第4話

怪しい黒マントさんの占いから数日が経ったある日のことです。


「今、なんて仰ったの?お父様……」


お父様からディナーの前に話があると書斎に呼び出されたのですが、そこには強張った顔のお父様と、心配そうなお母様が待っていました。


「お前は第一王子と婚約することになった。先程、使者が来て手紙を置いていったのだ」


そう言って渡されたのは手紙には、王家の紋が入っていました。


手紙には国王の署名で、第一王子ロベルト様と婚約してほしいこと、詳細は明日王宮にて話すことが書かれていました。


「セリーヌにはもっと自由に生きてほしかったのだが、こればかりは断れない。分かってくれるね」


お父様が申し訳なさそうにするのを見て、誰が反抗などできましょうか。


「大丈夫ですよ、お父様。相手が王子というのは驚きですが、いつかは結婚するものですし。それにロベルト様は優しそうですので、きっと上手くいきますわ」


そう言って笑ってみせると、お父様もお母様も少し安心したようです。


「本当に嫌なら帰ってらっしゃい。愛娘のためなら亡命だってするわ」


「お母様がそう言ってくださるだけで充分ですわ。ロベルト様をお支えできるように、祈っていてください」






その日のディナーは、あまり味が分かりませんでした。


お父様もお母様も当たり障りのない会話で気を紛らわせてくれましたが、しっかり返答できていたでしょうか……。


お二人の前では強がってみせましたけれど、本当は不安でたまらないわ。


ロベルト様とは挨拶程度で、きちんとお話をしたこともないのです。どうして私なんかが選ばれたのかしら。


はぁ……考えても仕方ないわ。今日は早く寝て、明日失礼のないように振る舞いましょう。なるようになるわ。





翌日、王宮で国王、王妃、ロベルト様とお会いしました。


「セリーヌ・アーデンと申します。昨日いただいた婚約のお話、お受けいたします」


そう言って頭を下げると、国王と王妃はにこにこと微笑んでくださいました。


「急な話で驚いただろう。だが、そなたが一番良いと王妃が強く推薦したのでな」


「セリーヌさんならロベルトにぴったりだと思いましたのよ。これからよろしくね」


王妃様に気に入られる理由が思い当たらないわ……。


「あの、私、王族の方々とはほとんど接点がありませんでしたが、私でよろしいのですか?」


誰かとお間違えではないでしょうか、と喉まで出かかりましたが、なんとか堪えました。


「もちろんよ、セリーヌさん。まだ戸惑ってらっしゃるようですから、お茶でもしませんか?そこで女同士でゆっくり話しましょう」


王妃様に押し切られる形で中庭に連れて行かれました。





そういえば、ロベルト様は一言も発していなかったけれど……やっぱり婚約に乗り気じゃないのかもしれませんね。



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