たまごとじにゅうめん

 しっとりしとしと雨が降る。

 いぬは窓辺のベッドでぐるり、ベーグルのように丸くなる。すぴょーすぴょーと寝息。


 雨の日もあの子の帰りはやっぱり遅い。

 夏でも冬でも、雨は体を冷やしてしまう。

 今日も温かいもので、あの子をお迎えしよう。


 ざくざく、ねぎを少し大きめに切る。

 ざくざく、油抜きしたあぶらげも。

 ぱかん。たまごを割って、しゃかしゃかと溶いておく。


 だしのベースはまた白だし。大活躍の白だしさんに、少しのお酒を加えて。

 ねぎはよく煮込んだ方が好きだから、やっぱり煮込んでしまう。


 ぐつぐつ、沸かしておいたもうひとつのお鍋に、そうめんを放り込む。

 あっという間に煮えるので、流水でよく洗って水をきる。

 そのままだしの鍋に入れてもいいけど、このひと手間を加えた方がさっぱりして好き。


 かくして、そうめんを、だしのお鍋にイン。

 煮立ってきたらあぶらげを入れて、たまごでとじてやる。

 雨の日対策あつあつのたまごとじにゅうめん。


「ただいまー」

「おかえり」


 騒ぎながら玄関へ向かったいぬは、濡れた手でなでられて、ぶるぶる身震い。

 鼻を鳴らしている。

 あの子はそれを見て笑っている。


 テーブルの上ではほっこりあつあつたまごとじにゅうめんがお待ちかねだ。

 だしの効いたあつあつスープに、つるりとしたそうめんの食感。のどを通る時はもうたまらない。


「いただきます!」

「めしあがれ」


 あの子の笑顔。

 いぬはテーブルに顔を寄せている。

 今日も、一日おつかれさま。

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