1月4日

頭のなかに大量に虹色の鳳凰が見える。

 一体二体どころではない。無数の光輝く色とりどりの鳳凰が脳内で羽根を翻して飛んでいる。炎が風に揺らめいて踊るように鳳凰は優雅に舞っている。

 なにをしているのだろう?

《探しているのです》

 なにを?

《我々の大切な何かです》

 何かって何。

 鳳凰たちは微笑んでいるだけだった。変なの。

 でも綺麗。

 いつまでも見つめていたくなる。見ていてもいいのだろうか。

《結構です》

 鳳凰たちは胸を張る。虹色の羽根がきらきら光る。

《次の風が吹くまでは、我々はここに居つづけましょう》

 なぜ?

 鳳凰たちはオスもメスも甲高く鳴き合って空高く舞い上がり、ぐるぐる旋回する。

 見たことがないほどきれいな羽根がふわふわと数枚足元に落ちてくる。頭のなかに、鳳凰たちがいる。

 架空の生き物なのだと思っていたが、どうやら実在するようだった。

 不思議な感覚で、胸の奥が温かくなるようなじんわりとした幸福感のような淡い情熱が宿った。これはなんだ?

 がんばれって言いたいの? そうなの?

 鳳凰たちは頷くようにそっと目を細めた。

 あたしは発狂しているが、それゆえにこんなきれいな幻覚を見ることができるのだったら、まあ赦せると思った。



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