第一部:分情邂逅
第一章:ドッペルゲンガー結成編
プロローグ
白い天井…
彼女にはそれより前の記憶がない。
白い天井の部屋、とあるアパートの一室で目覚めてからのことは覚えている。しかしそれ以前のこと…自分が何者で、どのような生活を送ってきたのか…そういったことが全く思い出せないのだ。一方で地名や国名、ペンの使い方といった、いわゆる意味記憶と手続き記憶は残っていたので、日常生活に困難を感じることはなかった。
所持していた財布、その中にあった保険証から、彼女はある程度自身の社会的属性について知ることが出来た。だがその正体、そして記憶がない理由については依然として不明のままだ。
保険証の他にも彼女の身元に関する手掛かりはいくつか見つかった。彼女の両親と思われる人物から、彼女宛の手紙がその財布に同封されていたのだ。
その手紙には「わたし達にもしものことがあった時は、
そもそも彼女が目覚めた部屋自体がその黒曜という人物の所有するアパートメントであり、建物のオーナーである彼女は最初に真白と話をした時、手紙に書いてある通りに真白の面倒を、責任をもって最後まで見ると言ってくれている。
黒曜の話では、真白の両親は後述のとある事故にて、既に帰らぬ人となってしまっている。そして真白自身に兄弟や姉妹はいない…つまり真白は
その事故は日本のとある大都市、その郊外で起きた。地面は割れ、あちこちで火の手が上がり、血の匂いが充満する現場の中、どういう訳かまったく無傷の真白だけが生存し地に伏していたらしい。連絡を受けて現場に駆け付けた黒曜は、あの
…真白と黒曜の出会いは、そんな
黒曜はかつて医学生だったそうで、今の医療界に知り合いも多いらしい。その知識と人脈を使って独自に真白を保護、介抱し、正規の医者でないにも関わらず質の良い手当を真白に施したという
そして現在に至る。
真白の記憶がないことを知った黒曜、当時は驚いた様子であったが、「…もしかしたら…あなたにとってはあまりにも衝撃的な出来事だったから、無意識に記憶を封印してしまっているのかもしれないわね…」考え込んだ様子でそう呟くと、無理に思い出そうとして脳に負担を掛けるのは良くないから時間を掛けてゆっくりと思い出していくのがいい、と、元医学生の立場からそう真白に助言した。
更に黒曜は「今の名前のままだと、これから真白の保護者として一緒に生活していく上で何だかんだと大変なのよね」と困ったように笑い、もし気にならないのであれば戸籍を変え、新しい自分としての生活を始めるのはどうか、という提案を真白に投げ掛けた。
記憶のなかった彼女は名前を変えるという、自分が根底から
前述の通り彼女は今十五歳…つまり、今年の春から高校一年生になる予定の少女だ。一週間後に迫った入学式を前に、黒曜と共に役所や通学予定の高校へ
その名が示す通り、まるで色が抜け落ちたように真っ白な髪をもつ儚げな少女「
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