第12話 苦労人と、宇宙聖女(その10)

 相変わらずのクソ長さ……。

 この小説は何故……いや、最早何も言うまい……(和菓子感)


 前回までのあらすじ!

 

 各人の間隙を縫って、理仁亜がきらりにかどわかされたきらりんぱ☆

 自らの不甲斐なさを嘆き、哀しみにくれるおなごら。

 そんな彼女らを調子に乗って苛む無神経なジョーンズハゲ

 だが、我らが苦労人は乙女から笑顔を奪う事など決して許さぬ。

 おなごらをジョーンズハゲの魔の手から救い出し、理仁亜を救うべく立ち上がる。

 

 気高き苦労人は、欲望食欲に塗れた邪悪きらりの手によって絶望の海と化した宇宙そらを切り裂く希望の光となる……。

 

 ……アレ? 何か違うような……?

 まぁ、大体合うてるやろ!


 大丈夫だ、問題ない!

 平気平気!


 ヨシ!


 という事で以下ほんへ。


 

 

 哲人から激励と指示を受けたさわこ。

 未だ揺れる心を何とか抑え、通信を閉じた。


 そしていざ宿へと戻らんと振り返ると……。

 周囲の人々が自らにフォーカスしていて”ぎょっ”となった。


 どうやら、人目も憚らず号泣していたのを多数の群衆に目撃されてしまったようだ。

 

 確かに、普通に考えたら、突然年若いキトゥンが道端で泣いてばかりいれば誰だって何事かと思うだろう。

 そんな状況になれば、例えお巡りさんでなかったとて、困ってしまってワンワンしてしまうのは火を見るより確定的に明らかである。

 

 羞恥の余り挙動不審になってしまうさわこ。

 冷静になって己が現状を把握し、蒼白だった顔が一気に真紅へと染まる。

 

 更には、そんなさわこに、黙ってハンカチーフを差し出す者が。

 遊覧船の事を教えてくれたおっちゃんである。


 こんなイケメンムーブを見せつけられてしまっては、”トゥンク……!”となってしまうものであるが……。

 今この瞬間に於いては、その優しさがかえって痛い。


 受けた傷をフルパワーで広げる勢いの追撃を食らったさわこは、状況が状況だけに、より一層赤面。

 恒星が噴き出すプロミネンスの様な顔色となるのであった……。


 

 ……………………

 

 

 心配する群衆らに謝り倒し、なんとかかんとか誤解を解いたさわこ。

 兎にも角にも宿へ戻り、出発の直前まで待機していたまことに事情を説明した。


 きらりの暴挙に怒髪冠を衝く勢いのまことであったが……。

 

 スケジュールの合間にある自由時間は、事前に申告しておけばオプショナルツアーも認められている。

 今この場においても別行動している学生らもいて、各々の旅を満喫しているであろう。

(要は次のスケジュールまでに合流できればそれで桶である)


 ましてや、形はどうあれ、理仁亜は引率教師(極めて信頼にかけるが)と共に行動している。

 普通であるならば全く大丈夫で問題ない。

 ”( ´_ゝ`)フーン、ソウナンダ”位で済む。


 この場合においても何ら瑕疵がある訳でもない。

 まぁ……強いて言うなら……。

 

 きらりは無申告で行動しよった。

 戻ってきたらば、ペナルティとして、まことから腹パンを喰らうであろう。


 実際その程度の事である……普通であれば。


 そう、普通であれば。

 

 傍からみれば、特に仲が良かった教師とその教え子による最後の戯れ。

 即ち、常識の範囲内である。

 

 さしもの高性能AIとて、不可解な不幸体質の事まで演算する事は出来ぬ。


 事実、今しがたまことは”理仁亜救出を優先すべきでは?”というイシューを管理システムへプッシュしたのだが……。

 そのブランチは学園統括AIによって否定され、マージされずに電異の海へと消え去った。

(つかえねーw)

 

 意思決定の権限を持つものがこの有様。

 

 いかに学年主任であるまこととて、一従業員である事に変わりはなく。

 独断で修学旅行を中止してまできらりを追跡する訳にはいかない。

 

 やむを得ず、体裁として、”きらりはオプショナルツアー引率の為に別行動している”という体にして取り繕われた。

 これにより、理仁亜ときらりの帰還を待たずして午後の予定に出発する事となった。

 

 きらり不在の穴は、まことがさわこらのクラスのバスに乗って埋める。


 ぷりぷり怒って文句をツイートするまことを宥めつつ。

 さわこは、目を回して昏倒から目覚めない優華と来羅&楓鼓をバスに格納。

 後、自らも乗り込んだ。


 ……数分して定刻となり、バスは何事もなかったかのように出発した。


 移り行く車窓を眺めるさわこの表情は友の安否を気遣う憂いを帯びたものではあったが……。

 その目から希望の光が消える事はなかった。

 

 

 ……………………


 

 学生らを乗せたスペースバスがドッキングベイから発進すると同時にミラリィらが帰還した。

 彼女らを宙風の搭乗口にて出迎えたおのこらは、特に何を言うでもなく、これを黙って迎え入れた。


 繊細な壊れ物を優しく包み込むような……。

 そんなおのこらの不器用な愛が、いまだ心揺れるおなごらを宥め、癒した。


 何はともあれ、旅団の面々はこうして一堂に会した。

 イクサ場へ馳せ参る備えをする時が来た。

 

 満を持して、哲人は、ブリッヂにてブリーフィングを開始するのであった。



『さて、まずは皆よく戻って来てくれた。各々らにも色々言いたい事があるだろうが、時は残り少ない。反省会なら全て終わった後でも出来る。今はぐっと堪え、ミッションに注力してもらいたい。……貴将君、モニタを頼む』

「了解!(''◇'')ゞ」


 哲人がそう促すや、貴将の素早いキータッチにてブリッジ内にホロ・モニタが出現した。

 

 旅団員の眼前に、今、詳細な猫の目星雲がある。

 そして貴将の更なるキータッチに合わせてズームされて行き……。


 猫の目星雲の一角、ほんのドットに過ぎないレインボーキャッツバレーの全貌が詳らかに浮かび上がった!


 ……約呼らが帰還の命を受けてから今この場に戻るまでは、ほんの寸刻に過ぎなかったはずである。

 にも拘わらず此処まで詳細な情報を収集するとは……。


 銀河に名だたる豪傑である哲人は当然として。

 荒事を好まぬ聖者である貴将もまた、事態を諦めてはおらぬ。

 寧ろ、おなごらの失敗とやらかしすら飲み下し、Head-Charaに笑顔ウルトラZな気概すら感じる。

 

 もやしめいた兵六玉だと侮っていたおのこの、気高き不退転の覚悟。

 それは、不安と慚愧に揺れるおなごらの居住まいを正すに十分足りうるものであった!


 同僚の熱き想いに気を引き締めたおなごら。

 (`・ω・´)キリッとした表情で、将からの下知を一言一句聞き漏らすまいと集中しよる。

 その様は大変頼もしく、微笑ましかった。


 そんなキトゥンらの成長に目を細めつつ、説明を続ける哲人。

 

『ミッションのターゲット・フィールドであるレインボーキャッツバレーは、猫の目星雲の片隅にある、全体から見ればほんの一部に過ぎないエリアであるが……宇宙航海技術が発展した現代であってすら強引な航行が困難な程に荒れ狂った宇宙うみだ。むきになって突っ込んたらば最後、我々が星間物質の仲間入りすることになってしまう』


 哲人の説明に合わせ、ホロ・モニタがズーム。

 レインボーキャッツバレーの詳細な映像がブリッヂに浮かび上がる。


 その姿は、少々いびつな球状であった。

 内部には無数のラインが網の目に広がっている。


 それは肺の構造によく似ていた。


 映像をフォーカスしたあと、貴将が説明を引き継ぐ。


「そんな危険極まりない宙域を遊覧可能にしているのが、いま皆にご覧頂いている無数の管……通称、G・ロジスティックラインです。これらは、この宙域が過去に宇宙鉱山として開発されていた頃の名残で、そのまま航行する為に利用されているようです」

 

 そんな、宇宙規模にでっかいレンコンを見たキトゥンら。

 事態の深刻さを改めて思い知り、眩暈すら覚えた。


 皆一様に若干腰が引けた様子で、思わずツイートする。


「な、なんだか蟻の巣みたいですね……」

「ハゲの頭みたいにグッチャグチャだよぅ!><」

「(;´Д`)ズルムケダァ」


 そんなおなごらの呻きに呼応するかのように。

 性懲りもなくジョーンズハゲが抗議の喚きを上げよった。


「諸君らも大概しつこいの! ワシはハゲとらんし、グッチャグチャでもないわい! 第一、ワシと星雲とじゃ似ても似つかんじゃろ! おかしいですよキトゥンちゃんさん達!(ジタバタ)」


「うひゃあ!?(ビクッ♡)」

「わわ、吃驚したぁ~(´;ω;`)」

「ウーワ!Σ(; ・`д・´)キッショ」


 どうやら、キトゥンちゃんらが落ち着きを取り戻した所で、痒み地獄から解放されたようだ。

 そのまま寝ていればいいものを、命冥加なやっこである。

 

『おお、センセイ、起きてらしたんですか』


「あれは、今から10年以上前の話じゃ……ワシはソロで売り出そうと躍起になっちょる青二才……って違う! ワシは瀕死の怪盗なんかじゃない! コレ前もやったからもうエエじゃろ!?」


「勝手にボケておいて良くいうわ……」

「あっ、この! そのまま寝ててくだすってかまわないんですよ!」


 一同の非難もよそに、尚も蛍光色に光る管をうねらせながら蠢くジョーンズハゲ

 その有様は控えめにいっても大変キモかった。


「ファファファ……。そうはいかん! このような面白そうなイベントを見逃す訳にはイカンぞ! ワシも! ワシもブリーフィングするんじゃあ!(ジッタンバッタン)」


「もう! 大人しくしててくださーい!(;´Д`)」

「きもーい! ハゲ、きもーい!(´;ω;`)」

「( •᷄ὤ•᷅ )チネバイイノニ」


「!? キトゥンちゃん達、何でそんなワシに厳しいの!? ワシが諸君らに何かしたとでも申すのかね!? そも、ワシ団長じゃん!? こういうのはいの一番に参加せねばならんじゃろうがあ~!(ジッタンバッタン)」


「なぁっ!? 教授ハゲ、貴方は一体全体、どの口からそんなセリフが言えるのですか!?」

「ぬうぅ~! うぬは今しがた蔵智らにした仕打ちをもう忘れたというのか!? 重ね重ね、破廉恥極まりないやっこだ! ……ゆ゛る゛さ゛ん゛!」


 フジャケルナ! モアイ!

 アンタガナ、アンタガスベテワァールインダヨォ!

 オグャウゥン!

 オレノジャマヲスルナラカタイプロポッポデロ!

 ミダダァ! クサァ!


 何故かジョーンズハゲの周りをくるくる回りながら口論する億代。

 これまた妙なエコーがかかっていて、二人の言葉が聞き取りづらかった。

 

 あの激しい痒みの無間地獄から黄泉返ったジョーンズハゲの凄まじい生命力にむしろ感心する哲人であったが……。

 今こんな事をしている場合ではない。


 やむを得ず、オブザーバー参加を認める事にした。

 

『別に参加する事自体は構いませんが……流石に今度はもう戒めを解き放つ訳にはいきませんぞ?』


「ガハハ! それで十分すぎる程じゃわい! 第一、縛されて居ようがいまいが、どっちみちワシに出来る事があるとは思えんしの! 餅は餅屋じゃあ!」


「よく分かっておいでじゃないですか」

「ぬう! ならば何故強引に我らへとり憑こうとするのだ!?」


「と、とり憑くってなんじゃあ!? 億代クン、君はワシの事を何だと思うちょるのかね!? 兎に角! 仲間外れは嫌なんじゃあ~! ワシだって冒険したいの我慢しとるのに! それに、荒事は素人じゃが学者としては一端! ひょっとすると何か違う角度からの切り口がみつかるやもしれんぞ!?」


「無茶苦茶だけど、”ンー、何かそうかも?”と思っちゃうのが腹立ちます~!(;´Д`)」

「くさーい! おのれでいっちょ前とか言っちゃうハゲ、くさーい!(´;ω;`)」

「( •᷄ὤ•᷅ )チネ」


 再び喧騒に包まれるブリッヂ。

 このままでは収拾がつかぬ。


 哲人はやむを得ず強引にブリーフィングを進行させる事にした。


『やれやれ……仕方ないな。センセイ、何か気になる点があれば仰ってください。……皆、悪いが逼迫した状況故、ここは私に免じて堪えて欲しい』


「星永さんがそう言うなら……」

「むぅ~、ハゲのくせにぃ~! ハゲのくせにぃ~!」

「( •᷄ὤ•᷅ )ウゼー」


 哲人の懇願に、渋々頷くキトゥンちゃんら。

 だが、その様子を見て、調子が有頂天になるジョーンズハゲ


「ガハハ! やはり哲人クンはこのワシを誰よりも理解しとる! 流石哲人クン! さす哲! さぁ、ミッションの号令を今! 高らかに宣言シタマエ! イクゾー!(テッテッテテテ♪)ってな! ガッハッハ!(ジッタンバッタン)」


「ちょ、教授ハゲ! 何勝手に仕切ってるんですか!?」

「まだ作戦の概要も言っておらぬというのに……! この宇宙そら坊主が……ゆ゛る゛さ゛ん゛!」


 フジャケルナ! モアイ!

 アンタガナ、アンタガスベテワァールインダヨォ!

 オグャウゥン!

 オレノジャマヲスルナラカタイプロポッポデロ!

 ミダダァ! クサァ!


 何故かジョーンズハゲの周りをくるくる回りながら口論する億代。

 これまた妙なエコーがかかっていて、二人の言葉が聞き取りづらかった。

 

 通算5回目となるこのやり取りに辟易する哲人。

 何かもう色々と面倒くさくなったので、ジョーンズハゲの相手は億代達に任せ、ブリーフィングを再開する事にした。


『ンー、フッフ……! まぁセンセイの事はさておいて……。モニタに集中してほしい。コイツをどう思う?』


 尚も喚くジョーンズハゲから目線を切り……。

 哲人に促され、改めてCGを注視するキトゥンちゃんら。


 その構造の複雑さに、再び眩暈すら覚える。

 

「すごく……ゴチャゴチャですぅ……」

「これじゃ何処に行けばいいか分からないよぅ!」

「アワ((゚゚ω ω゚゚ ))ワワ!!(オロオロ)」


 そんなキトゥンちゃんらの様子を見たパピーたち。

 喚くジョーンズハゲ等捨て置いて、彼女らを優しく宥める。


「フッ、案ずるな蔵智よ……大丈夫だ、問題はないぞ」

「えっ? というと( ^ω^)?キョトン」

 

 然り、と言葉を引き継ぐ哲人と貴将。


『億代君の言う通り、安心したまえ。見た目こそ複雑怪奇極まりない構造ではあるが……ここはもう鉱山ではなく唯の観光地。表示されている坑道群はもう殆ど使われていないのさ』


「現在においては、研究目的を除いて、遊覧コースであるこのラインのみが使用されているようです」

 

 そういって貴将が操作すると、無数のライン上にある一筋が赤くフォーカスされた。

 その赤く光るラインは球状内部をS字に走り、中心部をかすめた後に上端から抜ける軌跡を描いていた。


『こいつは本来、採取した星間物質を運び出す為に設けられたものらしい。この宙域の最も深い場所から脱するのに利用されていたそうだ』


「このような形状なのは、内部に渦巻くエネルギーを使って推進力を使わずに加速し、素早い輸送を実現しているからだな」


 億代がそう言うと、CGアニメイシヨンの宇宙船が画面上に出現。

 坑道に入って加速し、中心部にて一旦停止したあと勢いよく射出される様子が見て取れた。


「ほぇ~、良くできてるんですね~。入る時は中心部に引っ張ってもらって、出る時は押し出されるんですね~」

「(・ω・)ノシΣ凸20ヘェ」


 過ぎ去りし時……。

 かつて宇宙そらの鉱山にて繰り広げられた人々の営み。

 

 その面影を垣間見て、感心する約呼とミラリィ。


 しかし、蔵智は二人とは別の、負の可能性について思い当たったようだ。

 再び不安げに揺れる瞳でツイートしよる。


「エ~、じゃあ~、ボク達が後追ってもぉ~……絶対に追いつけないんじゃ~な~い?(´;ω;`)」


 ( ^ω^)( ^ω^)……。

 Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)!


 おのこらの熱き気概に、何かやり遂げた感じで余裕かましていた二人もこれには再び動揺した!


「た、確かにそうですよ! 何でも加速するならどうしても後追いになっちゃいます!><」

「アワ((゚゚ω ω゚゚ ))ワワ!!(オロオロ)」


 今にもパニック走りを始めそうな勢いで狼狽するキトゥンら。


 だが、そんな彼女らを前にしたおのこらには些かの動揺すら見受けられぬ。

 彼らにとってそんな事は取るに足らない……。


「あぅ……歯磨き粉無くなっちゃった! 絞り出しても出てこないよぅ><」

「大丈夫だ、問題ない! はい新しいヤツ(^ω^)ノ」


 という位に、こんなこともあろうかとチリバツ(死語)に先回りで入念に準備された、些細な出来事なのである。


 余裕の馬力すら感じる笑みを浮かべる哲人がキトゥンらに答える。


『フフ、確かに蔵智君の言う通り、ただむきになって追いかけただけでは一生追いつけまいな』


 同じく、貴将と億代が引き継ぐ。


「だったら追いつく様に追いかければ良いんですよ!」

「然り。蔵智よ、うぬはそれを可能にする力を既に作り出している筈だ!」


 突然水を向けられ、”ビクッ♡”となる蔵智。

 その勢いで”プルンッ♪”と胸が揺れた。


「エ~!? そ、そうなの……かなぁ?」

「( ^ω^)?キョトン」

「つまりは、一体どういう事なんですか?」


 動揺の余り頭の回転が想い出の糸車なみにカラカラ空回りするキトゥンら。


 彼女らは失念している。

 

 短いが濃密であった、半月程の準備期間で成した数々の出来事を。

 方々からかき集めた、便利なガジェットやツールの事を!


 さぁ、今こそ、絡んでもつれた絹を白い歯で嚙み切る、その時だ!


『……蔵智君、出発前に私が改良を依頼したアレの事を覚えているかな?』

「……! あ~、アレかぁ、ひっつき虫だ~(*'ω'*)」


 哲人に促され、ぽんと手を打つ蔵智。

 その勢いで”プルルンッ♪”と胸が揺れた。


「ひっつき虫……ですか? あの、オナモミ属なんかの種子とかの?」

「(・ω・)ナンノコト?」

 

 そんな事を言われても、何のことだかサッパリな約呼とミラリィ。

 このキトゥン二人と同様に、何のこっちゃ訳が分からないよ状態な皆さんに説明しよう!

 

 

 ……高速人員輸送艇”雷光”(ライトニング・ボルテクス)。


 ガーディアンやおまわりさんの特殊部隊が使う小型の揚陸艇である。

 ミサイルのような細長い楕円のボディが特徴。

 五色位に切り替え出来る、あのぶっといボールペンを横にしたような感じを想像してみると分かり良い。

 

 なんだか随分カッコいいコードネームを持つが……。

 にもかかわらず、蔵智が言ったのと同様、現場の人々からは”ひっつき虫”以外の名前で呼ばれる事はほぼない。


 何故か?

 それは本機の外見と機能によるものである。

 

 主な使用局面は被災地域への素早い移動。

 或いは複雑な地形に立てこもる賊を討伐する要員を送り込む、など。

 

 それを可能にするのが、船体の中ほどにあるフレキシブル・ランディング・ギア。

 360度、任意の角度でもって固定でき、あらゆる状態での接地を可能とする。

 

 何処へでも素早く移動し、そしてどんな場所でも接舷出来る柔軟性。


 まさしくひっつき虫の様に。

 表を歩いていたらいつの間にかくっついていた位の勢いである。


 この様な愛称で呼ばれる様になるのは、ごく自然な出来事であると言えよう。

 

 その上、単独で使用のみならず、MDFに懸架することでブースターとしても活用することもできる。

 さらにはそのまま誘導弾の様に射出して、通常時よりも高速に加速。

 こうして、素早く目的地へ戦力を投入するのだ。

 

 過去、旧宇宙警備隊(今のスペースガーディアン)によって開発され、世に送り出されてから一世紀以上。

 にもかかわらず、大幅なモデルチェンジがなされていない。

 

 このことから、その完成度と高い信頼性がうかがえる。

 

 しかも、「熱き冒険者」が所有する機体は蔵智が魔改造したリミテッドエディション!

 艦首には強力なデュアル・ジェネレート・タービンが搭載されている。

 

 これにより、収容人数が少なくなった代わりに大幅な出力アップ。

 余剰エネルギーが、従来品には無かった強力な力場……。


 ”スパイラル・スラスト・フィールド”の発生を実現した。


 その力場のパワーは破壊力ばつ牛ン。

 さながらドリルが如く、ナイフみてぇに尖っては、触るもの皆傷つけよる。

 そしてあらゆる障害、バリアをも穿ち。

 ララバイララバイお休みよと突き進むのだ!


 一見、オーバースペックともとれる程の備えだが……。

 こんなこともあろうかと、哲人は蔵智に依頼し、転ばぬ先の杖として用意していたのだ。


 そんなTASばりの調整じみた装備が、破邪の嚆矢となり。

 今、解き放たれようとしていた!

 

『さて、ひっつき虫がどういった物か知った所で作戦を伝えよう……』


 ひっつき虫のスペックを得心したおなごらの眼前に、CGによるイメージアニメイシヨンが再生され始めた。

 それに合わせて哲人が概要を説明する。


 まず遊覧船のCGが現れ、星雲の下部にある入口へと進んできた。

 そして徐々に加速したのち、中央部にある空間で一時停止した。


 ここで貴将が注釈を加える。


「この中央の空間は星間物質の採取場所だった部分です。採掘の為に一旦停止している時間を利用し、加速するエネルギーを蓄える仕組みになっているのです」


 更に億代が補足する。


「それをそのまま利用して遊覧の時間を取っている、という訳だな」


 この説明を聞いた約呼が不安げに質問する。


「なるほど……。でも、一旦停止したといって、後から追ったところで追いつくのは無理なんじゃないです?」

「(´;ω;`)ウウゥ」


 そんなネガティブプロンプト満載な約呼へ、今度は蔵智が答える。

 

「にゅふふ~、大丈夫で、問題ないよ約呼ちゃん~。その為のひっつき虫だもんね~。ね、てっちゃん!(*'ω'*)」


 自信たっぷり、胸を張って言う蔵智。

 その勢いで”プルルルンッ♪”と胸が揺れた。

 

『フフフ、流石は蔵智君、あの僅かな言葉で私の意図を良く汲み取ってくれた。素晴らしい!』

「にゅっふ!(*'ω'*)ニッコリ」


 哲人の称賛と共に、CGがグレーアウト。

 中央部周辺にある星間物質の分布を強調表示した。


『分厚い星間物質で覆われた本星雲であるが……御覧の通り、中央部のほぼ真横にある区画はやや薄くなっている』


 分布図が中心部を支点として回転し、その様子を映し出す。

 それを見れば、なるほど、すり鉢状に凹んだ部分がある。


『……前述の通りレインボーキャッツバレーは宇宙の難所なんどころさんであり、MDFでの侵入は困難だ。そこで、今しがた話題にあがっていた特殊揚陸艇、通称ひっつき虫を使って諸君らが先行する』


 説明と同時に、CGのMDFが自らに懸架したひっつき虫を誘導弾の如く射出した。


『そして魔改造された新機能を用いて、この手薄となっている部分のイオン乱流をつっきって遊覧船へランデブーする!』

 

 激しく回転するギザギザハートでもって分厚い星間物質をかき分け、力強く遊覧船へと向かうひっつき虫。


 動画はひっつき虫と遊覧船がランデブーした後に一時停止。

 ズームアウトして広域を映す視点となった。


『射出後、私は星雲外縁にて並走し、画面のこの部分……細い脇道の様な坑道が見えるだろう。そこから潜入。諸君らと合流する』


 哲人がそういうと、画面のMDFも移動を開始。

 ズームインせねば分からぬ程の細い坑道にするりと入り込む。


 と同時に、ひっつき虫がひっついた遊覧船も移動を開始。

 出口へ向かって加速するタイミングで、MDFが交差。


 そのまま人型へトランスフォームし、とり憑いた。


『先んじて諸君らを送り出すのは、不幸体質が齎す数々のトラブルに、少しでも早く対処する為だ』


「な、なるほど~」

「にゅう~……」

「(。-`ω-)ムムム」


『私が遊覧船にとり憑きさえすれば、理仁亜と同乗する条件を満たし、不幸体質を封殺する事が出来る。そうなれば本ミッションの戦術的勝利を得る事が出来るだろう……。ここまでで何か質問は?』


 哲人の問いかけに、恐る恐るといった感じで約呼が手を上げる。

 

「遊覧船側への説明はどうすればいいですか?」


 確かに、”なんかいい感じに、臨機応変かつ柔軟に、ファジーっぽく対処せよ”と言われてもいまいちティン♪とこないのは当然である。

 この質問には貴将が答えた。


「それについては、こんなこともあろうかと小生が既にドキュメント・データを作成しています! これを提出すれば説明と電子的整合性のアップデートが一度に行えるはずです!」


 そういって貴将が約呼へフォルダを転送した。

 約呼が早速中身を検める。


 そこには、分かりやすく箇条書きにされた説明の文章と、そのまま実行可能なバッチファイルが格納されていた。

 このファイルは、セキュリティへ免責処理をするものである。

 遊覧船のメインフレームにて実行すれば、同艦のシステムに引っかかる事も無くなり、自由に活動が可能となる。


「ふむふむ、なるほどφ(..)……。うん、確かにこれなら説明とアップデートが一度に行えますね! すごい! ありがとう貴将君!(ニッコリ♡)」


「!? いえいえ、小生が出来る事など所詮はこの程度です! 約呼さん……ご武運を!」


「にゅっふ! えんだ~♪ いやー♪(*'ω'*)」

「(*´Д`*)ウィルオォォォォォォォォォルウェイズラァァァァァァヴュウウウウウウウウ↝ウウウウ♪」


 不器用なおのこの愛と、それに包まれる乙女のやり取りにほっこりする一同。


『ンフフ……! おほん! さて、緊張もほぐれてきた所で、具体的な指令を下す!』

 

 概要を伝えた哲人は、キトゥンちゃんらへ更なる作戦の下知を行う!


『遊覧船に接舷後、人当たりが良く弁の立つ約呼君は今受け取ったデータを元に遊覧船の乗組員にへ事情を説明、赤とんらんを防ぎつつ協力を取り付けてほしい!』

「はいっ!(''◇'')ゞ」


『蔵智君はそのワザマエを活かし、ほぼ間違いなく起こるであろうマシントラブルに対応してくれたまえ!』

「ラジャ~だよ~!(''◇'')ゞ」


『ミラリィよ、うぬはこの二人の護衛だ! 持てる力の全てをもって、この二人を見事エスコートしてみせい!』

「(''◇'')ゞビシッ」


 勢いにまかせて、ついでにパピーらへも作戦の下知を行う!

 

『宙風は後方宙域にて待機、緊急時には何時でも突入出来るよう備える。億代君、舵を任せたぞ!』


「承知ッ!」


『この作戦にはリアルタイムでの情報分析が何より重要だ! 貴将君、その知啓で各人のバックアップを頼む!』


「小生にお任せください!(''◇'')ゞ」


 哲人が振りかざす軍配に呼応し、各人の士気は否応なく高まる!

 さぁ、今こそイクサへ出陣する法螺を吹く時だ!


『準備ヨシ! 人員ヨシ! 作戦ヨシ! ゼロ災で行こうヨシ、ゼロ災で行こうヨシ! では皆の者、出陣じゃあ!』


「「「「「ご安全にッ!」」」」」

「(`・ω・´)キリッ」


『では、イクz……!』

「ちょっとまった~! じゃぞい!」


 折角いい感じに号令が決まった所へ、ジョーンズハゲから突然汚い横ヤリ♂が挿入されよった!

 今まさに己の持ち場に憑かんとしていた各人がたたらを踏んでずっこける。

 

「な、なんです!?><」

「あわわ~!?(´;ω;`)」

「( ゚Д゚)ナンゾ!?」

「ぬうっ!?」

「な、何事ですか!?」

『ぞぉっ!? とっと……な、なんですセンセイ? 何かおかしな事でも見つけたのですか!?』


「うむ、そうじゃ哲人クン……わしゃとんでもないモンを見つけてしまった! 怪盗を追うていたら、うっかり偽札を刷る工房を発見してしまった位にのう!」


「むう……先ほどから妙に大人しいとは思っていたが……一応モニタを見ておったようだな……」

「とはいえ、現時刻を見てください。時間がないんです、兎に角急がなくては……」


 今”熱き冒険者”の面々がおかれている状況はというと……。

 命を燃やして戦う少年らを率いる女神の、その胸に刺さった黄金の矢を何とかする時よりも逼迫している。

 少なくとも、12時間かけて風光明媚なゾディアック巡りをしている場合ではない事は確定的に明らかである。


 とはいうものの……。

 

 わざとらしくやりおってと、頭を抱えたいタイミングではあるが。

 いつになく神妙な面持ちで言うジョーンズハゲには、流石に各人も気になった。


『逸る気持ちは分るが、蟻の一穴という事も在り得る。僅かでも不安要素は取り除いておきたい。……センセイ、貴方は一体何を見たというんです?』


「ホッホゥ! 流石は天の川銀河随一の豪傑! イクサの何たるかを良く心得ておる! そう、これを確認してヨシ! とすることはとても重要な事なんじゃ……。貴将クン、モニタの……そこの一角を見てみたまえ」


「は、はい……! ええと、この辺りですか?」

「いや、もうちょい右の……管理設備の下らへんじゃ」


 ジョーンズハゲのナビゲイシヨンに合わせ、モニタを操作する貴将。


 すると、どうした事であろうか。

 画面いっぱいに広がるスペースデプリの中に、何やら光る物体が見てとれた。


『むっ! 何やら光る物がありますな』

「そう、それじゃあ! もっと! もっとズームしてくれい!(ジッタンバッタン)」

「こ、こんな宇宙の片隅に、一体何があるというのでしょうか!?」


 更にズームしていくと……。


 おお、なんという事であろうか!

 そこには、何者かを象った神像か何か(適当)が映し出されていた!


「おおお……。うおぉーむ! やはり! これはDockerどっかの文明の遺物に違いないぞい! 大発見じゃあ!(ジッタンバッタン)」

「なんとぉー!? 何故このような物がこんなところに漂っているのでしょう?」

「むう……。それ以上に、こんなけし粒じみた物をよく見つけたな……」


 唐突な世紀の大発見(になるかもしれない?)に、驚きを禁じ得ない貴将。

 億代も同様であったが、それ以上に、ジョーンズハゲの、最早執着といってもいい観察力に呆れかえった。


 キトゥンちゃんらもまた、ジョーンズハゲのキモすぎるスカウト能力にドン引きであった。


「うわぁ……(ドン引き)この差し迫った状況で、こんな間違い探しみたいな事してたんですか? うわぁ……(ドン引き)」

「きもーい! くさーい! ハゲ、きもいくさい! きもくさーい!(´;ω;`)」

「( •᷄ὤ•᷅ )ゲロイカノニオイガプンプンスルゼ」


「!? な、なんじゃオヌシら、その引き気味の反応は!? それでも研究員かね!? 世紀の大発見(いやまだ未定だろハゲ)じゃぞ!? そも、探索はワシら”熱き冒険者”の本懐! そしてワシ自身の生業! 普通ここは一同、拍手・喝采・大喝采する所じゃろうがあ~!(ジッタンバッタン)」

 

 作戦を説明する際に集めた観測画像。

 そこへ偶然映り込んだ遺物を目ざとくみつけるジョーンズハゲ


 ……時間がなかったとはいえ、データの精査をなおざりであったのが原因であった。

 ”何か知らんけど動いてるからまぁいいか! ヨシ!”と見切り発車するのは良くないという例であろう。


 結果論とはいえ、自らの指示でこのような事態を招いてしまった己の未熟さに恥じ入る哲人。

 

 だが、この反省は後でも出来る。

 しつこいようだが、今はこんな事をしている場合ではない。

 

『センセイ、確かにそうではありますが、如何なる時でも人命と安全が優先されます。それはライダーであっても変わりません。取り合えず座標を記録しておいて、全て終わってから改めて探索すればよいではないですか』


「全くもってその通りですね」

「左様。宇宙そら坊主よ、潔くアキラメロン!」

「駄目ですよハゲ!」

「そうだよ~、駄目だよ~!(๑`꒳´๑)」

「( •᷄ὤ•᷅ )クセー」

 

 メンバー全員からフルボッコにされ、ライフが0となるハゲ(残当)。

 未練がましく、どったんばったん大騒ぎしよる。


「ぬぉお~! オヌシら、寄ってたかって! カシオペアの時だって我慢したのに! ええい、もう限界じゃあ! ワシ一人でも回収しにイクゾー!(テッテッテテテ♪)」


「いやいや、全く我慢してませんでしたよね!?」

「うむ、ミラリィ殿の脚によって誅されただけだな」

「(`・ω・´)ドヤァ……」


『残念ですが、今は貴方に構っている暇はありません。どのみち、その縛からは逃れますまい。……ヨシ! 皆、改めて配置に……』

 

「ファファファ……果たしてそうじゃろうか? 遺物を目にした今のワシの魂は、天の川銀河全体を覆い尽くす程の冒険心アドベンチャーセンシズとなって燃え盛っておるのじゃぞ!? 斯様な頼りない戒めなど、古くなってひび割れとる輪ゴムも同然じゃあ! ……フンッ! ぬぅぅ~……(ぷくー)」


 スルーを決め込む哲人へ、食い気味にいきり勃ちよるジョーンズハゲ

 何を血迷ったか、チューブの縛を内側から破ろうと画策しよった。


 蛍光色にギラギラ光るチューブが、ぷくーっと膨れ上がりよる!


 この事態にたまらず、宙風のメインフレームで演算していたムリフェルがたまらず飛び出してきた。


「「フッ、ハゲよ。無駄な足掻きはよしなさい。その縛はお前の小賢しい冒険心アドベンチャーセンシズ如きでどうにかなるものではありません。単純な力では、そこなおわす哲人ですら、数人がかりでも破れぬほどに強靭。潔く諦めなさい。そして氏ね」」


「ぬっ!? ムリフェルちゃんか! ファファファ、オヌシは忘れておるぞ、ほんの数寸前、このワシに注ぎ込んだエネルギーの事をな!」


「「笑止! マルチコンクフード・リキッドに強壮効果などありません。……ですが、それ程までに恋しいのなら……今一度裁きを与えましょう。ノウマク サンマンダ バサラダン……センダンマカロシャダヤ ソハタヤ ウンタラタ カンマン! ハッ!(カガッ!)」」

 

「!? ぬ、ぬおぉ!」

 

 ムリフェルの真言と共に、ぷくーっと膨れ上がったチューブが締め付けられる!


「「オン キリキリ バザラバジリ ホラ マンダマンダ ウンハッタ……真・痒光縛!(カガッ)」」

 

 大天使が切る手印と同時に、無数の注入針がグサグサグッサーとジョーンズハゲに突き刺さった!

 

「ハヒッ!? ……アギャアァアアッス!?(グサグサグッサー)」

「「ノウマクサンマンダボダナンバク……ジャク! ウン! バン! コク! ……滅!」」


 真言を唱えるムリフェルの手印から眩い七色の神々しい光が、百万石の誇りよと言わんばかりにカガッと迸る!


 瞬間!

 点滴から勢いよくマルチコンクフード・リキッドが、ジョーンズハゲの体に注入され始めた!


「「最早遊びは無しです……チューブよ、最初から痒み分全開で注入せよ! この愚か者に天誅を下すのです! 氏ねハゲ!」」


 ズギュンズギュン、ズギュンズギュン!

 およそ点滴とは思えぬ、凄まじい勢いで注ぎ込まれる蛍光色の液体。


 だが前回と違い、その妖しく輝く液体は生命の水アムリタではない。

 不届き者のハゲを痒みの無間地獄へと堕とす、裁きの聖水であった!


「ほっぎゃああああっす! か、痒いぃ! 痒いのが全身にゅんでくるう! ……ぬくく、じゃが! ……ガハハ……!」

「「フッ、とうとう痒みで頭がおかしくなりましたか? いえ、おかしいのは最初からでしたね、これは失敬。氏ね」」


 苛烈な制裁を受けながらも不敵に笑いよるジョーンズハゲ

 その様は大変不気味で、ジョーンズハゲのくせに生意気であった。


「!? いや、ワシおかしくない! 至って普通! 寧ろ優秀! 学会でも一目も二目もおかれてるもん!」

 

「いやいや、おかしいのはおかしくないですね」

「然り。うぬがおかしいのは確定的に明らかだな」


「!?!? ファー! おぬしらまで! ぬ、ぬぐぐ! ……兎に角! ……ファファファ……ワシは待っておったんじゃあ……ムリフェルちゃんが点滴をぶっこむ、その時をのう! フン!(ぷくー)」


 『……!? な、なんだ!? センセイの身体から、途轍もない妖気を感じる!?』


 ただの強がりにしては妙に確信めいた表情のハゲ。

 痒みにのたうち回るのみであったその身体から、今までにないほどの邪気が迸る。

 

 そして、おのこらのツッコミなど物ともせず、再びぷくーっと膨れ上がりよった!


「ぬぅむう~~~~……(ミチミチ)ぬうりゃああ~~~~!(パァンw)」


 おお、なんという事だろう!

 あろうことか、このハゲはとうとう自らの力で戒めから解き放たれてしまった!


『ムッ!?』

「ぬぅおぉお~!?」

「うわ! きちゃな!」

「「きゃああ~~~~!><」」

「(;゚Д゚)ハゼタ!?」

「「な、何い!? バ、バカな!? 真・痒光縛をも打ち破るとは!?」」


「ガハハ……ガーッハッハッハッ! 残念じゃったのうムリフェルちゃん! オヌシが何をしようが、所詮は幻! この汁も、ワシにとっては唯の栄養剤よ! 痒みごと飲み下し、己がパワーとするまでじゃあ!」


「「なんと……お前はわたくしが配合した痒みナノマシンごとマルチコンクフード・リキッドと細胞を一体化させ、耐性を得る為、自力で変態が変態しよったというのですか……!?」」


「ホッホゥ! exacty(その通りじゃ)! ナイス説明! あと変態じゃない!」


「あ、あぁ……そんな……(ガクッ)」

「ぬく……おのれぇ……」

「だ、駄目ですぅー!><」

「にゅう~、ボク達じゃ敵わないよぅ~(´;ω;`)」

「( っ ‘ᾥ’ c)クワッ(ブワワッ)」


 目の前に現れた邪悪の化身を前に恐れおののく若者たち。

 ジョーンズハゲを完全に敵と認定したミラリィの髪の毛が、かつてないほどに”ブワワッ!”と広がる。

 

「ファファファ……オヌシらこそようやっと悟ったようじゃの……このワシの、滾る冒険心アドベンチャーセンシズを止められるものなど、この世には居やせんという事をな……。さて、邪魔な戒めも消え去った所で、遠慮なく調査へ向かうとしようかの! ガハハ!」


 ああ、偉大なる宇宙の神よ、我らに救いを!

 この忌むべき宇宙の蚕食者を止める事は不可能なのか!?


 いや、ただ一人……。

 この場を治める事が出来る漢が居る!


『おっとセンセイ……そうはいきませんぞ? 何があっても、貴方を解き放つ訳にはいきませんな!(ザッ)』


 遂に、ジョーンズハゲを頃してでも食い止める覚悟を完了した哲人。

 ブリッヂの出入り口前に立ちはだかるその姿には、一切の迷いも隙も無い。


「ぬっ? 哲人クン、この期に及んで、君はまだワシを止められるつもりかね? 君の速さは既に見切った……ワシに敵うものでないことはQ.E.D、既に証明されておるぞい?」

 

 何故か余裕綽々のジョーンズハゲ。(うざい)

 確かに、哲人の水月突は一度躱されている。


 だが……。


『なれば、私はそれを更に凌駕してみせましょう……!(ズォォ……!)』


 そう答えた哲人の身体から、荒々しいまでの闘気が、しかし、静かにあふれ出た。

 

 規模こそ闘仙グランマダムの様な、町一つ覆い尽くす程広大ではないが……。

 引き換えに、幾重にも鋼が織り込まれた刀剣の如き鋭さを持っていた。

 

 その濃密さたるや、ブラックホールが持つ事象の地平線もかくやという程。

 哲人の周囲のみ、景色が歪んで見えた。

 

 そう、前回は全く本気を出してはおらぬ。

 いよいよ、銀河に名だたる豪傑の本領が発揮されようとしていた。


 固唾をのんで見守るキトゥンちゃん達。


「ガハハ、抜かしよる……! 健気を通り越して哀れよの、哲人クン! その身から漏れいずる闘気は中々のもんじゃが……今のワシにとっては虚仮脅しに過ぎぬ! ……見よ! この素早い動きを! 残像すら生み出せるこのスピードに、君は最早憑いてくることなど出来ん! そりゃ!(カサカサ)」


 そうジョーンズハゲが言い放つと同時に。


 ブォオン……!

 シャカシャカシャカシャカ……!


 無数の分身となって、ブリッヂ内を埋め尽くしよる!

 そしてそれぞれ思うがままにカサカサとGの様に這い回り、出口へと殺到する!


 その様は、有体に言って滅茶苦茶キモかった!

 

「うわ!?(ドン引き)」

「ぬうお!?(ドン引き)」

「きゃああ!? き、気持ち悪い!><」

「にゅう~ん!? ハゲがいっぱい、ヤダ~!(´;ω;`)」

「(;゚Д゚)キッショ!?」

『…………』

 

 余りの悍ましさに恐れ慄くキトゥンちゃんらとパピー達。

 哲人もまた、間断なく沈黙をもって佇んだままであった。


 各人の反応により調子づいたジョーンズハゲ

 有頂天どころか天元突破したウザさでもって煽り散らかしよる!


「ファファファ……。ゾッとした様じゃの哲人クン! 御覧の通り、我がスピードはあらゆるものを仏契ぶっちぎりで超越し! 分身まで生み出すに至った! しかも個別に動かすことも出来るのじゃあ! ガハハ、怖かろう! そりゃそりゃどうした、一人でも抜かれれば、ワシを逃がしてしまうぞ? ん~?(シャカシャカシャカシャカ)」


「ぬ、ぬうう! 宇宙そら坊主め、一体どこまで変態メタモルフォーゼすれば気が済むのだ!?」

「ああっ!? このままでは出口を抜かれてしまいます! そんな構えで大丈夫なんですか星永さん!」


 〇樫と虎〇みたいな実況と解説をする貴将と億代。


 だが哲人もまた、些かの動揺すらなく。

 どっしりと泰然自若に構えながら答える。


『フッ、大丈夫だ、問題ない。私が練磨し続けたワザマエを、今こそ諸君らに開陳してみせよう!』


「ファファファ……。そんなもの、恥の上塗りにしかならぬわぁ~! ではワシャそろそろ逝かせてもらうぞい! 狡猾老獪・百花遁乱身!(ウゾゾゾゾ!)」


 何という事か!

 このハゲはとうとう、己が歩法まで編み出してしまいよった!


 数えるのも馬鹿らしい程に繁殖したジョーンズハゲ

 それらが岸壁を疾駆するフナムシの群れが如く、一斉に哲人が守る出口へと殺到した!

(きっめぇえー! うわやだ、鳥肌立つ! きっしょ!)


 南無三!

 

 このままでは、ジョーンズハゲを穢れなき宇宙へと解き放ってしまう!

 哲人もまた、無数のジョーンズフナムシをに飲み込まれ、ズタズタに引き裂かれるだろう!


 各人はそんなネガティブプロンプト満載な光景を想像し、思わず目を覆った!

 

 ……だが、そうはならなかった。


『フッ……(スッ……)』


「ファッ!? な、なんじゃ!? は、はぎょお! うわぢゃ~!?(キャンズ!)」


 哲人が僅かに身をよじると同時に、微かな光が瞬いた。

 と同時に、あれだけ蠢いていたハゲ共が全て薙ぎ払われた!


「はれほろひれほごはぎゃぴれぴろぴぎゃあ~~~~っす!?(ドカボキガンゴンドッシャア!)」

 

 おっさんピンボールと化し、ブリッヂ内をあっちゃこっちゃ跳ね回るジョーンズハゲ

 最後は天井に衝突した後キャプテンシートへと叩きつけられ。


 同時に、無数に湧いて出た分身が元の一匹のハゲに収斂した。


「おおっ!?」

「なんと! あれだけいた宇宙そら坊主が一瞬で!?」

「やりました!(*´Д`)」

「すごーい!(*'ω'*)キャッキャッ」


 沸きあがるキトゥンちゃんとパピーら。


「プギャッ!? いつつ……。な、何じゃ!? 哲人クンの身体が一瞬光ったと思った瞬間ズタズタにされたぁ~!?」


『フッ……。激流を制するのはより激流ですよ、センセイ……おや、随分とお気に召した様子。では今一度御覧じろ!(フォン)』


「ファファファのファッ!? いやもういい、十分じゃ……!? は、はぎょお! うわぢゃ~!?(キャンズ!)」


 哲人が僅かに身をよじると同時に、微かな光が瞬いた。

 と同時に、キャプテンシートで茫然自失としていたジョーンズハゲが再び薙ぎ払われた!


「はれほろひれほごはぎゃぴれぴろぴぎゃあ~~~~っす!?(ドカボキガンゴンドッシャア!)」

 

 おっさんピンボールと化し、ブリッヂ内をあっちゃこっちゃ跳ね回るジョーンズハゲ

 最後は天井に衝突した後キャプテンシートへと叩きつけられた。

(露骨なコピペ)


 宿曜月蝕。

 

 居合切りの様に素早く無数の突きを放ち、攻撃範囲内に居る全ての敵を薙ぎ払う範囲狩り技である。

 しかも敵味方識別機能付きである。


 その射程距離は広大で、狭い宙風のブリッヂ程度なら丸々収まるのだ。

 しかも出入り口からブリッヂ中央のキャプテンシートまでの距離はまさにクリティカル範囲であった。

 

 更には、この技を放つ哲人の膂力は、なんと常人の100倍にも及ぶ。

 その類稀な力でもって放たれた突きの速さは音など置き去りにしても尚早く、遂には光速へと至る!

 

 キラリ(きらりのことじゃないよ☆)と光って見えたのはそのせいである。


「あがが……。いや、そこは清流ではないのかね!?」


『清流は導入に過ぎません。凪いだ水面を揺らす半端なさざなみ等、その先に渦巻く激流へ飲み込まれ消え去るのみ、ですよ』


 力は振りかざしたやっこに必ず返っていく。

 これは一見脳筋に見える剛腕空手家が言った言葉だ。


 力自慢のものをして神妙な面持ちで語らせる程、正鵠を突いた、宇宙の真理である。


「ぬぐぐ! 見事なワザマエ! じゃが! 闘仙グランマダムに比ぶれば軽いわい! 便フン! うおぁ~~~~!(メキメキ)」


「ああ!?」

宇宙そら坊主の傷がみるみる塞がってゆくだと!?」


「ファファファ……! まだまだ青いの哲人クン! やはり令ちゃんの様にはいかんようじゃのう……。冷徹さが足りんぞ? それにワシの身体にはムリフェルちゃんにぶっこまれたエネルギーが燃え滾っておる! よってこの程度の傷など、一瞬で消え去るのじゃ! 君の優しい技では、我が肉体に致命の一撃を突き入れる事など出来ん!」


 何という事だろう!?

 このハゲは歩法のみならず、自己再生能力まで獲得してしまった!


 我らが苦労人は、このままゾンビアタックでゴリ押しされてしまうのか!?


 そんな各人の懸念など一蹴するかのように。

 哲人もまた、余裕の馬力を感じさせる態度を崩す事はない。


『フフ……それはそうでしょう何故なら……(スッ)』


 そういって哲人は人差し指を立てる。


『先ほどの技はこの指突でもって放ったもの。軽いのは当然ですな』

 

 これには、ジョーンズハゲが狼狽する番であった。


「うぬぬほ……! つまり君はまだ本気を隠し持っているという事かね!?」


『exactry(その通りですよ)!』


 そういって哲人は袖口に仕込んだ愛用の杖を取り出して構える。


『次こそはこの特殊形状記憶鋼製の杖による全力の突きでもって、貴方を岡山の名物むらすずめよりも穴だらけにしてみせましょう……!』


「ぬうぅ~! そうはいかんぞ! ならばワシは、君が今申した様に! 我が翼ともいうべきこの脚でもって! 君の速さを更に上回ってみせるのみじゃあ! ……ワシの生命力ユニバースよ奇跡を起こせ! 今こそ究極の冒険心アドベンチャーセンシズに目覚めるのじゃあ!(ズモモモ……!)」


 いよいよ進退窮まったジョーンズハゲ

 その悍ましき身体から途轍もない邪気が迸るや、一瞬にしてブリッジ内を覆い尽くした!

 このままでは変態がより変態に変態してしまうだろう!


 だが、我らが苦労人は、不敵な笑みを浮かべるのみであった。


『フッ、それは不可能です。何故なら……。妖怪既に飛ばないで~! 貴方の翼は捻って問い詰められているのですから……』


「な、何じゃと!? ほぎゃ!? う、うおぁ~~~~!(ガクガク)」


 哲人がそう言い放った刹那。

 

 ジョーンズハゲが突然白目を向いて痙攣。

 ひどい喘ぎ声をあげ、ズシームとキャプテンシートに倒れ伏した。


 ブリッヂを覆い尽くさん勢いであふれ出た妖気も雲散霧消し、シオシオと萎え去っていく。


「ぬうっ!? 面妖な!」

「な、突然倒れなすった!?」

「な、何でですか~!?><」

「きもーい! ハゲきもーい!(´;ω;`)」


 閻凰裁煌えんおうさいこう

 特定の波長をもったエネルギーを突き挿れる事で、生体ナノマシンの働きを阻害するデバフ技である。


 更にこの技は対象の体内を駆け巡り、神経の伝達をも狂わせてしまうのだ!

 ジョーンズハゲが突然倒れ伏したのはこの為である。


 いまのジョーンズハゲの脚に先ほどまで発揮されていた驚異的な膂力等、最早ない。

 鷲掴みにされ、逆さまにひっくり返された状態から逃れようと力なく足をケンケンするウズラのチック程度まで弱体化しているのだ。


 自らを鷲掴むヒットの手から逃れるのはおろか、キャプテンシートから這い上がる事すら出来ぬであろう。


『フフフ……何も技をラーニングしているのはミラリィだけではないという事ですよ』


 ワザマエ!

 

 ミラリィが穿宙天彗蹴をラーニングしよったように。

 哲人もまた、彼女のパラライズ・スタブを会得していたのだ!


 本来なら戦乙女らの技を人間が使う事は不可能であるが……。

 己を主と慕う健気なる乙女と、心と拳を通わせた宇宙の益荒男なればこそ。

 一途なる戦姫の愛と祈りを賜れたといえよう。

(要するにミラリィとの相性ばつ牛ンという事である)


「すごい!」

「フッ、往生際だな、宇宙そら坊主よ」

「もう逃げられませんよ!」

「アキラメロンだよ~!(*'ω'*)」


 今一度沸きあがるキトゥンちゃんとパピーら。

 だが!


「ぬぐぐ……見事じゃ哲人クン……じゃが! 果て無き冒険スピリッツに諦めの二文字は存在せん!」


 この期に及んで、尚も食い下がるジョーンズハゲ

 生まれたてのバンビみたくフラフラした足取りで再び勃ち起がりよる。


『まだ氏にきれませんか……見苦しいですぞセンセイ、大人しく縛について頂きたい』


「何とでも言うがよい! 名誉など冒険に比べたら塵芥も同然よ! それに、例え翼を捻って問い詰めようとも……このワシは宇宙考古学の異端児……! 生粋の探究者……! 引きません! 媚びへつらいません! 反省しません!」


 そう言い放つや、再び妖気を巻き散らかすと……。

 何を思ったのか、その身を地べたに投げ出すや、両の手でもって這い回りよった!

(あぎゃあ!? きっしょい! うわ、まじきっしょい!)


「なぁっ!? うわわ!(ドン引き)」

「ぬうおお!? なんと奇怪な!?(ドン引き)」

「きゃああ~~~~!? きっしょいですぅ!><」

「にゅにゅ~ん!? ヤダ~! こわーい!(´;ω;`)」


 シャカシャカシャカシャカ……!

 テケテケテケケテ……!


 何という事だろうか!?

 このハゲはあろうことか、まだ阻害が及んでいない腕の力のみをもって、ブリッヂを這いずり始めた!


 その奇怪面妖な有様は、旧世紀に言い伝えられている都市伝説……。

 上半身のみの姿をしていて、高速で這い回る悪霊、”テケテケ”。


 今のジョーンズハゲはまさしく、古の摩天楼を恐怖のどん底に陥れた怪異そのものであった!


「探究者に調査打ち切りは無いことじゃあ~! イザユケボウケンシャー! うあのようにぃ~~~~!(ズォア!)」

 

 凄まじき速度で這いずりゾンビしていたジョーンズハゲが、その勢いを元に、腕だけで跳躍しよった!


 キモい!


『……! あのようだ!』


 そんな怖気が走る程の諦めの悪さと探査への執念を、まざまざと見せつけられて尚。

 相対する我らが苦労人の面に、些かの歪みすら感じさせぬ。


 Yeah-Break-Care-Breakに思い切り捨て身の特攻をかましてきよったジョーンズテケテケを迎え撃つ!


『あぁあ沢山沢山沢山沢山経過する~~~~!(ズォォォオ!)』

「あがでごちやゅゃぁでぶやーぴゃーす☆(バァンw)」


 凰嘴万葬。

 先ほど放った宿曜月蝕を一転に収束し、より威力を高めた単体火力技である。


 万を超える凄まじき威力の突きが、寸分違わずジョーンズテケテケの急所に突き刺さる!

 

『研究者、援助断つべし! これにて調査終了ですぞ!』


「ぷぎゃあ~~~~っす!」


「おお!?」

「やったか!?」

「は! 億代くん、駄目ですぅー!><」

「おっく、それフラグだよぅ!(´;ω;`)」


 銀河に名だたる豪傑が放った乾坤一擲の突きを喰らい、再び天井へ吹き飛ばされるジョーンズテケテケ

 

 しかし、その表情には恐れや後悔の色はなく。

 むしろ、してやったりという感じの不敵な笑みすら浮かべていよる。


「がぁああ~! す、凄まじき威力じゃあ! ワンパンで16777216ものダメージを受けてしもうた! ……じゃが! ファファファ! この勝負、ワシの勝ちじゃあ!(ニチャア)」


『ぬぅっ!? 貴方の体力は一体幾つあるというのですか?』


「96じゃ!」


「オーバーキルじゃないですか!」

「このハゲはなぜおめおめ生きているのだ!?」


「ガハハ! ワシの冒険スピリッツには、探究心が尽きぬ限り、何度でも体力1で踏みとどまる食いしばり効果があるからじゃあ! そして哲人クン、まだ宙風に乗り慣れぬ君にはどのエリアも同じに見えるのかね!?」


『ムッ!? 一体どういうことですか!? ……まさか!?』


「ファファファ……! 実直な君のことじゃ、こうしてYeah-Break-Care-Breakに思い切り突っ込んでいけば真正面から迎え撃ちよると思っておった! 事実こうしてワシをここまで吹き飛ばしてくれたのだからのう!」


『ぬぬ! 貴方はわざと私の技を受けたというのですか!?』


 そう言うが早いが、ジョーンズテケテケの身がブリッヂの天井に叩きつけられる。

 その背後には、なんと通風孔があるではないか!?


 学術探査船・宙風は、十数年に渡ってジョーンズテケテケに私物化されてきた。

 彼女宙風の身体の隅々まで知り尽くしたこの妖怪にとって、他者の目を欺く抜け道を思いつく事など造作もない事であった。


「左様、これがワシの”逃走経路”じゃ……! 君のおかげで此処まで来ることが出来たぞ! ガハハ……!」


「あああ……そ、そんな……(ガクッ)」

「うぬう~! まて宇宙そら坊主!」

「だ、駄目ですぅー!><」

「にゅわ~ん! ハゲが逃げちゃうよぅ~(´;ω;`)」


 先ほどまで沸きあがっていた歓喜から一転、絶望の淵に立たされるキトゥンちゃんとパピーら。

 さしもの銀河に名だたる豪傑とて、これには動揺を隠せぬ。


 『ぬうっ!? しまった!』

 「ファファファ……もう遅いわ! このままハンガーまで逃れて、盗んだひっつき虫で走り出してやるわい! あ~ばよ哲っつぁん! そりゃ!(テケテケ)」

 

 とうとう各人の静止を振り切り、あろうことか引っ付き虫を強奪すべく、ブリッヂを飛び出しよった。

 これより到来する最悪の未来を想像し、青ざめるキトゥンちゃんとパピーら。


 だが、我らが苦労人は、更に余裕の馬力を感じさせる笑みを浮かべた。


『おのれセンセイ~! ……とでも言うと思っていましたか? フフ、残念でしたね』


「ガハハ! 負け惜しみが心地良いのう! 君はそこで見て居るがよい! さて、イザユケボウケンシャー! イクゾー!(テッテッテテテ♪)……ん? あぎゃあ!?(ビクッ♡)」

「( っ ‘ᾥ’ c)……!」


 おお、ワザマエ!

 すっかり勝ち誇ってダクトから逃れようとハッチを開けたジョーンズテケテケの眼前に立ちはだかる者がいた!


 それはミラリィであった!


 ”ここは満員だ……。逃れる事は……出来ねーぜ……!”と言わんばかりの表情である。

 

「おお!」

「ほう、やりよるわ!」

「わあ、何時の間に!?」

「にゅ~! そういえばさっきから居なかったね~(*'ω'*)」

 

「アイエエエエ! ミラリィ=サン!? なんでここにミラリィちゃんが!?」

「ウッセ!(o`・д・)≡〇)`Д゚)グハッ」


 ”苦労したんだ……このまま頭を打ち抜かせてもらうぜ……!”という位の勢いで、ジョーンズテケテケの顔面に鋭い突きを放つミラリィ。

 

「ぶげっ!? あぎゃあ~~~~っす! ……げぴ!(ドッシャア!)」


 天井にぶら下がった状態から思い切りぶん殴られたジョーンズテケテケ

 受け身も取らず、頭から”ドッシャア!”と地べたに叩きつけられた。(ざまぁw)


『今この状況にあって貴方とわちゃわちゃするほど、私は呑気してませんよ。必ずやそこを狙うと踏んでいました』

 

 進路クリアと思われていた抜け道だったが……。

 こんなこともあろうかと、哲人はすでにミラリィを密かに伏せていたのであった。

 

「ぬぐぐ……! 流石は天の川銀河に名だたる豪傑よ……! 全てはキミの掌上であったという事かね……うほっ!?♡(プスッ♡)」


 突然の形勢逆転に悔しがるジョーンズテケテケの上にミラリィが飛び降りた。

 その際、彼女のヒールがジョーンズテケテケのケツ♂にプスッ♡と突き刺さる。


 そしてそのままグリグリと踏みにじり始めよった。

 その表情は嗜虐の愉悦からか、ニチャア……とした笑みすら浮かべていた。


「ア゛ッーーーーーー♂! そこ駄目ぇ~ん!」


『ヨシ! でかしたぞミラリィ。【よくやった!】』

「( ๑°ω°๑)و グッ!」


 お見事!

 主従の連携プレーで、この忌むべき邪悪も、とうとう年貢の納め時である。


「やりましたね!」

「見事だミラリィ殿」

「もう逃げられませんよ!」

「とどめをさしちゃえ~(*'ω'*)」


 大捕り物にますます沸きあがるキトゥンちゃんとパピーら。

 だが……。


 美しき戦乙女によって調伏され、足下にて踏みにじられるにすぎない邪鬼である筈のジョーンズハゲからは、今だ闘志が失われてはおらぬ。


「ウホッ♡ いや、甘いのはオヌシらの方じゃあ……おっふう!? 通風孔は何も天井だけではないぞい! そりゃあ!(スポッ♡)」

「Σ(๑ °꒳° ๑)ビクッ」


 尚も見苦しく足掻くジョーンズテケテケ

 気持ち悪い動きで身をよじってミラリィのヒールから逃れた。

 

「ファファファ……こういった場所には、火災に備えて低い位置にも排気孔があるのだよ!(ズルズル)」

 

 うは! きっしょ!

 

 このジョーンズハゲ、とうとう腕すら使わず、蛇の様に身体をうねらせて床を這いずり始めよった!


 きっもい!


「今度こそ勝ったッ! おっさんスペースライダー完! ガハハ!(ズルズル)」


「うっわ!?(ドン引き)」

「ぬう、この妖怪変化めがぁ……!」

「心底気持ち悪いですぅ~!><」

「にゅにゅ~ん! もうヤダよぅ~(´;ω;`)」


 途轍もない悍ましさに恐れおののくキトゥンちゃんとパピーら。

 哲人もまた、そのしぶとさと執念に呆れかえる。


『まだ氏にきれませんか……やれやれ。……ミラリィ(クイッ)』

「(*`・ω・´*)オカノシタ」


 哲人の命を受け、ハゲを逃すまいと素早く手を伸ばし、頭を鷲掴みにするミラリィ。

 

「っ!(ガッ!) …………!(ギリギリ)」

「ほへっ!? な、何じゃ!? ……あ、あぎゃあぁぁぁぁっす!(メキメキ)」

 

 その細腕からは到底信じられぬ程の力でもって、ハゲの頭を万力が如く締め付ける!

 それはもう、横で見ているだけで、ハゲの頭がスイカみたく爆ぜるのは確定的に明らかだと分かる程のパワーであった。


 そして強大な闘気が、その美しくしなやかな身体から漏れ出る!

 それは、”逃がさん……お前だけは……!”という明確な意思を余人へ知らしめるに、十分すぎる程であった!


 これには流石のジョーンズハゲも、思わず呻き散らし、身をよじる!

 

「ハ、ハヒッ!? 頭割れっ……。ちょ、ミラリィちゃん、やめ……」

 

 鬼気迫るミラリィのパワーと剣幕に命乞いするジョーンズハゲ


 だがミラリィはそんな見苦しい断末魔を聞いて尚、その手を止める事はなかった。

 いやむしろ、”ゆ゛る゛さ゛ん゛!”と言わんばかりに、より一層力を注ぎ込む!

 

「っ…………!(グギギギ……)」

「!? ぱっ、ぴぷっ、ぺぇ!(ベキベキ)」

 

 酷い喘ぎ声をあげるハゲなど構わずに。

 そのまま、およそ人が回してはいけない角度まで首を回転させ……。

 

 更にはとどめとばかりに、空いている方の手でもってハゲの肩をホールド!

 そのまま強引に後ろへと捩じる!

 

「…………っ!( っ ‘ᾥ’ c)クワッ (グリッ♡)」

 

 ミラリィはクワッと目を見開くや、気合一閃!


「ぽぉ~!(グリンッ♡)」

 

 ハゲの首は勢いよく「グリッ♡」と180度回転した!

 

 気の抜ける喘ぎ声をあげるジョーンズハゲ

 フクロウみたく首が後ろになってキモい。

 

 キモい!

 実にキモい!


 ああ、だがしかし!

 首がこんな事になってしまった人間は、普通なら絶命してしまうのだが……。


「お、おおお!? 何じゃ、ワシ一体どうなて……。うほっ! なんか後ろがみえるぞい!」


 何とした事か!

 このハゲは氏ぬどころか、おめおめと生きながらえているではないか!


 キモい!

 心底キモい!

 

「あぎゃ! 何と、首が後ろに回ってしもうた! じゃが、まだ体は動く! ならば前進あるのみじゃあ! ……アレ? この場合は後退かの? 兎に角進めばよかろ! まぁいいか、ヨシ! ガハハ!(シャカシャカ)」


 しかも、体の方は、”邪魔な首などフヨウラ!”と、切り離しさえしそうな勢いでもって、より力強く動きよる!

 それはまるで、”とまるんじゃねぇぞ……”と言わんばかりである。

 

 脊髄反射でもって動くハゲにとっては、脳など捨てても構わぬとでもいうのであろうか!?

 

 キモい!

 震える程キモい!

 ぞんぞん寒気がする!

 

 果たして、一体何をもって「ヨシ!」と言ったのか!?

 

「いやしかし、突然掴みよってからに、吃驚するじゃろ! あっ、分かったぞい! 君も一緒に行きたいのかね! そうじゃろそうじゃろ! 勿論バッチ来いじゃあ! さぁ! めくるめく調査へイクゾー! ミラリィちゃ……んひぃっ!?(ビクッ♡)」

 

 だが、そんなハゲも、振り向かされた眼前にあるミラリィの顔を見た瞬間。

 これまでの人生で体験した事のない恐怖に硬直!

 

 ピンボールが如くあっちゃこっちゃ暴走していた、小賢しい冒険心アドベンチャー・センシズごと沈黙した。


「( •᷄ὤ•᷅ )……………………」


 凄まじい目つきで怒るぬこミームの様にジョーンズハゲを睨みつけるミラリィ。

 

 人懐っこい笑みを絶やさぬその表情は一転、全くの無表情。

 いや寧ろ、虚無、といってよい。


 美しきエメラルドグリーンの瞳に光は失われ、ただただ、闇が広がるのみ。

 それはもう、大宇宙のダークマターもかくやという程の、深淵にある暗黒であった。


 これには流石のハゲも思わず「ヒェッ……!」と喉から声を漏らす。

 

 と、その時、徐に口を開くミラリィ。






 




 

「……っすぞハゲ……」






 



 

 

 この一言が、彼女が生まれて初めて喋った言葉となった。


「ヤッター!」

「カワイイ!」

「アリガト」


 とかではない。


「……っすぞハゲ……」


 である。


 誰からも愛されるお調子者の口から、このような殺意満点、破壊力ばつ牛ンの言葉を引き出すあたりからも、ハゲの宿業が窺えるだろう。

 

「アッ、ハイ。サーセンッシタ……」


 闘仙グランマダムが放つ闘気とは別種の威圧感に飲み込まれ、シオシオしよるハゲ。


『やれやれ……ここまでして、ようやっと止められましたか……』

「( *`ω´*) ≡3フンス!」

「うわぁ……でもまだ蠢いてますよ……うわぁ……」

「うぬぅう……とんでもないやっこだな……」

「流石にもう悪さは出来ませんね!」

「にゅう~ん! ごめんなさいするまで治してあげないんだからぁ~!o(`ω´*)o(プンスコ)」


「はぎゃあ~!? 前なんか後ろなんかサッパリ分からん~! どっち行けばいいの!? はひぃ~(ウロウロ)」


 メンバー全員に見放され、そのまま捨て置かれたジョーンズハゲ

 ペタッ、ペタッ……と音を立てながら船内を徘徊しよる様は、屍肉を求めて彷徨うゾンビの様で、極めてキモかった。


「「フフフ……様をみなさいハゲ……。ちゃんと前を見据えて歩かねば転んでしまいますよ? ああ、後ろでしたね、これは失敬。氏ね。フフフ……」」

「はぎょお!? ちょ、ムリフェルちゃん、見てないで助けてくだされぇ! それがオヌシの役目じゃろ!?」

「「フフフ、そんなものはありませんよ。……ほら、足下がお留守ですよ?(シャッ)」」

「な、何を……ふぎゃ! あいででぇ!(スッテンコロリンバグシャア!)」

「「フフフフ……ウフフフ……あーはっはっはっ!(ニチャア……)」」

 

 ジョーンズハゲが蠢く有様を妖しく嗤いながら見つめるムリフェル。

 遂にはチューブを操作して足を掬う真似までする始末。

 一体ハゲは過去に、どんな仕打ちを彼女にしたというのであろうか……?

 

 そうやって七転八倒するジョーンズハゲ

 やがて覚束ない足取りでブリッヂを抜け出し。

 通路をフラフラと彷徨いはじめよった。

 

 この光景を目の当たりにしたキトゥンちゃんとパピーらはドン引き状態であった。


「あわわ……ムリフェルさん、そうとう鬱屈してらしたんだなぁ……」

「フン、さもありなん。インガオホーだな……それに念願の脱出が叶ったではないか。彼奴も喜んでおるだろうな!」

「これなら一安心ですね!」

「にゅうん! いい気味~!(*'ω'*)」

「(*´Д`*)ザマァw」

 

 ようやっとしょうもない追加タスクを片付けた哲人。

 ジョーンズハゲの醜態をみて苦笑しつつ、改めて各人へ呼びかける。


『やれやれ、とんだ回り道だったな。……ンン……ンフフッ……! あの調子なら、センセイはムリフェルさんに任せておけばよかろう……。では皆、改めて出陣じゃあ!」


「「「「「応ッ!」」」」」

「(''◇'')ゞビシッ」


「はひぃ~。待ってくだされ~! 治して! ワシを治して頂戴~! あひゃあ~(ウロウロ)」

「「フフフ……(ニチャア……)」」


 何はともあれ、億代が舵をとり、宙風は抜錨!

 いざ、無垢なる乙女を暴食の権化(きらり)の顎から救わんと、星屑の大海原を疾駆する!


 貴将もまた、自らの持ち場であるレーダーシートにつき、キャッツバレーの更なる観測を開始。


 各人の決意に呼応し、悪を打ち抜く破邪の一矢となった宙風。

 寸刻もおかず、やがてあれがあの景勝地の星雲ねと目的地に到達した!


『ヨシ! ここからは我らが先行するぞ! 3人とも、準備はよいか?』

「「はい!」」

「(''◇'')ゞビシッ」


 ハンガーにて、船外服を纏った哲人が最後の点呼をとる。


 気分的に「行くぞ!」と言いながら四人お揃いの後ろ体重ポーズを決めてからそれぞれの機体に搭乗。

 気密ロックされたハンガーがリニア(理仁亜じゃない方)カタパルトに変形する!


「カタパルト【準備完了!】 何時でもいけるぞ賢台よ!」

「進路クリア! 目的地まで反応ナシ! 約呼さん、皆さん、ご武運を!」

「さんきゅーおっく♪(*'ω'*)ニッコリ」

「ありがとう貴将君! 行ってきます!」

「(`・ω・´)キリッ」

『ヨシ! やってくれ億代君! MDF、出る!』


「応ッ! ゆくぞぉー! ぬうりゃああ~~~~!(ポチットナ)」

 

 満を持して、三人のおなごを乗せた引っ付き虫を抱えたMDFが、リニア(理仁亜じゃない方)カタパルトから発進する!

 

 破邪の豪槍を携えた銀色の機体は宇宙の闇を切り裂き。

 暗雲立ち込める宙域へと、力強く疾駆する!


「不幸体質め! 何を企んでるかは知らんが、理仁亜はこの私が必ず護ってみせる!」


 宇宙聖女絶対安全宣言した哲人。

 コックピット内で、理仁亜を必ずや不幸体質から守り抜く決意を新たにするのであった。


 

 ……………………

 

 

 一方、レインボート内ではきらりがそわそわし始めよった。


「まだかな、まだかな♪ 限定の、スイーツまだかな~♪ がつけんぱ☆」

「んもう、きらりちゃん……まだ星雲に入ったばかりだ、よ……?」


 年甲斐もなくはしゃぐきらりを窘める理仁亜。


 だが彼女もまた、自身の脚では生まれて初めて来た宇宙遊覧に内心大興奮していた。

 

「でも、やっぱりスゴイなぁ……さっきまで真っ暗だったのに、ここはすごくキラキラしてる……」

 

 美しく七色に輝くレインボーキャッツバレー。

 それは妖精達の戯れ、あるいは天女の神楽舞か。

 

 そんなこの世のものとは思えぬ眼前の光景を前に体が思わず動いてしまう。


「ン……。フゥ……。ン、アァ……♡」


 全く無意識の内に、手足が、今まで練磨してきた型をなぞる。

 

 空色の瞳は潤み、頬は薄っすらと紅潮し。

 時折切なげに漏らす吐息が、少女とは思えぬ妖艶な雰囲気を醸し出す。


 その姿は、はっきしいってエロ杉内で、ドチャシコであった。

 

 周りにいる人々も、”ぎょっ”として理仁亜にフォーカス。

 男性諸氏は前かがみの姿勢となり、それぞれのパートナーに制裁を喰らっていた。


「……ママー! あのおねえちゃんすごくエッチだねー!(キャッキャッ♪)」

「は!? だ、駄目よ! 見ちゃいけません! あなたには10年早いわ!(メカクシ)」

「……はう!? あ、うぅう……(カァァ)」


 そして最後には様子を見ていたロリッ子にからかわれ、赤面した。


 一方きらりはというと。

 物販ブースをガン見していたので全く気付かず、無関心であった。


 そんな和やか(?)な船内であったが……。


 Gロジスティックラインを航行するキャッツボートを、イオン乱流渦巻くライン外の、積乱雲の様に荒ぶるガス塊に潜む影が、様子を窺っていた。


「ブシュシュ……。獲物発見! 張り込んだ甲斐があったわい! そろそろ潜むのも飽きてきた所。ここらで一仕事じゃあ! イクゾー!(テッテッテテテ♪)」


 このイオン臭そうなやっこは「ブッシュワーカー」。

 人の体を捨て、機械のボディに改造した、所謂メカニカル系のスペースローグである。

 

「最強になることの答えは、俺自身がMDFになることだ……!」


 とドヤ顔で決める所を方々から嘲笑され、むきになって暴れまわりよる。

 

 こやつはそのおバカな宣言通り、MDFに近い起動兵器の様なボディを持つ。

 

 巨大な機体は非常に高性能で、こうしてイオン乱流を物ともせず、飛び込む事すら可能なのである。


 だが、大きくなり過ぎたせいで、通常宙域では宇宙電探に引っかかってしまう。


 そのため、普段は幾つかのパーツに分かれ、ステルス化することでお上の目を欺いている。


 分離している時の本体はその他メカニカル系ローグ同様に人型で、市井に紛れる事も可能。

 戦闘時には合体して機動戦を仕掛ける。

 

 ローグが持つ深刻な中二病センスを、このやっこも罹患している。(合体ロボは浪漫!)

 

 人の手がなかなか及ばぬ難所に潜み、そこを航行する商船や工作船を狙いよる不届きものである。


 反撃できぬものをじわりじわり痛めつけ、人々に恐怖を与えて苦しめるのが大好きという、とんでもないイカレポンチであった。


 ひとしきり苦しめて楽しんだ後は、大破せしめた船から資源やパーツを奪って自身の改造に使いよるのだ。


 このやっこにとって、襲撃は趣味と実益を兼ねている、ということである。


 だが、ただの中二病と侮ることはできない。

 今まで奪った資源で作った、多数の戦闘ドローンを遠隔操作して繰り出すオールレンヂ攻撃はかなりの脅威である。


 天の川銀河全域を勝手に自身のナーバリアとし、肥大化した力に溺れ、好き勝手暴れまわる危険極まりない存在だ。


 それに加え、資源やパーツを全て略奪することで証拠を消し、その痕跡を打ち消すという用心深さももっている。


 そうでなくては、このやっこが、大自然の一億万倍(小並感的数字)厳しいと定評のある宇宙さんを生き延びることなど到底不可能であったろう。

 

 さて、そんな危険極まりないやっこに目をつけられてしまった事などつゆ知らず、遊覧船はGロジスティックラインへと入る。



 ……………………


 

 遊覧船がレインボーキャッツバレーに入ると同時に哲人らも星雲外縁部へ到達。


『ヨシ! ポイントに到達した。これより射出する! 皆準備はよいか!?』

「はい!」

「桶~だよ~!(*'ω'*)」

「(`・ω・´)ヨシ!」


『ウム! ではイクゾー!(テッテッテテテ♪)射出じゃあ!』


 哲人がトリガーを引き絞ると。

 ブースターに灯が入ると同時にハードポイントをリリース!


 射出されたひっつき虫は、勢いよく加速!

 MDFの移動エネルギーをも取り込み、凄まじき威力でもって大いなる宇宙へと放たれた!

 

 先行するミラリィ達は閃光のおなごらとなり。

 こは譲れませんと言わんばかりにがカガッと迸り、虹色の暗闇を貫いていく!


 その様子を頼もしく見送った哲人もまた、侵入可能な宙域へと移動すべく、愛機を星屑の波間へと滑らせる!


 理仁亜の身をただひたすら案じながら……。


『ミラリィ、約呼クン、蔵智クン、頼んだぞ……! そして無事でいてくれよ理仁亜、今私が……ゆく!』


 だが、そんな苦労人の切なる願いも空しく。

 危機は確実に穢れなき女神の喉元へと迫っていた!


 宇宙の災禍へ潜み、虎視眈々と獲物を狙いよる唾棄すべき下郎・ブッシュワーカーもまた、遊覧船へと狙いをさだめよる!


「ブシュシュ……。オレ様のホームグラウンド、キャッツバレー天獄へようこそ♡ さぁ、狩りの時間ハンティングタイムじゃあ!」


 宇宙の邪悪が凝り固まった、穢れた醜き影もまた、遊覧船の跡を追い。


 やがて銀河の闇へと紛れるのであった……。


 to be continued...... なんじゃあ~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る