創作家達の狂宴

 数分後、灯火とうかと燃は建物のない更地に場所を移していた。


 「ここなら多少暴れても問題ないでしょ?」腰に手を当て、燃がドヤ顔をする。


 「灯火ともしび灯火とうかが振った火鋏ひばさみから炎が噴き出し、燃に迫る。


 「うわ熱ちっ!ちょ、なんであなたはそういきなり攻撃してくるのよ!あ、ちょ待、熱っつ!!」燃の言葉など聞く耳もたず、怒涛どとうの猛撃を続ける灯火。対するもえは刀程の長さをもった杓文字しゃもじを取り出し、その炎をそれで防ぎ、弾き返す。「何だそれは、巫山戯ふざけているのか?」「ちっがうわよ!これがあたしの武器!あたし趣味でお菓子作るんだけど、その時もこれ使うのよ~!どう?一石二ちょ…」「灯火。」「うわぁぁ~!!」


 話の途中でも容赦なく炎を放ってくる灯火。


 「…んもう!!何なのあなた!?流石にあたしも怒るわよ?後悔するわよ!?」ぷんすか怒りながら炎を杓文字で払い、燃が叫んだ。「望むところだ、その馬鹿げた武器で何か出来るというのならば…見せてみろ。」冷めた目でそう告げる灯火、しかしすぐにその目は驚愕の色を帯びることになる。


 「あっそ!見てなさいよまったく…「米菓べいか、あられ!」」燃が杓文字をブンと振るう、するとその杓文字が灯火の放った炎をすくい、そしてあられせんべいのような小粒の火の玉となり、灯火目掛け飛んで行った。灯火は火鋏を地面に突き立て、先ほど燃がやった様に自分が立つ位置の円周上に火柱を立ち昇らせ、火球から身を守った。


 「米菓、海苔巻き!」今度は周囲の炎が布のように一枚に広がり、それが絨毯じゅうたんのようにくるくると畳み込まれ、灯火を灼熱に飲み込もうとする。「…豪火!」すると灯火を中心に激しい炎が噴射し、炎の絨毯を一掃する。残り火と火の粉がキラキラと舞う中、ゆっくりと燃をめ付けた彼女はニヤリと笑う。「なんだ…案外やるじゃないか…」


 「どう?少しは見直したかしら?」くるくると杓文字を手でもて遊びながら、燃は悪戯っぽく笑みを浮かべる。「仮にもエモートゥスの上級具情者、へ・ん・な!武器でもそこそこ戦えちゃうのよ!!」そう言って再び杓文字を構え、そして縦に一閃した。「米菓、げんこつ!!」すると先程のあられよりも大きな火球が形成され、燃の武器から放たれる。


 灯火は火鋏をカチャカチャと鳴らし、そして迫り来る火球に向けて叫んだ。「豪火!!」彼女が火鋏を振るうと、その火球と同じ火の塊が放出され、火炎同士がぶつかり合って爆ぜた。「くくく…悪くない、悪くないぞ梅重燃!!当方の想像が掻き立てられる…あぁ、これだ、これこそが…芸術だ!!」赤い目をギラギラと輝かせながら、灯火は野に放たれた獣のような獰猛さで牙を剥く。

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