アニメ制作スタッフや声優は低待遇なのか①


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 題材に良きコメントを頂いたので、今回のテーマはこちらです。


『相変わらずという制作側や声優陣等の低待遇』


 アニメをお仕事にしている身としては、とても身につまされる話です。


 これから書くことはあくまで一般論ですので、そうでない会社もありますし、改善すべく努力している会社もたくさんあります。


 アニメ制作の歴史もそれなりに長いので様々な見解を持っている関係者がいるでしょう。

 なので、これはあくまで私が見てきた、聞いてきた話です。

 その前提の上で「ホンマでっか!」と思いながら読んで頂けますと幸いです。


 まず、アニメ制作スタッフの低待遇問題からいきましょう。


 これには古くから続いているアニメ制作会社の体制が大きく関係しています。

 なので、まずはアニメ制作会社に起こっている問題を取り上げます。


 虫プロダクションの時代から、アニメ制作会社は基本的にクリエイターの集まりです。経営層ボードメンバーまでクリエイターという点がなかなか厄介です。


 クリエイターには『質の高い作品を作る』という強い基本欲求があります。

 その結果、起こるのが『制作費として貰ったお金を制作費に際限なくつっこむ』という現象です。


 アニメの制作費というものは基本的に予算が決まっています。

 それは製作委員会の予算が決まっているからです。

 そのため、アニメ制作に入る前から予算は〇億円でアニメを制作してね、というふうに取り決めがあります。


 それなのに制作費に際限なくつっこんだらどうなるでしょうか?


 もちろん良いものは出来ます。

 しかし、利益率はどんどん下がっていきます。

 なんなら作ってみたら赤字、ということもあります。


 これが製作委員会からの要望でクオリティを上げることになったのであれば、制作会社が追加制作費を交渉すれば良いのですが、なんと制作会社自身(もしくは制作会社が連れてきた監督)が「こんなクオリティじゃ納得いかない」と修正を重ねてしまうのです。


 さあ、こんな制作会社が増えていくとなにが起こるでしょうか。


 そうです。ほかの制作会社も低利益でハイクオリティなアニメを作らないと評判が下がってしまうのです。


 本来取るべき利益を取れば、製作委員会からもらうお金が同じでもかけられる制作費が下がるのでどうしてもクオリティに影響が出てしまいます。

 

 結果として「あの制作会社はクオリティが低い」などと言われてしまうわけです。

 正しく会社であろうとするだけで。


 ちなみにこの時点で経営努力として制作費の圧縮は行われます。

 そのしわ寄せは当然、作画をはじめとしたスタッフ(クリエイター)にいきます。


 しかし、こんなビジネスモデルが長続きするはずもなく、またアニメの制作本数に対して制作ラインが不足しているため、昨今では製作委員会から支払われるアニメ制作費が高くなってきています。

 10年前から比べると1.5倍か下手したら2倍くらいになっているのではないでしょうか。

 

 ただし、これはあくまで制作会社に支払われるお金です。

 制作会社から依頼を受けるクリエイター達に支払われるお金が劇的に上がってはいません。(多少は上がっていると思いますが)


 制作会社からすればクリエイターに支払うお金はコストなので、できれば上げたくない。そして、そんなに一気に上げなくても現状アニメが作れてしまっています。

 わざわざクリエイターの単価を上げるよりも、その分のお金を作品のクオリティアップや会社の利益にしていきたいのは当然の考え方であると言わざるを得ません。


 ここを是正するには、クリエイター側が「こんな金額じゃやれない」と団結して制作会社と戦う必要があるのでしょうが、まだまだそういう状況には至っていません。

 いいところ一部のクリエイターがTwitterやらで愚痴を並べるのが関の山。

 クリエイターにも色々な人がいますので「そんなことしたら仕事無くなっちゃう」と考えている人もいるのだと思います。


 ちなみにTwitterで愚痴を並べるクリエイターは、制作会社目線では正直あまり使いたくありません。ちょっとした行き違いであってもSNSを使って自分の正しさをアピールしようとするのが透けて見えるからです。

 つまり、そういう人はすでに仕事が減っている。今は仕事が溢れていたとしても未来はどうなるか……という立ち位置にいます。

 クリエイターが足りないと叫ばれている現状でさえ、そのレベルではクリエイターの取捨選択は行われているのです。


 ちょっと話が脱線しましたが、実際にクリエイターに支払う原価が上がって、制作コストに跳ね返ってくるようになれば製作委員会の中で「もうアニメはお金にならないからやめよう」と言いだす会社が出てくるのは間違いないので、巡り巡ってクリエイター全体のお仕事量が減るのは確実です。


 こうした負のスパイラルの中で生まれた『アニメ制作スタッフの低待遇問題』は、簡単に変えられないところまできています。


 しかし、アニメ制作会社も、


 アニメ制作以外の仕事を増やす。

 アニメ制作全体の効率化を推進する。

 優秀なクリエイターには相応の対価を払う。


 などなど。

 少しずつ業界全体を変えていこうと努力している会社があることは忘れないで欲しいな、と思います。


 長くなったので声優のお話は次でやります。



―――――――――――――――――――

 最後までお読み頂きありがとうございました。


 アニメビジネスに関する「これなんで?」な質問などありましたら、コメント欄にお書きください。


 答えられる範囲でお答えします。

 長くなりそうなときは、次話を追加します。

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