第5話

中庭は綺麗に手入れされており、色とりどりの季節の花々が咲き誇っていました。


花を眺めていると、王族三人に囲まれていた時より緊張がほぐれてきました。


「セリーヌさん、少しはリラックス出来そうかしら?」


「はい、お気遣いありがとうございます。」


なんだか王妃様には、全て見透かされているようです。


「急に連れ出してごめんなさいね。どうして自分が……って思っているようだったから、きちんと説明しておこうと思ったのよ」


「どうしてなんでしょうか」


「たいした理由ではないわ。ロベルトと同世代の令嬢達の中で、あなたの家がどの派閥にも所属していないこと、あなた自身が品行方正なこと、そして……あなたとロベルトの相性が良いと占いで聞いたのよ」


なるほど、派閥等も関係しているのね……って、う、占い?最後に不思議な言葉が聞こえてきましたけれど?


「占い、ですか?それは、つまり、誕生月とか瞳の色とかで決まるアレですか?」


王妃様の説明に対して、言葉がうまく出てこなくなってしまいました。


「まさにそれなのよ。実はね……」


王妃様の話を要約すると、ロベルト様は将来の結婚相手について、全く興味がない。候補者を見せて選べと言っても、誰でも良い言う。見かねた王妃様が、せめて一つだけでも条件や希望を出しなさいと命令すると、面倒臭そうに「相性が良い女」と言ったそうだ。


あまりの適当さに苛立った王妃様は「では、占いで決めます。あなたにはどんな相手だろうと文句は言わせません」と言って、本当に占いで決めさせたらしい。


なんとまあ……王族ともあろう方々が、そんな風に新たな王族となる人物を決めて良いのでしょうか。


というより、ものすごく気になることが、


「王妃様、その占いというのは、誰がしたのですか?」


「あぁ、街で一番評判という占い師に頼んだのです。街はずれの館で占っているらしいわ。セリーヌさんもご存知かしら?私の執事に行ってもらいましたのよ」


あ、これ、もしかして、私が自分で自分のことを占ったということですね。あの怪しい黒マントさんは、王妃様の執事だったと……。まさかあの占いで、こんなことになるなんて。


「セリーヌさんには、急な話でしょう。巻き込んでしまってごめんなさいね。もし、嫌になったら婚約は破棄してくれて構わないわ。伯爵家の評判に関わらないように処理しますから」


「そんな……王妃様のお心遣いだけで十分ですわ。こうしてご縁があったのですから、ロベルト様とは仲良くやっていきたいと思います」


王妃様は気を遣ってくださるけれど、私から婚約を拒否することなんて出来ないわ。どんな理由であれ、選ばれたのだから覚悟を決めなければ。


王妃様はお優しいし、うまくやっていけると思うわ。





王妃様とのお茶会は思った以上に楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。


そろそろ戻りましょうか、という話になった時、少し離れたところから声がしました。


「ここにいらしたのですか。父上がお二人を呼んでこいと。改めて話があるそうです」


ロベルト様が、私達を探しに来たようです。なんだか少し険しい顔をしているような気がします。


「では戻りましょうか。セリーヌさん、楽しかったわ。また一緒にお茶しましょうね」

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