悪魔殺しの男
一日一話
第一話~第五話
第一話 悪魔祓いの男
時刻は夜24時ちょうど、月が地上を見下ろす中、細い路地を血を滴らせながら走る少女が居た…
ユキ「ハァ…ハァ…ハァ…ここまで来れば…逃げられた筈…」
ユキは背後を見るがそこには自分の影しか見え無かった…
ユキ「…お父さん…お母さん…うっ…」
ユキは第三都市に住む普通の3人家族であり魔力などは人並みにしかなく魔法などは使えなかった…
魔法が使えない…つまり自衛が出来ない…
何から?
そう…それは…
直後ユキは違和感を覚える…
ユキ「月は真上にあるのに…どうして影が後ろにあるの…?」
ユキは耳元で生暖かい空気を感じる…
ユキ「ひっ…いやぁ…まだ死にたく…」
恐怖に染まるユキを嘲笑うかのように耳元から笑い声が聞こえる…
ユキの肩に置かれた手は次第に首へと移動し締め始める…
ユキ「カハッ!?じにたぐなぃ!」
この世界には天使が居る…
そして悪魔も居る…
そんな世界では良くある事なのだ…
悪魔によって人間の、それも少女が惨殺されるなど…
ユキ(せっかくお父さんとお母さんが逃がしてくれたのに死にたく無い!!まだ死にたく無いぃ!)
ユキは薄れゆく意識の中見る…
少し先の街頭の下、季節外れの黒いロングコートを羽織りタバコの煙を身に纏いながら歩いてくる人影を…
???「そう良くある事さ…」
ユキの首を絞めている下級悪魔がその男の方を向く…
???「笑えよクソ野郎」
男は歪な形をしたリボルバーを下級悪魔に突きつける…
下級悪魔が首を傾げた瞬間、下級悪魔の頭は木っ端微塵に吹き飛んでいた…
ユキ(わたし…助かった…の…?)
次の瞬間ユキは意識を失っていた…
???「チッ、生きてやがる…面倒だな」
ユキが目覚めるとそこは見た事のない部屋のソファーの上だった…
???「起きたか…じゃあ帰れ」
声のする方を見ると酒を飲みながらタバコを吸っている男が居た…
ユキ「あの…」
???「礼はいらない」
ユキ「その…私…家が…無くて…」
???「それで?」
ユキ「あの…なんでもするので此処に…居させてもらえませんか?」
ユキの言葉を聞いた男は立ち上がりユキのいるソファーに近寄りユキの耳元で囁く…
???「何でもするだと?」
ユキ「はい…」
???「じゃあ溜まってるんだしてくれよ」
3時間後…
ユキ「ハァ…ハァ…やっと終わった…掃除が…」
そう3時間前…
???「じゃあ溜まってるんだしてくれよ」
ユキ(この流れってまさかそうゆう流れだよね…えっといきなり!?)
男はユキに見えるようにホウキを指さす…
???「掃除をしてくれ」
ユキ(まさかゴミが溜まってるんだ掃除してくれよだったなんて…)
ユキ「終わりました」
???「そうか…じゃあ休め」
ユキ(3時間ずっとこの人はタバコ吸ってお酒飲んでるし…)
ユキ「あの…何かご飯作りましょうか?」
???「作れるのか?」
第二話 依頼
ユキ「はい…まぁ少しは?」
???「…まぁ作れるなら作っておいてくれ、俺はこれから依頼主が来るから仕事の話をする」
ユキ「そう言えばお仕事は何をしてるんですか?」
???「あぁ…悪魔祓い(エクソシスト)だ」
ユキ(エクソシストってまさか…)
エクソシストとは悪魔祓いであると同時に人でありながら特性を持って生まれてきた言ってしまえば超人なのである…
ユキ「じゃあ特性があるんですか?」
???「いや、無い」
ユキ「…は?」
???「無いさ、俺はただの人だからな」
ユキ「それって…」
???「自殺行為…だろ?まぁ死ねるならとっくに死んでるさ」
ユキ「…」
???「話は此処までだ客が来た」
直後ドアがノックされる
???「入れ」
ドアを開け入って来たのは左足が義足の太った男だった…
グース「久しいな」
???「あぁ」
グース「今日来た理由、察しがついてるだろ?」
???「あぁ…昨日第六都市郊外にて最凶の悪魔ゼノが召喚された」
グース「ゼノ自体は暴れるつもりは無いらしいがそれに伴って下級から中級までの悪魔の動きが活発になってる」
???「知っている…昨日は忙しかったしな」
グース「あぁ、俺もだ…」
???「こんな分かりきってる事を話に来たわけじゃあるまい?」
ユキ「はいお茶よ」
空気が張り詰める中ユキはトレーに乗せた紅茶をテーブルに置く
???「…」
グース「ありがとう」
グースは紅茶を飲む
第三話 脅威
グースは紅茶を置くと口を開いた
グース「いつから茶が出るようになったんだ?どういう訳でお前みたいのにあんな気の利く子が付いてるんだ?」
男はタバコ咥え火をつける
???「昨夜襲われてるとこを通りかかって助けたからだ」
グース「ふっ…甘ちゃんになったな」
グースは瞬きをしただけである、その瞬間男が座っていた席には紫煙が漂っているだけで男の姿が見えなかった…
直後後頭部にひんやりとした銃口が突きつけられる…
???「要件を話せ…」
グース「おいおい少しからかっただけだぜノア」
ノア「30秒だ…」
グース「はぁ〜しょうがないな…」
ノア「25秒…」
グース「影が目覚めようとしてるんだ」
ノア「15秒」
グース「本来は人界には来れない筈だが奴らはゼノが来て緩くなった通路を通ってこっちに来る気らしい」
ノア「5秒」
グースは立ち上がり服を脱いで左胸を見せた…
それまで表情を変えなかったノアの眉間に皺が出来る…
ノア「この傷は…」
グース「昨夜、影を見た…人界で!下級悪魔の影に上級悪魔を祓ったことのある俺が致命傷を受けるところだった!ノア!もう時間が無い!ゼノの影を止めなくては人界が滅んでしまう!」
ノア「無理だ…」
グース「いや出来る!」
ノア「無理さ…影には魔法も効かない…光から出来た武器で無くては殺せない…それにあのゼノの影など…」
グース「だがもう私達にはお前しか居ないんだ…」
ノア「それに杞憂だ、奴程の影なら呼び出すのにかなりの力が必要だ」
第四話 蠢く者
グース「もし見つけていたら?」
ノア「墓を建てろ、手遅れだ」
グース「なぁ、ノア俺の持つレリック(光から出来た武器)は戦闘に向かないと言うか殆どのエクソシストは戦闘用のレリックを持てない…」
ノア「持てるさ、ただ力が認められず死ぬだけだ」
レリックとは…
悪魔と天使達が人界にて全面戦争をした時人を守るべく神が人界に落とした神器…故に物に見合う力が無ければ持った時点で死ぬ…
殆どのエクソシストは十字架型のレリックを持っていてそれを媒体に一時的に自身の神力を増す事ができる…
ノア「俺は…」
グース「ただの人だって?ふざけてるのか?お前は他の誰よりも悪魔を殺して来ただろ!」
ノア「話は終わりだ…」
グース「真面目に聞け!」
ノア「扉の前にいるお前、分かってるぞ入って来い」
ドアの隙間から這うように黒く暗い影が入ってくる
影が入ってきた瞬間電球がチカチカと点滅してショートする…
ユキ「キャッ!何?停電?」
ノア「グース!ユキに付け!」
グース「分かった!」
グースはユキの手を掴み目を閉じるように言う…
ユキ「どうして?」
グース「ピカっと光るんだ超新星爆発みたいにな」
グースはユキとノアの直線上に立つ…
暗闇の中ノアは落ち着き払ってタバコを咥え火をつける…
直後ノアは見えない中歪な形をしたリボルバーを取り出し狙いを定める…
ノア「火に焼かれる蛾みたいなものさ」
ノアが引き金を引くと部屋の中が白く染まり光が溢れる
第五話 イレギュラー
ノア「まさか…そんな…」
光が闇を掻き消し傲慢にも窓や扉の隙間から出た光は月明かりすら侵食する中、その影は完全には消えていなかった…
影は呻き声をあげ扉を蹴破り外に逃げ出した…
直後光が止み電球からの優しい光が戻る…
グース「どうした?」
ノア「影を逃した」
グース「なっ!?レリックを使っての攻撃で死ななかったのか?」
ノア「ダメージは有ったが完全には消滅しなかった…」
グース「まずいな…俺は"教会"に報告しに行く…」
ノア「"教会"の老人どもは重い腰を上げんだろ?」
グース「あぁ、だから"掃除屋"を呼ぶさ力にはなるだろ?」
ノア「足手纏いにはならないだろうな…」
グース「相変わらず辛口だな…まぁいい俺は行く」
ノア「こっちでも調べるさ最凶の影の器をな…」
グース「頼む」
そう言ってグースは立ち去った…
ユキ「…」
ノア「しばらく外に出るな、それから常に俺のそばに居ろ、そして何だこの皿に盛られた消し炭は…」
ユキ「さっきの停電で見えなくて…」
ノア「分かった俺が飯を作るからドアの所を掃除して蝶番を付け直してくれ…」
ユキ「分かったわ…」
ノア「…おい…作ってくれてありがとうな、さっきの紅茶も…」
ユキは振り返ると先程とは違い嬉しそうな顔をして言い放つ
ユキ「素直でよろしい!」
ノア(今夜は床で寝かせよう)
ユキはホウキを持ち木屑をはき始めた…
ノア(調子狂うな…)
続く
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