第7話

ものすごく腹が立つけれど、これ以上不敬を働く勇気もありません。そんな自分が情けない……。


「セリーヌ・アーデンと申します」


「よろしく。……さっきの話だが、別に婚約に不満がある訳じゃない。ただお互いよく知らない状態で任務をこなすのは難しいだろうと思う」


ロベルト様がようやく話をしてくださいました。


「でしたらなおのこと私達は話をすべきです。お互いのことを知りながら、準備して……」


「だからお互い分野を分けて、別々に運営を進めないか?例えば令嬢が教育分野の管理、俺が商業分野の管理、というように」


なんですって?この人……国王が言ったことを聞いていなかったのかしら?なぜ、そんな勝手なことを言うの?


「別々に運営するのは反対です。国王は私達の信頼と信用を高めるために任せるとおっしゃいました。二人で協力しなければ意味がありません!」


「令嬢はさっきから何でそんなにやる気なんだ?リリンティアン領は、そんなに大きな問題も抱えていないし、前任者から引き継いで同じようにやれば問題ないだろう?」


逆に何故こんなにやる気がないのでしょう……。信じがたいほど怠惰な人なのでは?!


「そのような考えは領地の皆さんに失礼だと思います。あと、令嬢と呼ぶのはお止めください。セリーヌです!」


令嬢令嬢って、私にはセリーヌという名前がありますのに!


「そうだったなセリーヌ、……はあ、今日はもう遅い。領地のことは明日以降また考えよう。馬車を手配するから、それで帰ると良い。今日はもう終わりにしよう」


ロベルト様は面倒臭そうに言うと、部屋を出ていきました。


しばらくすると馬車が用意できましたと、使用人が呼びに来てくれました。


はぁ……どうして会話がこんなにも噛み合わないのかしら。もう少しうまくやれるとおもっていたのに。


ロベルト様が何を考えているか、全く分かりません。あんなにやる気のない振る舞いをする理由はなんでしょうか。ただ怠惰なのか、婚約を勝手に決められたことへの反抗なのか、それとも別の理由があるのか……。


……止めましょう。考えたってわからないわ。やる気がなくたって、やってもらうしかないのです。何か方法を考えましょう。


そういえば、占いでは、お互いの歩み寄りが大切だと出ていたはず。私から歩み寄るのも癪ですが、やってやりましょう!


まずは、リリンティアン領の資料を読み直して、計画を立ててみましょう。ロベルト様が納得できる案を出して、やる気を出させて見せますよ!


ロベルト様の態度には腹が立ちますが、あの態度を変えさせられれば、さぞ楽しいでしょうね。


勝算がない訳じゃないわ。占い業のお陰で、人を見る目は培われているのよ。ああいう方は、きっかけさえ与えれば、真面目に取り組めるはずですから。

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