第8話

翌日、私は早速ロベルト様の元へ向かいました。


「おはようございます!セリーヌです!昨日お借りした資料を基に、色々と考えてまいりました。ロベルト様の意見も最もだと思いましたので、それも取り入れつつ……。お聞きいただけますか?」


「あ、あぁ……」


よし、まずは聞いてもらえそうね。


「昨日ロベルト様が仰った役割分担ですが、私も、分野毎の主な担当者は一人に絞った良いと考え直しました。ですので、教育と農業分野は私、商業分野と財政全体の管理をロベルト様にお願いしようと思います。その他は追々、担当を決めましょう」


「……」


「ただし、独立して動く訳ではありません。お互いの動きは常に報告し合うことにしましょう。連携が必要な部分も出てきますから。……ここまでは、よろしいですか?」


「問題ない……と思うが……君は」


ロベルト様が何か言いかけましたが、もうしばらく私の話を聞いてもらいましょう。勢いで押すのです!


「では、詳しい内容はこの資料にまとめましたので、後でお読みください。主にリリンティアン領のメイン産業である花産業について、案を出してみました。商業はロベルト様の担当予定ですが、花を育てる上で必要な技術を学べる学校を作りたいと思いますので、併せてご確認ください。実際の計画は、領地を視察してから詰めましょう!」


一気にまくし立てると、ロベルト様は大人しく資料に目を通し始めました。


やはりロベルト様は、やる気がないように見えますが、やるとなったら真面目に取り組む方のようです。


「……内容は理解したが、君は昨日とだいぶ態度が違うな……」


「そうですね。昨日は言い過ぎました、申し訳ありません。せっかくロベルト様と一緒にお仕事をするのですから、成功させたいのです。昨日は気持ちばかり焦ってしまいました」


別に謝ることは苦ではありません。それでコトが上手く運べば何でも良いですわ。


「そうか。俺も昨日は……いや、それより、視察の日程を決めよう。今週中には責任者に任命されるはずだから、その後にでも……」


あら、もう少しでロベルト様から謝罪の言葉が聞けるかと思ったのですが、残念です。まあ、視察へ行く気になってくれただけでも十分でしょう。


「では任命され次第、すぐに行きましょう!ロベルト様は、現責任者に連絡しておいてくださいね」


「なんで俺が?」


「私はまだ婚約も公表されていない身ですよ?私が連絡しても変に思われるだけですわ。その点、ロベルト様は王子ですから何の問題もありません。それに……」


「あーもう分かった。俺から連絡しておこう。はぁ、全くどうしてこうなってしまったんだ……」


「あら、何か言いましたか?」


「いや、何も?」


小言を言いつつも、引き受けてしまうのですから、やっぱり根は真面目なのですね。


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