第11話 変な夢見ると思うけど、ビックリしないでくれ。


 創造魔法の取得は事情により却下。目立つと目立たないの線引きがわからない。人間界で目立っても神の世界で目立たなければいい。なんじゃそりゃ!



『仕方ない。パラメーター強化の分1ポイント回して……あっ、また忘れてた! 爺さん、爺さん、言語理解のスキル、交換できないか? 妖精と話す必要性を感じないんだが……大体言語のレベルって意味不明なんだけど?』


『何、単純なことじゃ。レベルⅠで二ヶ国語、レベルⅡで三ヶ国語、以下同様じゃ。この世界には大きく10の言語体系があっての、レベルⅨで妖精語を含めて全ての言葉がわかるという寸法じゃ』


『何だその取って付けたような説明は。民族が絶滅したりして言葉が途絶えたらどうするんだ? 逆に新しい言語が生まれたら、レベルⅩⅠとかになるのかよ。ウチの世界じゃ16カ国語ペラペラの人もザラにいたぞ』


『そういわれても、そういうシステムを先代代表たちが作ったのだからしょうがないじゃろ。それよりお主、この世界を旅して回るつもりじゃろ? いざという時便利じゃぞ。ま、決めるのはお主次第じゃがな』


 う、そうだった。どこか一箇所に引きこもるならレベルⅠでも足りそうだけど、うーむ、爺さん、異世界人の行動パターン熟知している。流石神というべきか。


『……わかった。このままにしておく。じゃあ、パラメーターから1ポイント引いて、残り6ポイントで「気配察知Ⅲ」を頼む。自分でレベル上げするさ。あ、この世界の一般の人はポイント制じゃないんだよな』


『そうじゃな。今回は特別じゃ。ワシからの詫びじゃからの。普通はレベルアップと同時によく使用する「ぱらめーたー」が「精霊」によって自動で強化されるのじゃ』


『それって、俺たちにも適用されるんだろうな?』


『そのはずじゃが、そうじゃな、万一のためにお主の鑑定の「なびげーしょん」に一度だけワシに連絡できるようにしておこう。あまり頻繁に連絡を取ると連中に気付かれかねんからの』


『一度だけでもありがたいよ』


『そうか。では決まりじゃな。時間ももうない。聞くべきことはもうないな?』


『ありすぎて困るけど、これからは新さんの時間だ。新さんは俺と時代が400年違うからこんな展開想像もしてなかったと思う。色々説明して、スキルとかパラメーター強化とかのアドバイスもしてやってほしい。あ、帰れる可能性があるって間違いなく伝えてくれな』


『わかっておる。そろそろ時間を通常に戻すぞ。また会えることを楽しみにしておるぞ』


『ああ、またな、爺さん』


 そして俺は月の光の下、目を覚ますのだった。





「起きたでござるか? ケント殿」


 きょろきょろ辺りを見回していると新さんに声をかけられた。


「おはよう? こんばんわ?」


「はっはっは。まだ目が覚めぬようでござるな。やはり野宿は堪えたでござろう。もっと寝ておってかまわぬでござるよ」


 何だろう。数時間前、体感で一日前に会ったときと印象が違う。何ていうかハイになってる感じ。新さんが大声で笑ってるの初めて聞いた気がする。

 こりゃ早いとこ休ませないと。


「新さん、見張り番すまないな。俺はもう大丈夫だから、ゆっくり休んでくれ」


「よろしいのか? 某は仮にも武士もののふゆえ、身体は鍛えておりもうす。夜明かしの一晩や二晩など……」


「大丈夫、大丈夫。それに、野宿があと何日続くかわからないんだし、眠れる時に寝ておかないといくら武士でも身体が持たないと思うぞ」


「む、確かに一理ある……では、交代してもらうといたそう。されど、無理をなさらぬよう。辛い時には遠慮なく某を起こしてくだされ」


「はいはい。そうさせていただきます。ほら、早く寝て。時間がもったいない」


「う、うむ……」


 何か過保護キャラになりかけてるけど、やっと寝る体勢になった。


「変な夢見ると思うけど、ビックリしないでくれ。じゃあ、おやすみ」


「む? うむ、かたじけない」


 お、新さん、目を瞑ったとたんカクンってなった。よっぽど疲れてたんだなー、なんて、爺さんが速攻で精神体とやらを呼び出したはず。


「爺さん! 新さんをよろしく!」


 届くかどうかわからんが、夜空に声を掛けてみた。うん、新さんの身体に反応なし。間違いなく神界に行ったのだろう。字面がやばいけどな。


 さて。

 新さんに俺から何も説明しなかったが、実際単なる夢ってこともある。そのパターンは最悪だ。だが、簡単に証明できるはず。


「ステータス・オープン」


 おおっ! 出た! 焚き火や月明かりにも負けない光の画面! これだけで夢じゃないことがわかったが、キャラメイキングの部分だけ夢だというのは勘弁してほしい。

 どれどれ?



 名前 : ケント・ユウキ

 種族 : 人族-普人種

 年齢 : 17

 レベル: 32

 HP : 318/318

 MP : 370/370


 所持スキル

 算術Ⅴ 錬金術Ⅴ 料理Ⅲ 剣術Ⅰ 格闘術Ⅰ 言語理解Ⅸ

 鑑定X 付与魔術Ⅰ 気配察知Ⅲ 隠蔽Ⅴ 棒術Ⅰ

 無属性魔法X 火属性魔法Ⅰ 水属性魔法Ⅰ 土属性魔法Ⅰ 風属性魔法Ⅰ

 光属性魔法Ⅰ 闇属性魔法Ⅰ 空間属性魔法Ⅰ 時間属性魔法Ⅰ




 ホクホク。

 生の身体で初めてステータスが見れた。森で試した時に見れてれば……事態は全く変わらなかったけど少なくても精神的に混乱は少なかったはず。何だよ! 戦国時代にタイムスリップ疑惑って!


 それはともかく、レベルが上がってる。

 神ポイントは1ポイントにつきレベルが3上がって、HPとMPが1ポイントにつき30上がるんだろう。そう考えると最初のMP100ってショボすぎる。魔王候補なのに……


 やっぱりパラメーターがないのが寂しい。その分スキルが大漁。バランスが悪いな。アップデート、はよ! 代表神たちに願うのが癪に障る。

 ま、ポイント振り分け制は今回だけだから見えなくても不都合はないか。でも、敵対した相手が肉体派か魔法特化型かとか判断できると楽なんだよな。


「ま、とりあえず色々試してみるか」


 精神体を召喚されてるから滅多なことでは目を覚まさないだろうが、実験で大きな音が出る可能性は高いし、一応少し離れたところに移動する。勿論すぐに戻れる距離だ。いざという時には爺さんが戻すとは思うけど。


 ではまず安全なスキルから。


「鑑定!」


 たぶん声を出さなくてもいいはず。一応記念に。


『鑑定結果:枯れ木』


 うん。スキルがなくてもわかるね。

 一発目からしょぼい物選んでしまった自分が悪い。だが。

 ナビさん、ナビさん、スキルレベル最高のⅩなのにこれだけですか?


『回答:スキルの有用性の確認と判断。スキルレベルⅠ段階の回答を提示。各段階のそれぞれの回答を要求した場合、文字にして10~100000字あまりで説明可能。種族、特性、分布、利用方法、進化の過程、個体の歴史……』


「わー! ストップ、ストップ!」


『回答:続けますか?』


「大変有用だと感じたので、これからもよろしくおねがいします」


 冗談で問いかけた、いや、言葉にもしていなかったのに律儀に反応された。まさしく『鑑定先生』や『ナビ子さん』である。


『回答:変な呼び方をしないでください』


 回答、心の声に突っ込まないで!



 ************


 新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』https://kakuyomu.jp/works/16816927861502180996月水金19時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』https://kakuyomu.jp/works/16816927861502718497火木土19時投稿予定。


 連載中の『ヘイスが征く』は日曜日、週一投稿に変更します。ストックが切れそうなので。

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