第9話

数日後、ロベルト様の言っていた通り、正式にリリンティアン領の責任者として任命されました。


「早速リリンティアン領へ行きましょう!」


私が意気込んでロベルト様の元を訪れると、ロベルト様は既に出発の準備を整えていました。


珍しいこともあるのですね。今日は嵐が来るのではないかしら?


「どうせ君のことだから、はりきって来ると思ってな。馬車の手配もしておいた。また口煩く小言を言われるのはごめんだからな」


私があまりに驚いた顔をしていたからか、ロベルト様は言い訳のような言葉を口にしました。


「ご準備していただき、ありがとうございます。では早速向かいましょう」


変なことを口走ってロベルト様のやる気を削いではいけません。このまま出発です!





リリンティアン領に着くと、現責任者の方が迎えてくれました。


「ようこそ、お待ちしておりました。ロベルト様から事前に連絡いただいた施設には通達済みですので、視察はご自由になさってくださいね」


お二人の間でどんなやり取りがあったのかは分かりませんが、ロベルト様がしっかり連絡してくれていたお陰でスムーズに視察が出来ました。


リリンティアン領は、事前調査の通り治安も良く、極端な貧困層がいないようでした。


視察で訪れた花畑もきちんと管理されており、品質も上等です。リリンティアン領の花は殆ど温室で育てられていて、温度や水量などをリアルタイムで管理しているようでした。


「リリンティアン領は本当に平和で安定している所ですね。花の育成技術も素晴らしいですわ」


「そうだな。俺達が何かしなくても、問題ない領地だ。ただ見守るだけなら楽な仕事だ」


「リリンティアン領をより良い領地にしていくのが、私達の仕事ですよ!とてもやりがいのある仕事です!見守るだけより楽しいはずですよ」


ロベルト様がやる気なしモードに突入しそうなのを何とか阻止しつつ、領内の学校へ向かいました。





学校では、文字の読み書きや簡単な数学などの基礎的な学問を中心とした教育を実施していました。


「ロベルト様、先日もお話しましたが、学校で花の育成に関する基礎的な知識や技術も学べるようにしませんか?卒業後に働きやすくなると思います」


教育分野を担当すると決めてから、卒業後にも役立つ技術を学べる場所を作りたいと思っていました。


子どもたちはほとんどの場合、学校卒業後、それぞれの仕事場の親方から仕事を教わりますが、それを短縮出来れば仕事の効率が上がるはずです。


「……俺は反対だ」


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