第12話 首都直撃


 ズガガガガガガガガガガ――!!



 空薬莢を勢い良く撒き散らし、8基の重機関銃が唸る。

 ベルト装弾数270、分速500発。

 猛烈な鉛の暴風は、無数の閃光となって清兵を襲う。


「ぐわァぁああッ!?」

「ぎゃぁあああっっ!!」


 絶え間なく響く、絶叫、罵声、射撃音。

 弾幕に貫かれ、薙ぎ倒されていく戦列。


「だっ、助けてくれ!」

「俺の、俺の足が…!!」

「そんなバカな…!」

「何が起こっている!?」


 広がる死地。

 野砲の砲撃とは比べ物にならない。

 鉄臭くて、赤黒い泥の沼。


「なん……だ、これ……は」


 乃木にとっては、見たこともない光景だった。


「中世と近代の差は絶望的です」


 その声に振り返った。いつのまに乃木の傍へと佇んでいた少女は、その少し緑色がかった瞳で前線を見据えつつ、口だけを開く。


「たった二千とて、東洋で初めて機関銃を配備した連隊」

「……」

「列強水準といわれる、クリミア戦争で効果を挙げた散兵戦術すら何の役にも立ちません。ましてや事前砲撃すらなしに来れば、こうなるのも必然でございます」


 七倍以上の戦力差がありながら、あまりに一方的な戦闘。

 近代化に遅れた清軍の末路だった。


「機関銃……だと」

「乃木閣下も、くれぐれもご留意くださいね?」


 釘を刺すように言い残すと、少女は踵を返す。

 呼び止めようとする乃木の前を、閑院宮の大声がよぎった。


「連隊突撃――ッ!」


 塹壕直上、地表。

 無限の肉片を踏み越えて、喇叭が響く。


「小隊着剣、前へ!」

「「わあァアァ――!」」


 一気呵成に飛び出す騎兵。続けて歩兵が、硝煙の中を突き進む。一連の戦法は見たこともないものだけれど、よく訓練されている。


「なぜ」


 遠く離れた少女の背に、問いかける。


「なぜ、君のような娘がここにいる」

「役目ですから。お飾りの」


 その小さな背は振り返ることがない。乃木は思わず黙り込んだ。


「……高を括って悪かった。実力があるのは理解した」


 乃木自ら少女に歩み寄ると、司令部天幕にいた他の将校たちはぎょっとする。


「だからこそ不可解なのだ――なぜ、負けた」

「……」

「北海鎮台は、なぜ勝てなかった」


 答えることなく、少女は目を細める。次の瞬間、天幕に差し込む光が途絶えた。地上に、真っ暗な影が落ちる。


「な……」


 将校の一人が、空を見上げて絶句する。そこには巨大な人工物が浮かんでいた。


「なっ、なんだあれは!」

「『飛行船』といいます」


 騒然とする天幕に、少女の声が響く。


「友軍のものなのか!?」

「ええ。積載限界1トン、航続距離500キロ程度のまだ試作段階ですけれど、樺太での戦訓を取り入れております」


 怪物の登場に、戦場は大混乱に陥った。


「ありゃなんだ!?」

「側面に……日の丸があるぞ」

「倭寇は空を飛べるのか……!?」


 清兵たちは空を仰いで立ち尽くす。


「どうしてだ……」


 清軍の指揮官も、力なく呟いた。


「われらは……東洋最強のはずなのに」


 あの白い球から吐き出された銃弾の雨で、一面が死地と化した。


「こんな兵器、洋狗どもでも持っていない」


 赤子の手をひねるかのように薙ぎ倒された熟練の戦士たち。かと思えば、空を覆う蛮族の新兵器。清軍の統制はメチャクチャになり、次々と敗走を始める。


「それをなぜ……倭寇どもが!?」


 のちに釜山鎮の戦いと呼ばれることとなる会戦は、あまりに一方的なものであった。




 清軍、死傷4000。

 戦力の三割を喪失し、潰走。




「ロシアの片田舎で、不遇な環境ながらも開発に勤しんでいたユダヤ人がおりましてね。樺太であわや戦死かと思われましたが、撤退の折に回収できて僥倖でした」


 飛行船は飛行機よりも10年ほど発達が早い。軍用飛行船の登場は1900年。5年ほど時を早めただけとは、閑院宮の背に控える少女以外は知る由もないことだ。


「これが、北鎮第26連隊わたくしどもの答えであります」


 たかが一個連隊で何が出来る――いつかの問いへ、閑院宮はこう返す。

 第一軍司令部、参謀会議。錚々たる顔ぶれの将校たちに囲まれながら、彼は毅然と顔を上げる。見据えるのは、その奥に座す総司令官・大山巌おおやまいわおだ。


「……殿下の意図が分かりかねます」


 何が言いたい、と遠回しに大山は問う。


「重ね重ねではありますが、作戦の変更を具申します」

「……半島を諦めろ、と仰るのですか。親王殿下?」

「もはや朝鮮全土の制圧は困難です」


 乃木は、閑院宮の後ろに控える少女を見据える。


「従来の作戦のどこが、そこまでお気に召さないのですか」


 大山の言葉に、閑院宮は目を瞑る。なんでもないような所作に見えて、その刹那だけ、閑院宮の耳元で少女が囁くのを乃木は知っていた。そして乃木は読唇術が得意だった。


 "北方戦役のせいで兵力も弾薬もより不足しております。このままでは補給が持ちません"


 内容は概ね理解できる。シジツという不可解な単語を除けば。


「戦力においても兵站においても、戦前に策定された戦争計画はもはや機能しておりません。漢城ソウルまでの占領に留め、余裕のあるうちに旅順を攻略すべきです」


 閑院宮は少女の言葉を辿って、攻略順序の入れ替えを主張する。まだ若い皇族軍人とはいえ成人の男が少女の言に従う様は、乃木にとって甚だ不気味であった。


(やはりわからぬ。そもそもなぜ、年端も行かぬ娘がここに……!)


 ニコニコと愛嬌のある笑顔を振りまきながらも決して口は挟まない、さながら異国のお人形。きっとそんな風に他の将官たちも思っていることだろう。戦争最前線にはあまりに似つかわしくない品性のお嬢様がなぜか軍議ここに座している、その違和感を、とはいえ宮様の手前、将官たちは指摘するわけにもいかない。


「殿下。先んじて旅順を制すとしても、今次戦役の目標はあくまで半島の平定。清朝と和を睦するには、どのみち朝鮮を実力で占領せねばなりません」

「いいえ、それは無用というもの」


 閑院宮の言葉に将校たちはため息をつく。耐えかねて、乃木は口を開いた。


「いいですか、宮様。戦争を終わらせるには、相手を講和会議に引きずり出すに足る戦果が要るのです。今次戦役の争点たる朝鮮を平定せずして……」

「承知です、そんなことは」

「では何ですか。北京に上陸を掛けて、敵の皇帝でも捕まえますか」


 失笑交じりに冗談を飛ばす。確かに、紫禁城を落とせばやりたい放題だ。


「当たらずとも……遠からず、ですね。しかし」


 意味ありげな物言いに、乃木は黙り込む。実際のところ北京に遠征するほどの戦力など、近代化30年足らずのこんな小さな島国にあるはずもなかろうに。


「予の連隊ひとつで、戦争終結に事足りる」

「ぶっ」


 ひとりの将官が吹き出してしまう。なんと不敬極まりない、取り繕うように咳払いをして、乃木は大山のほうへと振り返った。


「もうよいでしょう、総司令」


 大山も頷いて、沙汰を下す。


「第一軍司令部として、皇國枢密院の策定した戦争計画に異議はありません」

「……兵站や戦力は、どうするのですか」

「現地調達と、強靭な肉体と精神を持つ皇國兵士に期待します」


 ぐっ、と閑院宮の拳が締められる。


「精神論ごときに、わが航空隊は敵わないのですか?」


 その言い様に息を呑む。確かに、兵士たちの精神へ期するのは最後の手段だ。順番が違うというのは分からなくもない。しかし肝心なところが抜けている――閑院宮は作戦の代案を何一つとして示していない。


「……ハッタリは、使ってしまえばそれまでです」


 散り散りになって敗走する清軍を見送りながら、大山は言った。


「失敬ながら親王殿下、二度目はこう上手くも行きますまい」

「なるほど。飛べるだけの代物に過ぎない、そう言うのですね」


 大山は少し目つきを険しくする。


「我々とて愚か者ではございません。あまり甘く見られては困ります」


 その言葉に、列席していた乃木は目を瞑る。皇族軍人はあくまで士気を興すために戴く冠だ。そんなお飾りに、なんの謂れで舐められなければならぬのか――決して口にしてはならないが、きっとこの場の多くの将官が抱いている思いだろう。


「乃木から情報は得ております。積載限界1トンでは、重砲はまず無理です。標準的な陸用爆弾でも3発が限界。銃器を搭載するにも、この図体ではいい的です」

「同意します」

「爆弾も、重砲も、銃器も無理だ。載るのは人間くらいでしょう」

「ええ、仰せの通りです」

「っ、ですから人を載せたところで――!」


 ふと、乃木は目を見張る。一つの可能性に思い当って、まさかと振り払おうとした。けれど謀ったように、閑院宮は口を開く。



 大山巌は固まった。


「航空挺身戦術、略して空挺。上空で前線を突破し、落下傘パラシュートで敵の後方に降下。こうして敵の補給路を、あるいは退路を絶つのです」

「空から……兵、だと」


 口が渇いていく。あの空に浮かぶ怪物を、自然と見つめてしまう。


「世界の戦争は未だ二次元です。面上だと思っていた戦線に、よもや空からの攻撃など……どんな列強国であれど、想像することは出来ません」


 確かに、洋務運動を進めている清朝とて同じだ。軍事顧問が欧州列強の人間である限り、直上を突破してくるなんて考えやしない。


「空中より降り立つ皇國陸軍に対し、清朝は為す術もないでしょう」


 したり顔で言い放つ閑院宮に、将官たちは声を澱ませる。


「そんな、こと……」

「うまくいくわけが――…」


 反論しようにも、妙に現実味があるからできない。


「なにも正面から反攻する必要はございません。清軍の伸びきった補給線を後ろから遮断する。降伏に追い込むことを目標とすれば、この不足した皇國陸軍の戦力と備蓄でも十分に戦えます」


 ここに至って、ようやく乃木にも全貌が見えてくる。空挺降下とやらを手段にして、遮断戦術を目標とする。代案になりうる具体的な道筋だ。

 大山巌はしばらくの沈黙のち、目を瞑って、ゆっくりと口を開く。


「……ダメだ」


 閑院宮の背後で少女が唇を噛むのを、乃木は見た。


「実行もしないうちから、従来の作戦を否定するのは時期尚早だ」

「清朝に奇襲を受けて釜山まで後退しているのです。戦前の作戦計画は前提からして、現状と剥離しています」

「お言葉ですが親王殿下。それでも、皇國枢密院が策定した計画です」


 大山は、強い口調で言い放つ。


「まずは、枢密院の立案した通りに動くのが順序です。ここで独断専行したとして、第一軍は責任が取れません」


 乃木は目を伏せる。なぜ言う通りにしなかった――もし維新の英傑に責められては、何も言い返せまい。


 これは無理だ、とばかりに閑院宮は肩をすくめて背後へ振り返る。それから大山へ向き直って、会釈しようとしたその瞬間。


 ざっ。

 人影がひとつ、閑院宮の背から踏み出した。


「司令官は枢密院の傀儡であせられますか?」


 唐突の罵倒。一瞬で、場が静まり返った。


「ロシア帝国に攻め込まれた時点で枢密院の戦争計画は破綻しています。いわば残骸なのです。なぜそれに、未だにこだわるのですか」


 ゆっくりと大山の前へ進み出る少女を、誰も止められない。


「枢密院が示した作戦は二次元の戦闘行動を前提としています。もともとの作戦が機能しないとわかって、代替しうる三次元戦術が示されたいま、なぜ躊躇するのです」


 元服にも満たないだろうお嬢様が、最前線の最高指揮官に食らいつく。その異様な光景に乃木も閑院宮もあっけにとられて、何も手を打てない。


「……枢密院は知性の牙城だ。こうなることさえ踏まえているやもしれぬ」


 ついに最初に沈黙を破ったのは、大山巌司令その当人だった。


「維新を成した英傑たちが数日、いや数月もかかって編み出した戦術に、潰走してきた我々ごときの小手先のトンチが敵うとでも」

「潰走……ふふ、一緒にしないで頂きとうございます」

「何を。貴様らとて我らと何も変わらん――


 ぐッ、と少女の拳が締まるのが見えた。


「極めて優秀な英傑の長考が導いた結論を、簡単に覆せるようなら苦労はせん」


 大山の言葉に、その翠眼を伏せる。


「枢密院に全幅の信頼を寄せて、従うべき……と仰るのですか」

「枢密院体制の成立から八年、内政外交の両面で、皇國は目を見張るような成功を経験した――これだけでも、十分信頼に値するとは思わないのか?」


 俯いた少女の声は、震えていた。


「目を見張る成功? 冗談はおよしください、あの『停戦』が?」

「……っ」


 大山は黙り込む。


「北海鎮台の将兵が、どのような境遇に立たされたかご存知ですか」


 根こそぎ動員で老若男女問わず銃を取りました。

 開拓団や先住民を守れと言われて、盾になって時間を稼ぎました。

 死守命令で、何人も死にました。死なせました。

 ――少女の口から堰を切ったようにあふれる言葉は、どこか懺悔のようだった。


「本官も小隊から9人の死者を出しました。壊滅です。けれど引き換えに、枢密院の命令は成し遂げました。北鎮の将兵は軍人の責務を全うしました」


 軍人だと――少女の指し示すその襟元には、確かに中尉章があった。乃木は目を丸くする。


「その過程で犠牲が出ることも、ええ、そこまでは納得できますとも」

「……私も、今まで幾多の戦友を、同期を喪ってきた」


 大山の言葉は重く響く。


「それが戦場の現実で、軍人の運命だ」


 ええ、と少女は頷く。至極その通りと言った風に、深く顔を下げる。


「軍人たちは己の領分に専念したのです。さて、枢密院はどうでしょう?」


 ばっ、と見せた翠色の瞳には、呑まれるような闇があった。思わず乃木は戦慄く。何を見たら、12の少女がそんな感情を宿せるのだ。


「外交を軽視し、戦略を怠り、露清両国の術中に嵌められ、やってはならない形の負け方をしました。軍人わたしたちに守らせた開拓団や先住民を、他でもない軍人わたしたちの手を使って、捨てさせました」


 清朝に侵攻された。樺太の維持は困難だ。敗戦もやむなし。臥薪嘗胆。

 自らの不手際が祟ってなお被害者ぶる、その無責任さを少女は憎むのか。


「恨まれました。負け犬だと罵られました。枢密院を信じて、銃を取って、この血を流した末に得たものは――"敗残兵"という称号です」


 少女は笑った。


「枢密院は、わたしたちを裏切った」

「「 ――ッ!」」


 それはひどく透明な笑顔だった。

 凍てつくような冷たいその瞳に、乃木は吸い込まれるような感覚さえ覚えた。


「ええ。されど、この国は文民が軍人を制御するのです。裏切られて、泥水を啜ることもあるでしょう。それも含めて軍人の運命だとすれば、そうなのかもしれません」

「……っ」

「その上で許せないことがひとつございます」


 少女はその細い指を、まっすぐ大山に差し向けた。


「同じ軍人でありながら、枢密院に無条件の信頼を寄せるの魂胆です」


 将官たちが固まる。


「完全無欠の英傑が集うシンクタンクなどと本当に思っていらっしゃるならば、大層な依存ぶりでございます。その思考放棄の末に釜山ここまで敗走したのではなくて?」


 ギリリ、と大山が奥歯を噛み締める。


「敵うはずがない? 従っていればいい? 皆様方のなんたる精鋭ぶりですこと!」


 少女の声だけが高く、強く響く。


「せめて北鎮軍人の前では――その軍刀を帯びないでくださるかしら、

 この負け犬どもめ!」


「言わせておけばァッ!」


 大山巌が咆哮した。

 温厚な彼が額に青筋を浮かべるなんて、乃木は見たこともなかった。


「小娘が、戦場の何を解って言うか!」

「戦場が解るのなら、完全無欠の作戦などあり得ぬことくらい分かりましょうに」

「ロクな対案を出さずにのうのうと!!」

「出したではございませんか、空挺――」


 バン、と大山は机を叩きつける。


「空挺降下とやらで何ができるッ!」


 ピリピリと音圧が一面を走った。


「局地的な打撃にしかならない上に、降下後は敵地に孤立する! 後が続かぬような作戦を、よくもまあぬけぬけと!」


 わかっているのか北鎮の田舎者どもめ、と大山は叫ぶ。


「我々が相手をしているのは東洋最強の王朝だぞ――!」


 なにをいまさら、と少女は返す。


北鎮われわれが相手をしてきたのは世界最大の列強です」


 それは地上最大の陸軍を擁する超大国。紛うことなき列強最先鋒。声を失う大山の前を、かつ、かつと靴を鳴らして、少女は地図の前へと歩みゆく。


「ええ。今次戦争は、千年に一度の大舞台にございます」

「……」

「東洋の覇者を引きずり降ろして――千年の華夷秩序を終わらせる」


 東洋世界を根本からひっくり返すための物語。謡うように少女は口にすると、懐からコンパスを取り出した。その針をそのまま、プスリ。


「なっ、なにをしている!」

「見ればお判りでしょう」


 旅順に刺されたコンパスの針。これを軸に、円弧が描かれていく。


「半径、500キロ……?」


 すぐに理解する。飛行船の射程範囲だ。少女が手を回していくにつれて、平壌、奉天、青島といった要衝都市が線の内側に現れる。


「降下後は敵中に孤立する――大山司令の仰る通りではあるのですよ、後になんて続くわけもございません」

「だったら!」

「ゆえに、たらねばならない」


 ほどなく、乃木はとうとう杖を取り落とす。

 旅順を中心に少女が描いた半径500キロの円は閉じられた。


「「!?」」


 将官たちが声を失う。


「旅順さえ取れれば、届いてしまうのです」


 制空権は必要ない。未だ、人が空を飛ぶなどあり得ないことだから。

 であるからこそ、この大博打を遂行する勝算が生まれる。





「目標――――北京・紫禁城」





 上空。渡洋侵入。

 想定外狙撃アウトレンジもいいところ。


「敵首都の、空挺制圧を進言いたします」


 この小さな島国の、より良い門出のために。


「より良い下関条約を」


 そう呟く少女に、乃木は問わずにいられない。


「きさま……何者だ?」


 少女は不敵に口を開く。所属や階級は何だったか――お飾りに過ぎないそんなことは今となっては忘れてしまった。脳にこびりついて離れないのは、少女の名だけだ。


有栖川宮玲那ありすがわのみやれいなと申します。どうぞ、お見知りおきを」




―――――――――

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