赤い揺らめき
夕暮れ時。
西日の差し込む喫茶店で、真白たちは作戦の最終確認をしていた。
「いい?まずは真白が人通りの多い道を歩く、そして後ろからワタシが真白のカバンをひったくる、そしたら真白はワタシを追いかけるんだ!「ひったくりだ~!」とか叫んでくれたらリアリティ増すかも…あはは、冗談冗談!そんな「何言ってんのコイツ?」みたいな顔しないでよ~!…まぁそれはさておき…」けらけらと笑いながら、韋駄天は続ける。
「ターゲットと接触した後は情力を使っても大丈夫な場所までソイツを誘導し、そこでやり合う。その時真白は安全な場所に避難しといてね、オッケー?」真白は無表情でコクリと頷いた。
…という訳で真白は午後八時現在、都内のとある通りを歩いている。彼女はトコトコと歩きながら、先を急ぐ通行人を虚ろな瞳で見つめていた。
時間に追われて焦る顔、仕事を終えて疲れ果てた顔、仲間内でわいわい
道行く人々が浮かべる様々な表情を見て、自分も感情があった頃はあんな顔をしていたのだろうか…そんなことをぼんやりと考えていた真白は、不意に背中への軽い衝撃を感じた…どうやら作戦開始のようだ。
韋駄天に言われた通り、真白は鞄を取り去った彼女を追いかけて走り出した。「ひったくりだぁ~!」結局自分で叫ぶことにした韋駄天、フードを被り、大通りから狭い裏路地に入り込んでは広い路地に出ることを繰り返していた。五分程追いかけっこを続けた頃だろうか…
「あんたが鞄盗られた子か?」
急に真白の背後から声が聞こえた。彼女が振り返ると、フードを
「気ぃ付けなあかんでほんま…最近はこの辺も
「おいこら
「何や?えらい寂しいとこまで逃げ込みよったなぁ。」
そして少し時間が経ち、真白達はとある廃ビルの中まで来ていた。ここなら力を使っても目撃されず、被害もそれほど考慮しなくても…まぁ問題ない。
「どこの誰だか知らないけどしつこいなぁ…そもそも
「何でもええやろ?あんたは悪いことしててそのせいで困ってる人がおる、あんたが盗ったもん返したら問題全部解決する!そういうことや、分かったらはよ返し!」
「やだよ、てかそんな簡単に返すなら最初からひったくりなんかしないし。」そう言うと韋駄天はフードの子から少し離れ、様子を見ていた真白に目配せをした、どうやら事を始める気のようだ。
「…これで最後や…盗ったもん返せ。」僅かに見える首元に青筋を立て、低い声で
「無理だね。」挑戦的な笑みで即時却下する韋駄天。
「このクソガキ……ほなったらしゃーない、ちょっと怖い目に遭ってもらおうか!」
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