第3話 初クエスト
さて、目的地にやってきたわけだが。
周りには木々が生い茂っているだけで敵らしきものは何も見えない。
どうするんだこれ。
「クロ、クエスト欄からさっき見たやつを開始して」
「あ、はい」
俺は言われるがままに開始を押す。
すると周囲の地面からモンスター達が湧き出した。
モンスターの種類はゴブリンと小型の狼、リトルウルフというらしい。
数は15程。俺たちを囲うように配置されている。
「最初っから結構な数だなぁ……しかも包囲されてる」
「だね。頑張る」
独り言だったんだけど……まぁいいか。
シロもいつの間にか剣を両手で構えている。
シロって、武器種固定なのか? ……まぁ今はいいか。
俺は剣を握りなおして構えた。
その直後、周りのモンスター達が一斉に跳びかかってきた。
「よし。こいっ!」
俺は体の左側に両手で剣を構えた。
「速撃・参!」
すると一体のリトルウルフを三撃で切り裂き、包囲の外側に出た。
シロは?
元居た場所を見ると包囲の中心にはシロが取り残されていた。
「シロっ!」
俺が呼ぶとシロは少し表情をやわらげた。
と同時にシロが言った。
「速撃・参」
その言葉と当時にシロの周りに三角形の斬撃がはしった。
その斬撃に巻き込まれ、何体ものモンスターが倒された。
残りは4体。
同じスキルでも工夫を施すことで強力なものになるって事か。
普通スキルはそのまま使うもんだと思ってたんだがな。それとも、別のスキルっていう扱いになるのか?
「クロ、まだ残ってる」
「あ、はい」
「だから、気をぬかな……」
そう言いながらシロは目の前で倒れた。
「シロっ!」
シロのHPバーを確認するともう残り僅かまで減っていた。
シロは攻撃を受けていないはず。何でダメージを……。
「って今はそんなこと考えてる場合じゃないか」
自分にそう言い聞かせ、剣を再び構える。
残り4体。これくらいならさっきのシロと同じようにやれば倒しきれるだろう。
「速撃・参!」
スキルの発動直後、俺は剣の軌道を無理やり捻じ曲げた。
すると先程のシロとは形が違うが、確かに残りのモンスター達を切り裂いていた。
こうやってやったのか。だいぶ無理やりな感じだが。
『クエスト達成!』
その文字が視界に映った。
シロも直ぐに起きてきた。
クエストをクリアするとHPやら何やらが全回復するらしい。
「シロ、大丈夫……ですか?」
「うん。大丈夫」
「よかった。なんでHPが大幅に減ったのか知りませんか?」
「知らない。私がスキルを発動した後、急にクラっとして……」
「そう、ですか」
「ねぇ」
「ん? なんですか?」
「敬語、やめてもいいんだよ?」
「な、なななんで急にそんなこと……」
「クロ一人の時は敬語なんて使ってない」
さっき倒れてた時に言った独り言の事か? でも、それは独り言だしそれにまだため口で話す勇気なんて……。
「クロ?」
「あ、うん。そうなんだけど……」
「だけど?」
「ちょっとまだ、敬語じゃないと失礼じゃないかなって……」
「それは……私が失礼だって言ってるの?」
「いや、そうじゃなくて、ほとんど人と話す時なんか敬語だから……」
「じゃあどうしたら敬語じゃなくしてくれる?」
「分からない、です。親とか親戚とかなら全然大丈夫、なんですけど」
「分かった。私が身近な存在になればいいって事かな」
「う~ん、多分そうだと思います」
「じゃあ頑張ってなるよ。あなたの身近な存在に」
「だから、毎日会いに来て欲しい、かな。クロ」
シロは笑顔でそう言った。
「分かりました。毎日来ますよ」
ゲームをしに、ね。
でも、不思議と悪い気はしない。今まで話してきたクラスメイト達は話しているだけで気持ちが重たかったのに……。
少しだけ、シロのためって思ってもいいかもしれない。
「ありがとう。じゃあ次のクエストいってみよう」
「ちょっとまって下さい」
「なに?」
「今回のクエストは取り敢えずどういう感じなのかを知るためにやったんです」
「うん」
「それで次のクエスト、受けるのはいいんですが、どういうものを選べばいいのかと」
最初の村に鍛冶屋らしきものがあったから先ずはそこに行くか、それとも装備を買うためにお金を貯めるか、それともひたすらレベルを上げるか……。
そう言えば、さっきのモンスター達倒してレベル上がってるのか。
ステータスを見ると確かにレベルが上がっていた。
ん? NEW?
スキルメニューにNEWの表示。
開くと新しいスキルが追加されていた。
「タッグ、スキル?」
「どうしたの?」
「スキルを見てたらタッグスキルって書いてあって……」
「それは二人で使うスキル。やってみる?」
「やりますか。でも、どんなクエストをやれば……」
「クロはどういう戦い方したい?」
「え、急にそう言われても……。う~ん取り敢えず剣をこのまま使いたいですかね」
「じゃあ、オリジナルの剣でも、作らない?」
「なるほど。それなら鍛冶屋に行った方がいいかもですね」
「分かった。じゃあ、行こ」
「あ、はい」
俺たちはそのまま村の鍛冶屋へと向かった。
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