新たなる具情者達

 午後八時、真白達は電波塔へと向かっていた。


 「瞳さん…動画の人物、何者だと思いますか?」真白は青の情力を使って間もない為しばらくは力を使えない、故に瞳に手掛かりを求めた。


 「分かりません…私の情力は対象の目を見ないと発動しない…なのであの仮面の者の発言内容から推測する他ありませんが…」瞳は少し自信なさげな口調だ。「一見グリーン・バールのように、快楽を追求する者と思いました…しかしどうやら、そういう連中とは少し毛色が違う様です…」


 「どういうことですか?」真白が尋ねる。


 「仮面の者達は何かしらの信念、或いは思想に基づいて行動を起こしている、ということです。彼の者も言っていたでしょう、理性ではなく感情に従って生きるべきだ、と。」瞳は渋い顔をする。「そんな世の行く末など、ろくなものではないのにね…」真白も仮面の者の思想には全く共感出来ず、相槌を打つ。


 「…電波塔の方から情念を感じる…なかなか強そうやな…みんな、分かってるやろうけど、気ぃ抜いたらあかんで!」焔が発破はっぱをかけ、一同は電波塔の施設へと先を急いだ。




 「…あら、誰か来たみたいね。」金髪青目、非常に目立つ容姿の少女が言葉を発する。


 「泥濘でいねい、守備の配置は済んでるわよね?」その言葉を受けて次に口を開いたのは、暴情の騒乱時、宙に浮きながら色橋を眺めていた黒い目の少女だ。


 「うん…大丈夫…」黒目の彼女に応じたのはゴスロリに身を包んだ銀髪青目の、まるでビスクドールのような可憐さの少女だ。「電波塔の周りに人形…配備してあるから…」


 「それ倒してくんないかなぁ侵入者、そしたらあたし達が戦うことになるし、いい運動が出来そうなのになー…」長めの茶髪をサイドテールにした活発そうな女の子が、口を尖らせてそう言った。


 「何言ってるのよこころ!私達の任務はこの電波塔を占拠し、かつ外敵を防ぐこと!そういう荒事あらごとは出来るだけ避けないと!」心と呼ばれたサイドテールの子に非難の目線を送るのは、ベレー帽を被り、制服のような格好をした小柄な少女だ。


 「……ひょっとしたらそうなるかも、さっきからやたら鳥肌が立つんだよね…それにこの情念、結構大物かもよ、心。」金髪の彼女が少し笑ってみせる。


 「…確かにそこそこ良い情念を発しているわね…でもそんなことは関係ない。私達の目的を邪魔するのなら…容赦なく消す、分かってるわね?」険しい表情を見せる黒髪の子、そんな彼女に、残りの者達が頷く。「私、泥濘、肌触きふれは警戒しながらここで待機。心、樹脂じゅしは、悪いけど偵察に向かってもらえるかしら?」黒髪の子の指示で、彼女達は行動を開始した。




 「なんだあれ…ゴーレム…?」


 一方電波塔の下に到着したドッペルゲンガー、彼女達は眼前に立ちふさぐ、岩と泥で出来た巨体に驚いていた。


 「具情者の仕業だな?…あの感じだと「怒り」の具情者、土と泥の操作ってとこか…」韋駄天が呟く。


 「ほなったら「怒り」の具情者同士、ここはうちが引き受ける!あんたらは先急ぎ!!」焔はそのゴーレム達の前に立ち、腰の鞘から派手に火花を散らしながらファイアスターターと呼ばれる長めの棒を取り出した。「情力発現「勇火いさみび」!!」


 「皆さん、ここは焔さんに任せて先に進みましょう!」瞳に従い、焔一人を残して彼女達は再び走り始める。

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