【KAC20224】登れ俺たちのギャラクティックコメディロード

狂フラフープ

お笑い甲子園宙域大会編

 アイドルオーディションの言い訳じゃあるまいし、まさかふざけたクラスメイトの応募で参加したお笑い甲子園で俺たち二人が優勝すると誰が予想しただろう。

 そしてお笑い甲子園の先にアジア大会と世界大会が待ち構えており、世界大会に優勝すれば宇宙編に突入するなどとは思ってもみなかった。


「いや、絶対無理だろコレ」

 だってどう見ても岩とか、粒粒の集合体とかほぼ板とか、挙句の果てには地球人の感覚器官では認識できない客までいる。

「お前は地区大会の控室でもそう言っていた……だが結果はどうだ? オレらは勝った。オレらが世界大会に出る前は、ギニア人の笑いのツボを知ってたか? わかるだろ。オレは諦めるのが一番嫌いで……お前の作るネタが一番好きなんだよ……」

 相方の坂東は何故か乗り気だった。マジでこいつはネタ出しに何ひとつ貢献しないが乗り気だった。

「やるしかねえだろ……スペース漫才をよ……」

 こうして俺は黎明期宇宙文明のあるあるネタを書き始めた。


 *


 隣で坂東が指を差す。

「ところでこの宙域大会会場のプロキオン第三惑星ってどうやって行くんだ……?」

「宇宙シャトルバスとかないのか?」

 大会要項には現地集合、とだけある。


 あれから長い時間が過ぎた。

 たくさんの仲間ができ、そして死んでいった。

 世界は二つの大戦を経験し、多くの国が滅び、新たな統治機構が登場し、けれど人の営みが変わることはなかった。

 ちょっと説明しきれないのでフリップで年表にまとめることにする。

 

 2031 アンタルヤ講和会議

 2032 B&M宇宙損保(EBM前身)の創業

 2037 第一回軌道サミット

 2038 軌道エレベーターの開通

 2042 初代宇宙総督にアスラン・シェワルナゼが就任

 2047 人類が初めて地球外惑星に到達

 2051 ムワンザ宇宙大学設立

 2053 探査船マルギットⅡが木星でレナキュラスラス発見

 2061 宇宙打ち壊し運動の激化

 2069 第四次世界大戦勃発

 2071 サラ・リッジ(後のアナスタシア・ルーゼン)の誕生

 2084 軌道ステーション『黎明』の墜落

 2088 講和条約

 2100 アナスタシア・ルーゼンがレナキュラスラス培養成功

 2107 フィンギスでレナキュラスラス航宙株発生

 2115 対流型気化クロムエンジンの開発断念

 2130 黄沐辰生誕100周年


 そして今、俺たちは離れていく地球を開拓船から見上げている。

「見えるか坂東……あれが俺たちの地球だ……」

 老いた身体は長期の航宙に耐えることはできない。俺たちが目的地に生きて辿り着くことはないだろう。

 だが悔いはない。悔いている暇などない。我々はようやくこの果てしなく広い宇宙に進出し始めたばかりなのだ。

 立ち止まることはない。諦めることもない。

 地球人類おれたち宇宙開発たたかいは、まだまだこれからなのだから。


 未完







 という一連のネタで三回戦まで勝ち進んだ(優勝は粒粒の分離芸)。

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