕事の帰りにテーラーに寄ってやる」

ノア「居たな…ユキ、お前はこの道の先にいるあの女をその剣で刺せ…」

ユキ「え…?」

ノア「心配ない…どうやらクイーンが一枚噛んでるみたいだからな」

ユキ「でも唯の人だったら…」

ノア「躊躇うな、躊躇えば次の瞬間肉塊になるのはお前だ」

ユキ「でも…」

ノア「お前がやらないなら俺が撃ち殺すだけだ、結末は変わらない」

ユキ(でも…)

ユキの目には涙の膜ができていた…

ノア「しょうがないな…」

サキュバス「えっ!?まさかお前は悪魔殺しのノア!!」

ノア「気が付かれたな…」

ノアはタバコ咥え火をつけると歪な形をしたリボルバーを取り出す…

サキュバスは翼を生やし飛びとうとしていた…

ノア「羽虫が…」

直後宙に飛び立ったサキュバスの羽が2本とも吹き飛ぶ…

ノア「落ちるのは飛んだから…殺されるのは悪魔だからだ…」

サキュバス「クソォォォォォ!痛いぃぃぃぃぃ!!」

サキュバスは地面に転がり悶絶する…

ノア「こいつらは見た目は人間だが人間じゃない、悪魔なんだ…」

ユキ「でも何か悪い事を…」

ノア「してるさ、悪魔は存在が悪だ…」

ユキ「でも、私達に気がつく前…とても幸せそうな顔をしていたわ…私がお父さんやお母さんに向けるような顔をしていた…」

ノア「そうか…だが俺にはそれが分からない、ただ悪魔を殺すだけだ」

ノアは歪な形をしたリボルバーをサキュバスに向ける…


続く

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