勇者を漫才の相方に引き入れたい女魔王と、慰みものにされると思いこんでいる女勇者

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

「この私の相方になれ勇者よ」「くっ、ツッコめ!」「なんでやねん」

「この私のモノになれ、勇者よ!」


 私は、玉座に座りながら、目の前の女勇者に語りかける。

 

「ワタシは物ではない! 断る!」


 剣の切っ先を向けて、女勇者は私を睨んだ。

 

「そうか。言い方悪かったな。では、ウチは相方あいかたになってんか?」


 ウチは、地元の言葉で語りかける。

 

「相方……つがいになれというのか!?」

「なんでやねん」



 コイツは世間知らずのお姫様で、常識を知らないと聞いていたが、ここまでとは。


「ちゃうちゃう。実はな、ウチはこの国に『笑い』を広めたいねん」

「笑いだと?」


 そうだ。

 この世界は娯楽が少ない。

 だから、人は争うのだと私は考えた。


 新しい娯楽が広まれば、この世界も多少はマシになるんじゃないかと。


「つまり、ワタシを慰み者にする気なんだな?」

「なんでやねん」


 コイツなんでこんなドレイ脳なんだ? 被虐心マックスか?


「どうせ笑いを提供すると行って、ワタシを丸裸にして、人前で純潔を散らさせるつもりだろう!」

「発想力豊かすぎやろ! ウチは女や!」


 なぜ、この勇者を陵辱したら民衆が笑うと思っているのか。

 想像力が飛躍しすぎている。

 

「その長い角が証拠だ!」

「この角がどないしてん? 魔王家において、角の長さは魔力が高いことの証や」


 私が説明すると、女勇者は「フッ」と口を釣り上げた。


「やはりだ。その角は、有事の際はズズズッとお前の下腹部にまで到達し、殿方のハリ型に変形するのだ! その屹立した立派な角で、ワタシの清い領域を穢すつもりなんだ! ああ恐ろしい!」

「そんな機能あれへん!」

「くっ、ツッコめ!」

「サブタイ回収すんなや!」

 

 まったく、王家でどんな教育を受けてきた!? 

 

「ちゃうねん。漫才やろーや、っていうてんねんよ」

「なんだ、そのマンザイなるものは?」


 やっぱりな。この世界は娯楽が少ないんだ。


「今みたいなやり取りのコトや」

「やっぱり陵辱ではないか!」

「どこにそんな要素あった!?」


 このままでは、話が進まない。


「誰か来いや! 漫才がどないなんか、女勇者に見したれ!」


 四天王を呼び出し、マンザイを披露してもらった。


 女勇者は、受けているかどうなのか微妙な反応を示す。


「どないや? わりと一般向けあるあるやと思うねんけどな」

「テンポが悪い。『伝説の剣を抜いたらマンドラゴラでした』より、『開かずの玄室が、国王と隣国の王妃の密会現場』だった方が、世相を反映して受けるかもしれん」

「やたら詳しいなお前!」


 とはいえ、女勇者はまだ納得しない模様。


「どないしてん? やっぱりお笑いは難しいか」

「うむ。こんなことで民衆の心を掴むよりいい手がある」

「どんな手ぇを、思いついたんや?」

「ワタシと魔王がイチャイチャするんだ。それだけでみんなニヤニヤが止まらなくなるぞ」

「どんだけツボを心得とんねん!」



 こうして、魔王と勇者はイチャイチャによって平和をもたらした。

 

 

 なんやそれ? やめさしてもらうわ。

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勇者を漫才の相方に引き入れたい女魔王と、慰みものにされると思いこんでいる女勇者 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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