3. 毎週水曜は補習の日
「また、違う…」
放課後に、何が楽しくて
「はぁ…」
私の算数スキル、どこに置いて来ちゃったんだろう…。
「ははは…」
もう笑うしかない…。
「
でも、全部消されることが少なくなった…。
「中越先生、顔近い…」
気付けば、あと数センチで頭突き出来る距離にいたので軽く頭突きをした。
「っ…」
本当に軽くしただけなのに、中越先生は頭を押さえて痛がる。
「ごめん…なさい…」
一応、謝る。
「もう教えてやんないぞぉ…」
「いいよ」
いや、よくないよ。
「俺が教えるから」
隣で、課題を終わらせて暇を持て余しているヒトがいた…。
「こなつちゃん、おしいねぇ…」
今日は
「うん。でも…ココからがわかんなくて…」
タクトことご近所に住むつい最近まで幼馴染みだと思い出せなかった拓斗くんは滅多に学校に来ない隣の席の
「ココは合ってるよ…」
そして、中越先生より教え方が上手い…。
「拓斗、それ俺の仕事だから…」
少々乱暴に拓斗くんの手を止める。
「中越先生、職務怠慢ですよ…?」
ねぇ?と私の顔を見て同意を求める。
「う、…うん…」
改めてマジマジと拓斗くんの顔を見て、やはりキレイな顔だな…。絵になるよな…。と思っていたとは言えない…。
「どうした…?」
「ううん。何でもない…」
言ってしまえば、何かに負けた気がして…。何に負けるのかわかんないけど…。
「中越先生、これからもよろしくお願いいたします…」
中越先生が教えてくれたおかげで、算数のスキルが幾分戻った気がする。そして、
「拓斗くんも、ありがとう…」
二人にお辞儀をして、顔を上げると、
「庄野、まだ数学に達していないぞ…?」
中越先生の真剣な顔があった。
「わかってるよ…」
いつも通りに、不貞腐れて言っただけなのに…。
「わかってないっ」
中越先生は明らかにいつもとは違う態度や威圧的な顔をしている…。
「………」
何かに、苛立っているように見える…。
私に…?
それとも、拓斗くん…?
いや、私だな…。
「こなつちゃん…?」
ぼうっとしていた間に、拓斗くんの顔が近くて、
「拓斗くん、近い…」
平手打ちをするように退けて、問題の続きを解く。
「
「学校で辰己お兄ちゃんって言うなっ」
あれ…?
問題がスムーズに解けている…。
「こなつちゃんのココロの声をお伝えしただけですよ」
「怖くしてんのは、誰だよっ」
「俺…?」
仲良しさんだなぁ…。なんて思いながら少しは前進している算数のドリルを解いていると、誰かの手の感触が頭の上にある…。
「正解…」
顔を上げると、向かい側にいる中越先生の手だった…。
「ちゃんと合ってるよ…」
この優しい顔に、きっと一部の生徒は騙されているのだろう…。
結構なSっ気ある先生だよっ!
と、叫びたい…。
叫ばないけど…。
「その手、邪魔」
その手を退ける拓斗くん。
「中越先生、学校でそういう事すると変な噂になるよ…?」
そして、私の頭をナデナデして、笑顔で。
「俺は本当に好きなヒトにしかしないから…」
その笑顔に、胸がチクリと痛む。
私にはただの幼馴染みで、それ以上でもそれ以下でもない…。
「どちらも変な噂しか立たないから、ヤメてくださいっ」
そう言い切ったら、更に頭をナデナデされてしまっている…。
「ふっ…ふははっ」
中越先生は何が笑いのツボだったのか苦しそうに笑っている…。
「辰己お兄ちゃん、笑い過ぎっ」
拓斗くんはまだ私の頭から手を退ける気はないらしい…。
「た、辰己お、お兄ちゃん…い、言うなっ…」
笑いながら突っ込む中越先生に、
「既成事実でも、いつか本当になればいいんだよ…」
そう呟いた拓斗くんの切ない表情に、笑わずにはいられなかった…。
「笑うところじゃないよ…」
拓斗くんは少しムスッとして、でもすぐに微笑んで、
「こなつちゃん…」
拓斗くんに見つめられて、すごく疑問符がいっぱい頭の上を踊った…。
「拓斗、諦めも肝心だぞ…」
中越先生は滑舌よく笑い、去って行った…。
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