笑うことがくれた希望
NOTTI
第1話:笑顔がくれた希望
ある日の朝、「お前の話は面白くない!」と下のリビングでなんやら言い合っている声が聞こえてきた。
眠い目をこすりながら下に降りると兄・隆也と姉・菜々実がスピーチ大会の練習をしていて、横でもう1人の兄・裕也が文化祭でやる漫才の練習をしていた。
当時小学5年生だった私は「なんで朝からくだらないことやっているのだろう?」と彼らのやっている事を横目に水を一口飲んだ。
一番上の兄と姉は3歳離れているが、まるでカップルのような関係性で、真ん中の兄も人を笑わせることが大好きで小さいときからきょうだいを笑わせてくれていた。
ただ、心実と妹・奈津実と弟・裕也は小さいときからめったに笑うことはなかった。
その理由として、彼女がある番組を見たことがきっかけでトラウマを感じてしまったことだった。
これは妹が2歳の頃のことだ。
観ていた番組はコメディなのだが、人が人にツッコミをいれるシーンや人が落ちるシーンなど子どもが観る番組としてはかなり刺激が強く、当時はまだ幼く、状況を理解出来なかった妹にとっては恐怖心を感じたのだろう。
それ以降、お笑い番組を観ても、コメディ映画を観ても笑わない日々が続いていた。
ある日、アニメを観ていた妹がふと笑ったことがあった。
この時は5歳になり、少しテレビ番組や読んでいる絵本の内容を理解出来るようになったことで、言葉と言葉の線が繋がりやすくなったのかもしれない。
ただ、彼女は当時通っていた園で、たびたびフラッシュバックを起こして、倒れてしまうことが増えていた。
そんな彼女を救ったのが人を救うアニメのヒーローだった。
そのヒーローは何か起きたときに人に手を差し伸べて、寄り添う姿を子供たちに見せて、教えることで子供たちを笑顔にし、その両親も笑顔にするというすごく素敵なキャラクターだが、そのヒーローには辛い過去もあった。
それは、“友達がいじめに遭って、引きこもりになってしまった”や“不登校になってしまった”など彼・彼女らにとっては辛いことが多く、その場面に遭遇する度に気持ちが揺らぐことが多かったのだ。
そのヒーローの姿を見て、最初は感激し、泣いてしまったが、次第にこのヒーローに惹かれ始めたことで、彼女が笑顔を見せる場面が増えていた。
しかし、2年経った今は再び笑うことも泣くこともなくなってしまい、裕也が漫才をして奈津実を笑わせようとするとパニックを起こすことも増えてしまった。
そんな彼女にまた笑って欲しいと思っていたが、笑わなくなった原因が分からない以上どのように笑わせるべきなのかが分からなくなっていた。
そして、隆也と菜々実が本番当日になり、自分のスピーチに自信を持ちながら会場へと向かっていった。
少し遅れて、両親と心実・奈津実が会場に向けて出発し、裕也は同級生と漫才の練習、弟・智也は5歳未満のため会場に入場できないこともあり、2人でお留守番をすることになった。
会場に着くと今日の参加者の家族でごった返していた。
今回のコンクールは関東の各都道府県の予選を勝ち抜いた学生が集まり、家族の前でスピーチすることになっていた。
隆也と菜々実は大学生部門と高校生部門でスピーチするため、最後の方に出てくるのだ。
その頃、家では裕也が智也に漫才のネタを披露していた。
ただ、彼は全く笑ってくれなかった。
友達もこの空気感になったことで動揺し、裕也は“なんでウケないのだろう?”と疑問に思っていた。
3時間後、スピーチ大会に行っていた2人以外の家族が帰ってきた。
なんと、今日のコンクールで2人とも金賞と最優秀スピーカー賞を受賞していたのだ。
実は隆也は脚本家、菜々実はアナウンサーになるという夢を持っていた。
そのために必要な文章力と発信力、プレゼンテーション力を育むために必要な体験・経験としてコンクールなどの参加に対して積極的だった。
そして、翌日は大手テレビ局が協賛する“レッツスマイル・コメディ”というお笑い番組が来月放送されることに先駆け、番組の脚本チーム編成会議での学生アシスタントの合否が決まる日でもあり、隆也はこのままの勢いで3枠ある学生アシスタントの座を確保したかった。
ただ、今回は応募者が3000人いて、最終選考に残っているのは20歳の有名大学に在籍するまーK(本名:辰野・マーク・祐二)・22歳の学生小説家のXマン(本名:川野孝太朗)・19歳の隆也(本名:村田隆也)、・20歳のタレントももな(本名:今野桃菜)・18歳の凄腕脚本家プリンスまな(木田愛菜)・16歳の高校生脚本家ももな(本名:村田桃菜)など隆也以外は学生アシスタントとして活動した経験があり、今回初めて最終選考に残った隆也にとっては将来的にはライバルになるメンバーであり、どこかで一緒に作る機会があるメンバーである事は間違いない。
そして、菜々実も別の番組だが、学生ナレーターとして参加して欲しいというオファーが届いており、メンバーを観てみると将来的にはアナウンサー志望の学生が多く、就職活動が始まったときにお互いにライバルになる存在である事から、こちらもアナウンサー志望の他の学生との共演機会になるため、他の子たちがどういう動きをするのか、アナウンサーとして必要な素質や適性を観察する良い機会になることだろう。
笑うことがくれた希望 NOTTI @masa_notti
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