第10話 苦労人と、宇宙聖女(その8)

 時はほんの少しだけ遡って。


 まことらがエントリーして、クリムゾンな頭のモンスター並にしつこく勃ちあがってきよるボンクラーズを成敗したりと。


 何やかんやワチャワチャしていた横で、ただひたすらに演武を続けていた理仁亜であったが、ようやっと意識を遥かなる高みから現実へと回帰させ、舞の余韻に浸っていた。


 その学校指定のジャージを身にまとい、肩で息をして、流れる汗でしとどに濡れた額を腕で拭う姿ですら、まるで現世に下天した天女であるかのよう。

 

 今の理仁亜を視認する者が居たらば。

 

 皆、神に仕える敬虔な信者が如く、一様に地に膝をつき、懸命に祈りを捧げるといった、どっかの大聖堂で礼拝かなんか(あやふや)してるみたいな感じになっていたであろう。


 とある失恋した大天翅が思わず「それ程までにぃ~!(´;ω;`)」と叫んでしまう神々しさである。

 

 幸い(?)にも、周囲が余りに酷い有様であったので、今この瞬間、彼女にフォーカスする者は居らぬ。

 

 それ故に「この場」には新たなる騒動が巻き起こる事はなかった。

 

 だが、理仁亜の不幸体質デバフは、慈愛の女神から溢れ出す穢れなき祈りの威光と希望の輝きに彼女が包まれる事など決して認めぬ。


「無垢な乙女の祈りなど、諦観と絶望の色(R255 G255 B255)へマックロドロドロに染め上げてやるわい! あとついでに、二度と黄泉返らぬようにその腸を喰らいつくしてやるわ! ファファファ……。氏ねいッ!」


 と言わんばかりに、むきになって新たなる刺客を理仁亜に送り付けたのだ!



「はふぅ……」

 

 過去最高ともいえる演武の出来栄えに大満足した理仁亜。

 やりきった心地よき感を全身に感じ、流れる汗を拭い、一息ついていた。


 理仁亜は、旅路で見知った伝聞から過去の人々らの営みを感じ取っていた。

 

 未知なる星の海原を切り拓く情熱に心弾ませ。

 力なき者から全てを奪い去らんとする邪な輩が振りまく災禍へ、天を衝く程の怒りに身を震わせ。

 育んできた大地を荒らされ、大切な者を失った人々の嘆きに涙し。

 それでも尚諦めず、更なる命と希望を生み出し笑う人々らと共に生きる喜びを噛み締める。

 

 一世紀以上も前に、真摯な情熱をもって宇宙そらを駆け、不毛の銀河を切り拓いていった先達らの想いに、思わず体が勝手に舞ってしまった。

 

 まるで、神さんか何かが取り憑いたかの様であった。

 それぐらいに、過去に生きた人々の足跡を辿る旅路は心躍るものだった。


 ……やっぱり、来てよかった。

 そう思う理仁亜であった。


 ゆえに、そんな理仁亜に、自らに迫る不幸体質デバフからの刺客に気づけと言うのは無理からぬ事であったと言えよう。

 

 こうして、前途ある若者が、青春の最後のペェジを爽やかな思い出で締めくくって居るのを「ヨシ!」とせずに。


「ンフフ……。理~仁~亜ちゃん♡ にゅるりんぱ☆(ニュルン♪」

「うひゃあ……!? き、きらりちゃん?(ビクッ♡」

 

 すれた大人が未来ある青年に邪なる横ヤリ♂を突き入れるがごとく、何処からともなくきらりが「ニュルンッ♪」と現れよったではないか。

 唐突なきらりの登場に思わず「ビクッ♡」とする理仁亜。

 

 さて、ここで何故突然きらりが現れたかと言うと。


 この、どったんばったん大騒ぎする中庭の喧噪から理仁亜が完全に離れ、誰の意識にもかからない……。

 刹那にも満たぬであろう間隙を鋭く見切り、きらりんぱ☆と逃さず行動にでたからである。


 

 

 ……昼食後。

 引率教師らが、宿の二階にある、中庭に面した一室にて午後のミーティングを行っている最中。

 

 まことの話を聞くふりをしつつ、ぼんやり窓の外を眺めていたきらり。

 中庭では、生徒らが食後のひと時を思い思いに過ごしている。


 きらりはそんな生徒らの様子を目を細めて微笑ましく見……ているのではなく。

 退屈なこの場から抜け出す好機を、虎視眈々と狙っていよったのだ。


 その、食欲でドロドロ真っ黒ドロりんぱ☆と濁った眼が映すものは、学生らの微笑ましい戯れなどでは断じてない。

 このこくげいのドッキングベイから出航するであろう、とある遊覧船に乗船する機会。


 ただその一点のみ、である!

 

 そんな都合よく起こるものかと言われそうなチャンスを今や遅しと待ち構え、目を皿の様にして中庭をガン見し始めてから、暫くの後。

 理仁亜が、談笑する生徒らから少し離れた一角へと徐に出ていく所を目にした。

 

 ( ,,`・ω・´)ンンン?

 理仁亜ちゃん?

 何をおっぱじめよるのかにゃ?

 

 ウホッ!

 これは何やら面白そうなイベントが起こりよる予感!

 

 ウヒャヒャ……!

 計画……通り!(ニチャア……)


 チャンス到来だよ!

 まことちゃんの鼻を明かしてやるんだから!


 次回、「成るか、きらりの逆転カウンター!」でまた会おうってね!

 ヒュー!www


 きらりんぱ☆

 

 と、興奮を隠しきれずに、思わずその身を乗り出した時。


「ちょ、きらり! あんた何処見てんのよ! ちゃんと人の話聞いてたの!」


 と、目を三角にして怒り狂うまことに「ギュウウw」と耳を引っ張られ、強制的に意識を会議にフォーカスさせられた。


「アギャアア! イタイイタイ!>< ひぃーん、ごめんなさぁい! ちゃんと聞いてますよぅ!(´;ω;`)ウゥゥ」

 

 その時は、まことの恐ろしさのあまりに中庭への関心が雲散霧消し、痛む耳をさすりながら、苦笑する他教師らと向き合うきらりであったが……。


 それから、ほんの数分後。


 件の中庭から、歴戦の古強者であるまこと達はおろか、一般人である他教師らにですら認識できる程の強大な闘気が「ズオォッ!」と発せられた!

 

「ファッ!? 何です!?(ビクッ」

「こ、この肌の粟立ちは一体……!?(ブルブル」

「一体、何が起こっているのでしょう!?(ビクビク」


 浮足立つ他教師ら。

 一方、まことらも、この不死鳥が如く極めて攻撃的な闘気を敏感に感じ取っていた。


「なっ!? この強大なコス……ンンッ! 闘気は一体!?」

「こんな闘気、今まで感じた事なんてないよう!」

「嘗ての強敵とも、アンドロメダ代表の子達にだってここまでの闘気を感じなかったわ! 誰が放っているというの!?」


 慌てて教師らが窓から中庭を見やる。


 するとそこには、四人の可憐な戦乙女らが、血に飢えた餓鬼と化したボンクラーズ共から、自らの大切な友を守らんとすべく手を取り合って立ち向かっているのが見えた!


 そして今まさに、彼女らの懸命な祈りに答えて宇宙の辺境へと顕現した純白の戦女神が、おイタが過ぎた愚か者どもへと正義の鉄槌を下さんとしていたのである!


 ……この時、きらりの眼が怪しくキラリときらりんぱ☆(相変わらずきらきらうぜぇな!)したのに、誰一人気づくことが出来なかったのはやむを得ない事であろう。


 慌てて中庭へとパニック走りでダバダバ駆けつけるまことら。

 きらりもまた、己が胸中に渦巻く欲望からなるニチャア……とした邪悪な笑みをひた隠しつつ、同じく慌てたフリをしてその後を追うのであった。

 

 

 ……きらりは、このやっこが得意とする(されて相手がキレる)防御方法から見ても分かる通り、相手の隙を誘い、そこへ夢想の一撃を突き入れるという、典型的なカウンターアタッカーである。


 これは生来の体質(太神波紋衝)に加え、相手の一瞬の動揺や、全く意識が向いていない箇所を目ざとく発見するという、いわば「孤塁を見抜く」力が先天的に備わっているからに他ならない。


 普段フザけ散らしてはおっても、嘗ては天才とまで称されたこともあるばつ牛ンのシックスセンスは今も健在なのだ。

 

 この、きらりの才能を見出して体操の道へと誘ったのは幼馴染のまことである。

 

 まことらの気持ちがきらりから離れないのは、こやつの優れた感覚が、体操のみならずあらゆる場面で発揮され、彼女らを支え続けていたからに他ならない。

(それ以外にも、このだらし姉ぇやっこを世に放逐するわけにはいかぬという、まことが持つ生粋の苦労人体質によるところも大いにあるのだが)

 

 きらりもまた、そんなまことらとの絆を大切にしているのだ。


 あと、なんやかんやで、きらりはきらりなりに過去に誓ったまことらとの盟約を果たそうとしているようで、彼女ら同様に、その感覚だけは研鑽しつづけている。

 

 彼女らは、体操にのめりこみ過ぎる余りわかさの脚が壊れるまで気づけなかった。

 そんな過去の己らを反面教師とし、その培った技を今度は後進の為に使おう。


 そう固く心に誓いあい、それを自らの戒めとして科しているのである。

 

 その意気や「ヨシ!」なのだが。

 今回に限っては、その類稀に良くあるセンス◎(消費振り分けポイント20%軽減)は全くもってロクな事に発揮されなかった。

 

 絆は大切であるのだが……それはそれとして!

 自らの欲望には忠実で、決して抗わぬ。

 

 ……やはりこのやっこは、残念なだらし姉ぇなのであるのは確定的に明らかである。



 

 折角の類稀なる才覚を全く碌な事にしか使わぬおバカさん、きらりは。

 珠玉の力を思う様間違った事に振るい、孤立状態にある無垢なる乙女・理仁亜を、己が贄とすべく躍起になって言葉巧みに惑わしておった。


 その様は極めて見苦しく、後進らを優しく見守るのみである体操の先達らをもってすら、草葉の陰から思わずヘッドショットを狙わずには居られぬ心境にしてしまう程であった。

 

「すっごい演武だったね! きらり、感動しちゃった! きらりんぱ☆」


 ……全く見てもおらぬのに、よくもまぁ、心にもない事を言うやっこである。

 

 自らの欲望の為ならどんな誹りや艱難辛苦も厭わぬ。

 必要とあらば、嘘でも平気でつきよる。

 きらりはそんな矜持(?)をもった、残念なおなごなのだ。


 「……? あ、ありがとう? ……!? いけない、もう午後の予定時刻なのか……な? 呼びに来てくれたの?(アセアセ」


 演武に没頭するあまり、時が過ぎ去るのをすっかり失念していたようだと、思わず時刻を確認する理仁亜。

 

「えー! まだ全然余裕のよっちゃんタコだよ! 大丈夫だ、問題ない! なんつって! きりりんぱ☆(`・ω・´)キリッ」


 これはさすがに嘘ではない。

 午後の予定までは、あと2時間程ある。

 

 真実も程よく織り交ぜる詐欺師の常套手段をも本能で使いこなす、実に残念なセンスの無駄遣いであった。


「ほっ……。そう、なんだ。じゃあ、この後どうしようか……な?」


 理仁亜がこうツイートした瞬間。

 きらりの眼がキラリと怪しくきらりんぱ☆(きらきらうぜえな!)したのに、理仁亜が気づくことはなかった。


 懸命に過去の宇宙そらを駆け抜けた人々らの情熱を敏感に感じ取れる程、高い感受性を持つ宇宙聖女。

 だが、その力は何故か本人に向けられる事はなく、自身の危機には案外鈍感であった。

(この辺の危なっかしさが、理仁亜の周りに人が集まる理由でもある)


「そんな暇を持て余した神さんみたいな理仁亜ちゃんに朗報だよ! どうか、このきらりと、付き合ってください! オナシャス! ぺこりんぱ☆」

「……えっ!? つ、付き!? あ、あうぅ……その、わたし、好きな人が居るし……。そ、それに女の子同士は、そのう……ちょっと……(プシュー」


 何やら妙な勘違いをする理仁亜。

(宇宙聖女は意外とムッツリであった)


「……!? ち、違うよ!? そういう意味じゃないし! いくらきらりだって、そっちの方は雑食じゃないもん!」


 自ら仕掛けた闇討ちが流し斬りの如く完全に入ってドヤッていた所へ、思わぬアンブッシュを逆に受けて面食らうきらり。

(ファーwwwwざまぁwwww)

 

 慌ててゴソゴソと懐に手を突っ込み、何かを探りよる。

(ハラがつっかえてちゃんと手が入らないんじゃないですかwwww)


「むう~! 地の文=サンのいぢわる! きらり、そこまで太くないもん!(プンスコ」

「……!? 誰に向かって喋ってる……のかな(;´・ω・)?」


 フヒヒ、サーセンwwww!

 (ンンッ!)閑話休題。


「……これこれ、これだよ! 一緒にこの遊覧コースしよ! いいでしょ!? ねッねッ!? お願いします、この通り! ジャンピング土下座、ズシャりんぱ☆(ズシャア!」

 

 そういって、レインボーキャッツバレー遊覧のチラシを見せながら、見事なジャンピング土下座と共に同行を懇願するきらり。

 

 それは、某悪の科学者も笑って脱帽せざるを得ぬ程の、見事なワザマエ!

 普段からやり慣れた者にしか成しえぬ、全く無駄なく洗練された、無駄な技術であった!

 

「レインボーキャッツバレー……?」

「そうだよ! この遊覧コース、すっごく綺麗な星雲の景色を楽しめるんだ! その上に~……な・なんとぉー! 船内で限定スイーツが買えるんだよ! これはもう逝くしか無いって思うでしょ! レアりんぱ☆」


 受け取ったチラシを矯めつ眇めつしながら問う理仁亜に、必死のプロモーションを展開し、その魅力をアッピルしよるきらり。

(必死杉内乙wwww)


 ……前回にも名前だけチラリズムしていた、件のレインボーキャッツバレーなる宙域とは。

 

 猫の目星雲の一角に位置する、直径ほんの数光年程度のガス塊に過ぎない、ちっぽけな場所である。

(宇宙さんの規模からしてみればであって、人間から見れば十分巨大であるが)


 だが十人の人に尋ねたらば、その中のおよそ九人が、直径10万光年を誇る広大な天の川銀河の範囲内にある半ドットにも満たぬこの場を、最も主だった景勝地だと答えるだろう。


 その実態は、非常に濃密な星間物質が渦を巻いて密集する暗黒星雲。

 外側からは全く光を通さず、光学での観測は難しい。

 

 だが内部に入ると一転、イオン乱流が吹き荒れる難所なんどころからはなぜか他恒星からの光が視覚できる。

(物凄い嵐で傘もさせぬ横殴りの雨に打たれながらも、天気は快晴でお天道様が見える様な感じであるといえば分かりやすいだろうか?)

 

 星間物質の激しいうねりは光線をプリズムへと分解。

 結果生まれた美しい虹の乱舞は、あたかも色とりどりの妖精たちが楽しげに踊っている様に見えるという……。

 

 地獄と極楽が共存する、実に魔訶不思議な空間なのだ。


 本来ならこの星雲は宇宙大航海時代にて、星間物質を採取する為の、言わば「宇宙鉱山」として開拓がなされたのであるが、後の研究により新たなる恒星が誕生する場所だと分かった。


 直ちに採掘は取り止められ、代わりに観測のために研究施設が設けられることとなった。


 網の目の様に張り巡らされた坑道、Gロジスティックラインはその名残りであり、そのまま研究のために利用されている。


 そうして始められた観測の際、そこを航行する船から見えるこの宙域の美しさに気付いた研究者変態らによって


「あれ~? ここってサァ、観光地にしたら金取れて、ウチらの研究費になってウェ〜イってなんじゃね?」

「……!? ……天才!」


 と気付かれてしまい、生まれたのがこのレインボーキャッツバレー遊覧コースである。


 そんな数奇な運命によって人類との邂逅を果たしたこの珍妙なる星の海原には、これまた珍奇なる名物がある。


 それは「レインボーキャッツ・アイ」という。

 きらりが言う限定スィーツとは、この事である。

 

 七種類の色とフレーバー。

 一口サイズのゼリーで大変美味。

 

 更には、中に見える猫の目のような、縦筋が特徴。


 美しさと妖しさが同居する、不可思議な場所の名物に相応しい、奇妙な魅力を持つお菓子なのだ。


 ……なのだが、某蒟蒻の畑をも上回る程に歯ごたえがあり、よく噛まずに食べてのどに詰まらせる人が後を絶たない、特級銀河危険食品に分類されている激ヤバいお菓子でもある。

(同じレベルで危険な食品はネビュラ・ニシンの塩漬けを醗酵させた漬物であるコズミック・シュールストレミングしかないという事実から、如何程に激ヤバギガマックスであるかが察して頂けるだろう)


 この美味しいけど体に超絶悪いお菓子はキャッツバレー・レインボート船内でしか販売しておらず、遊覧中にしか購入することが出来ない。

 しかもおひとり様ひと箱づつという制限付きである。

 

 ……もうこの時点で、賢明なる読者諸兄には既にお見通しであろう。

 そう、きらりは、只々このお菓子欲しさで暴挙にでているのだ!


 美しい景色?

 旅の情緒?


 そんなもので腹は膨れぬ!

 ダストボックスへダンクシュートしてしまえ!

 

 きらりが求め、突き動かされるものはただ一つ!

 甘味への食欲のみ!


 この愚か者は、修学旅行の行先が決まるやいなや、日程をくまなく確認(ヨシ!)。

 その上で、わざわざ昼食後のわずかな自由時間と、遊覧スケジュールがかみ合うこの瞬間を入念に調べた上で決行したのだ。


 理仁亜に関しては、完全に偶然である。

 騒ぎの渦中にあって孤立している所を見つけ、ひと箱増やせる!

 と欲をかいて連れ去る事を決めた。

 

 計画通り等とほざいてはいるが、流石にそこまで見切れていた訳ではない。

 別に理仁亜が居なかったとて、このやっこは一人で行動を起こしていただろう。

 

 が、中庭に赴く理仁亜の姿を見ただけでこうなる事を一瞬で見抜き、軌道修正出来たのはやはり前述のセンスによる所であるのは間違いない。


 一応、体質を気にする理仁亜を気遣ってスルーする事も頭の端っこ(0.03%位)にあったようだが。

 そんな些事は、邪悪な欲望を前にして雲散霧消してしまった模様である。


 お菓子の魅力に比べれば、そんな不幸体質デバフ等、塵芥も同然よ!


 糖分に塗れた邪悪の化身、きらりの蛮行は留まる事を知らぬ。

 

 持って生まれた天賦の才を己が為に使って何が悪い!

 とでも言わんばかりに、穢れなき乙女を糖衣で覆って飲み下さんと、更なる攻勢をしかけよる!


「うーん、すごく綺麗な所だ……ね。それにこのゼリーも美味しそう……。……ンー、でもやっぱりダメだ……よ。こくげいとバス以外の乗り物に乗るのはちょっとコワイか……な?(ブルブル」

 

「大丈夫だって、問題ないよぉ! 現に今ここまで何事も無く来てるじゃない! だったら遊覧船ぐらいどうって事ないよ! きっとなんにも起こらないって! だからいいでしょ!? 先っちょ! ホント先っちょだけだから! ねッねッ、いいでしょ!?」

 

「ええ……? 先っちょって……。あ、あうぅ……。でも、ンー……確かにそうなのか……な? 行ってみようかなぁ。……ちょっとコワイけど……」

 

「きゃっほう! そうこなくっちゃ! 流石理仁亜ちゃん、我が愛弟子よ!(教官感) そうと決まれば早速イクゾー! テッテッテテテテ♪ れっつらごーりんぱ☆(ガシッ」

 

「ひゃあっ!? きらりちゃん、急に引っ張らないでぇ……(グイグイ」


 渋る理仁亜であったが、彼女もまた、少し欲が出てしまった様だ。


 好奇心には勝てず、きらりの、全く心が籠っていない土下座ズッシャアな駄目人間丸出しムーブ攻勢にやむなく帯同を理仁亜院してしまった。


 きらりは、自らの食欲によってぎらつく、曇りありまくる濁った眼をきらりんぱ☆とさせながら


 「逃がさん……。お前だけは……」


 とでも言わんばかりに理仁亜の腰に手を回し、ガッチリホールドさせた。

 

 そして一目散に、遊覧船乗り場があるドッキングベイへと拉致するのであった。



 

 ……時は戻って、中庭では。


 理仁亜がきらりに連れ去られた事が発覚し大混乱。

 どったんばったん大騒ぎであった。


「ひぎゃあぁあ! エライこっちゃエライこっちゃですわぁ!(ダバダバ」

「はわ、はわわ! 理仁亜さんがぁ~><(ダバダバ」

「あう、あうう! もうダメれすぅ~!><(ダバダバ」


 自身らが命がけで守った友を、予想外のタイミングで。

 ……それもきらり如きにかどわかされる等と!

 

 してやられたショックのあまり、思考回路はショート寸前。

 絶賛パニック走り中の優香達であった。


 しかしその軌道は一見するとアトランダムだが、規則正しくメビウスの輪を描き。

 質素な中庭に新たなる幾何学模様を作り出していた。


 おお、見事なワザマエ!

 

 取り乱していても尚、強さと美を追求する事を忘れはせぬ。

 彼女らは真の体操選手フロイラインであった!


 だが、そんな前衛的アートのライブが終わりを告げるかの様に……。


「「「にゃわ、にゃわわ! ……あっ……(プツン♡」」」


 やがて力尽きた三匹のオトモおなごら。

 突然、糸が切れたかの様に立ち止まるや、「バッタリ」と前のめりに突っ伏した。


「!? ちょ、アンタら何してんのよ!? ぬっ倒れてる場合じゃないっての!(ユサユサ」

「うぅ~ん、もう駄目だ、お終いだぁ……。ですわぁ……。@∞@(グルグル」

「何どっかの王子みたいな事言ってんのさ! しっかりしなさいっての! 落花生みたいな口してないで!」


 理仁亜と苦楽を共にしてきたさわこは慣れたもので、割と冷静であった。

 親友がきらりダメな大人にかどわかされると分かるや、即刻哲人へ知らせようとしていた。


 だが、同じくこれまで戦ってきた三人のオトモらの、妙な仮面に吸い込まれた後で透明になって味方を攻撃し始める様な赤とんらん状態を目の当たりにし、心乱されてしまった。

 

 通信回線を開く事も忘れ、慌てて目を回している優香達の肩を揺すって起こしにかかる。


 そうやって、体操部員フロイラインらがワチャワチャしよるのを、横から眺めていたかえでだったが。

 

 唐突に「カッ」と目を見開くや、この見苦しく騒ぐおなごらに、ここは譲れませんと言わんばかりに活を入れた!


「うろたえるな小娘ども!(カガッ」

 

 すさまじい拳圧により真上に吹っ飛ぶさわこら。

 

「きゃあぁあ~~~~~~!><」

「ちょお!? アタシまで!?」


 ややあって、ドシャッガシャッダン! と、受け身も取らずに落ちてきよった。

 

「あげっ!(ドシャッ」

「「きゃんっ!(ガシャッ」」

「イテッ!(ダン!」

 

 痛むケツをさすりながら深刻なクレームを申し立てるさわこ。


「ちょ、ヒドイよかえでちゃん! アタシ別にうろたえてないのに!」

 

 そうやって、小娘が暫く文句をぎゃあぎゃあ喚き散らしているのを瞑目して聞くかえでだったが。

 

 唐突に「カッ」と目を見開くや、この、見苦しく騒ぐおなごらに再び鎧袖一触よ、心配ないわと言わんばかりに活を入れた!


「うろたえるなと言っている!(カガッ」


 すさまじい拳圧により真上に吹っ飛ぶさわこら。

 

「きゃあぁあ~~~~~~!><」

「ちょお!? また!? ナンデ!?」

 

 ややあって、ドシャッガシャッダン! と、受け身も取らずに落ちてきよった。


「あげっ!(ドシャッ」

「「きゃんっ!(ガシャッ」」

「イテッ!(ダン!」

 

 痛むケツをさすりながら深刻なクレームを申し立てるさわこ。

 

「ちょ、かえでちゃん、単にそのセリフ言いたいだけなんじゃないの!?」


 一見して、それを涼しい顔で聞き流し、冷静さをアッピルするかえでだったが……。

 すぐに不安そうな表情となり、オロオロし始めた。


「う、うろたえちゃダメよぉ。落ち着いて! みんな落ち着かないといけないのよぉ~(´;ω;`)ウゥゥ」

「はいはい、大丈夫だから。ほら、ね! ヨシヨシ……。(ナデナデ」

 

 かえでを抱き寄せ、頭を撫でながらなだめるまこと。

 その光景は大変百合百合しく、いと尊かった。

 

 神々しさすら感じる二人を目の当たりにして沸き勃つボンクラーズ共。

 

「あら~^^」

「間に挟まっても構いませんねッ!?」

「ありがてぇ、ありがてぇ……」

「良き……。良き……。いとおかし」

「ひ、ひとつになろう、ひとつに(ポロンッ オメーハモウオメーガオモウサマイキテイケwwww」


 この、何でも咥え入れよる暴食っぷりは実に節操がなく、有体に言って大変キモかった。

 そんな愚か者どもをゴミを見るような目で見ながらツイートするさわこ。

 

「うわぁ、アンタら……。幾らなんでも節操無さ杉内なんじゃないの?」


 その無慈悲な眼差しは、普段から鷹揚で、誰に対しても人好きのする笑みを絶やさないさわこのものとは思えぬ程。

 まさに、冰気錬成が臨界に達した、絶対零度の冷たさであった。


 だが、常人が見たらば絶望に打ちひしがれざるを得ぬ程の冷やかさであっても、この救い様が無いHENTAI達からしてみれば、自らの自らを奮い勃たせる滋養強壮剤に過ぎぬ。


「ありがとうございますッ!」

「もっと、もっとくらはい(ダラン)」

「そのまま「俗物が……」って言ってオナシャス!(ズシャア!)」

「サマーン様万歳!(ヒャッハー!)」

「ひ、ひとつになろう、ひとつに(ポロンッ ムシロオメーガオメーノママデアンシンシタゾwwww)」

 

 おお、ブッダシット!

 破壊力ばつ牛ン、身の毛もよだつ、天元突破のキモさ!

 

 寧ろご褒美です! とでも言わんばかりに、ギンギンにいきり勃ち、さわこを称えすらしよる!


「キモい! あとサマーンって誰さ!? 氏ねHENTAI! フン!(ドゴォッ!)」

「「「「「ありがとうございます!(バッタリ)」」」」」


 さわこ怒りのア〇ル蹴りが炸裂!

 ボンクラーズ共は、恍惚の表情を浮かべながら昇天した。


「この一撃が、アンタらとの最後の別れだよっ!」

「ほう、去勢乙wwwwですか……(クイッ)」

「オイオイオイwwww」

「……キモいわアンタも……」


 靴の裏についたガムよりしつこいボンクラーズ達だったが、さわこの杭撃をケツ♂に受けて今度こそ滅び去った。

 ……頼伝のしょーもないレビューと共に……。


 閑話休題、ダルダルに伸びきり汚く転がるゴミを打ち捨て、改めてかえでに深刻なクレームを申し立てるさわこ。


「かえでちゃんが一番うろたえてんじゃん! もぉ~、しっかりしてよ~!」

「ごめんね、私達がちゃんときらりを抑えていればこんな事には……」


 まことの執り成しに、やむなく矛をおさめるさわこ。

 

「むう……まこっちゃん程のおなごに頭をさげられちゃね……」


 ……かえでは公明正大な実直さが服を着たような淑女である。

 だが、その特徴と同じくらいに、少々……いやかなり物事を考えすぎるきらいがある。

 

 度が過ぎたクッソ真面目さ故に、底力スキルが心配性に弱体化してしまっているという、良い例であろう。

 

 一番頼りになりそうな人物の意外なメンタルの弱さに、驚きつつも呆れるさわこであった。

 

 だが、そのお陰で逆に落ち着く事が出来た。

 きらりが何処へ遁走したのか分からぬ状況では、闇雲に追うた所で、そのハラ肉を摘まむことはできぬ。

 

 クレーム案件は棚上げとし、意識を本題へフォーカスする事にした。

 時は残り少ないが、情報も集めなくてはならない。

 

 先ずはこの頼れる先輩戦姫の助力を素直に請うさわこ。


「まぁ、それは置いといて……。まこっちゃん、この遊覧コースってどっから出てるのさ?」


 チラシを眺めながらまことに訪ねるさわこ。

 

 どうやら、このチラシは複数枚が冊子になっていたらしい。

 今手元にある分では、肝心な情報部分が欠落しているようである。


「それならドッキング・ベイから出てるはずよ。ホラ、こくげいに乗るときバスで入ってきた所」


 まことは過去にもこくげいに乗船しているので、そのスケジュールにも詳しい。

 当然、レインボーキャッツバレーを始めとする、景勝地遊覧のオプションサービスについても熟知しているのだ。

 

「あ~、あそこかぁ! ここから結構離れてるけど、走れば間に合うかも! ちょっと逝ってきてもいい!?」


 とかなんとかいいながら、もう既に駆け出し始めよるさわこ。

 その、「答えは聞いてない!」と言わんばかりなさわこの姿勢に苦笑するまことであった。

 

「ンー、特別に許可します! ……きらりは別に好きにして構わないからね!」


 便宜上とはいえ、きちんと許可をもとめた事を評価し、逸る教え子を解き放ってやることにした。

 きらり? しらねwwww(ハナホジー)

 

「ちょ、扱い雑っ! きらりェ……! 兎に角アタシ逝ってくる! まこっちゃん、ウチのオトモ達の事お願い!」


 とうとうまことに見放されてしまったきらりの、余りの宿業に呆れるさわこ。

 が、心情とは裏腹に、脚の方は「止まるんじゃねぇぞ……」と言わんばかりに走り出している。

 

「貴女まで無茶しちゃダメよ! 間に合わなかったらここに戻ってきなさい! 間違っても強引に飛び乗ったりしない様に!」


 駆け出すさわこの背中越しに呼びかけるまこと。

 

 送り出しはするが、キチンと注意喚起して生徒に釘を刺す事を忘れない。

 これぞまさに教師の鑑であると言えよう。

 

「ラジャッ! (`・ω・´)ゞビシッ」


 何時もの返事だけはいい猪娘の調子を取り戻し、ドッキング・ベイへと急行するさわこ。

 

 打ち出された弾丸をも追い越す勢いでもってスラムを構成する迷路スークの様な路地を駆け抜けるや、高級ホテルが立ちならぶメイン・ストリートを疾駆する!

 

 巨鯨の腹中で聳え勃つ摩天楼に、閃光のさわこが、無垢なる乙女ともを救うべく、引くに引けない譲れはしないと言わんばかりにカガッと迸った!

 

 その艶姿は、まるで惑星に最接近し、美しい光の尾を引いて流れる一筋の彗星が如し!

 

 ……だが、そんな清廉なる断罪の光も、残念ながらあと一歩、巨悪きらりへは届かなかった。


 たどり着いたドッキング・ベイには、有るはずの遊覧船が、ついぞ見当たらなかったのだ。


「はう! 何てこと……! 間に合わなかったというの!?(ガックリorz)」

 

 絶望のあまり膝を折ったさわこの眼前には、天の川銀河が誇る星々の輝きが、大宇宙の闇を優しく、静かに彩るのみ。


「うわぁ……。なんて綺麗な……」


 その、あまりの美しさに一瞬息をのんで見入るさわこだったが、今この時だけは、それどころではない。


「……ハッ(;゚Д゚)!? いやいや、見とれとる場合じゃなかった! Dockerどっかにここを見てた人が居るハズ……! あっ、居た!」

 

 あまりにも慌てて駆け付けたあまり、きらり下手人を追い越してしまったのかも。

 それか、ひょっとしたらアタシの勘違いで、まだボートが来てないだけかもしんない!

 

 そう思い、気を取り直したさわこ。

 一縷の望みにかけ、すぐ近くで作業をしていた係員のおっちゃんに尋ねる。


「ねぇ、おっちゃん! 遊覧船ってどこにあるの!?」


 さわこの剣幕にちょっぴりビクッ♡となりつつも、質問に答えるおっちゃん。(優しい)

 

「ンー? 運が悪かったな嬢ちゃん、キャッツ・ボートなら今まさに抜錨したよ」


 おっちゃんは優しかったが、その答えは残念ながらさわこが期待とは裏腹に、全く優しくなかった。

 再び絶望のあまり膝を折るさわこ。

 

「そ、そんなぁ……。(´;ω;`)ウゥゥ」

「ええ!? そんな震えて泣く程乗りたかったのかい!?(入り婿感)」

 

 あまりの落胆っぷりに、またもやビクッ♡となるおっちゃん。

 天は何故、真面目に生きる彼にこの様な仕打ちを齎すのであろうか?


 とはいえ、眼前にて項垂れるおなごの様子は尋常でなく、何はともあれ、自身をも差し置いて慰めの言葉をかけるおっちゃん。(優しい)

 

「残念だったねぇ。でもくじら船団はひと月おきに地球圏へ戻ってくるから。見たとこ嬢ちゃんは修学旅行の学生さんだろ? 今度プライベートで来なよ」


 さわこにとっては、今この便のみが重要であるのだが……。

 そんな事はこのおっちゃんに分かるはずもない。


 素直にお礼をいって、その場を離れるさわこであった。


「あうぅ……。そうするよ……、ありがとうおっちゃん……」


 ……どうやら本当に一足遅かったようだ。

 このままでは親友が宇宙の藻屑と成り果ててしまう!


 嘗てない程の危機に思考回路はショート寸前。

 だが、悲しみに暮れる寸前、頼れる兄貴分の事をようやっと思い出すさわこ。

 

 そして藁をもすがる思いで、哲人へ回線を開くのであった。



 

 再び時は遡る。

 

 さわこらとボンクラーズ共が中庭でワチャワチャやっとる横では、ミラリィ達がめだかの学校を開催中であった。


 熱心な生徒を前に、振るう教鞭のキレが冴えわたる約呼と蔵智。

 ミラリィもまた、未知なる知識をchoochooチューチューラーニングするのに夢中だ。

 

 そうやって、お互い、宇宙の談義に没頭していると。


 突然中庭から不死鳥の如く極めて攻撃的な闘気が「ズオォッ!」と発せられた!

 

「ひゃあ!? な、何です!?」

「うひゃあ~! こ、コワイ~><(ブルブル」

「(・ω・)ム!」


 未知の恐怖に震える約呼と蔵智。

 

 だがミラリィは、その気から邪なものを感じなかったので、髪も「ブワッ!」とならず、割と余裕な感じのすまし顔。

 

 「ほう、中々やりよるわい! まぁ、まだまだやけどなwwww」

 

 みたいな感じで、何故かちょっと上からな態度でウンウンと関心しよる様が、ミラリィのくせに生意気であった。


 ともあれ、意識を現実に引き戻された三人。

 何事かと中庭を見やる。


 すると、そこには体操部員のおなごらが、今にも襲いかからんといきり勃つキモイ男子共に相対していた。


 一見すると多勢に無勢、おなごらの旗色は悪そうである。

 

 が、それでも、目の前にいる悍ましき地獄の亡者めいた者共を、怯むことなくきりりと見据える彼女ら。

 その曇りなき8つの眼には、諦めなど一切感じられぬ。


 それどころか、互いの手を取り合い、息を合わせ、その身に纏う瑞々しい心気を更に膨れ上がらせてゆくではないか!


 先程に感ぜられた闘気は、彼女らのものであった。


 やがてそのコス……ンンッ!

 闘気は気高き戦女神を大宇宙へと顕現させた!

 

 突如として現れた女神を前に驚きを隠せない約呼と蔵智。


「わぁ……。スゴク綺麗……」

「かっこい~!(*‘ω‘ *)」


 令と見識のない二人は、この尊き存在を見上げるのみであった。

 が、ミラリィはそれが誰なのか当然知っている。

 

「?(`・ω・´)マッマダ」

 

 と、何故この場にオカンが居るのかと首を傾げる。


 三人が戦女神オカンを、三者三様の反応でもって見上げていると。

 

 女神はゆるりとその拳を、中庭に蔓延るボンクラーズ共へと振り下ろした!


 ドズゥン!


「「「「グワーッ!!!!」」」」ポキポキポッキン♪

 

 神聖なる愛と怒りと悲しみの鉄槌が、メン!ツキ!ドォー! と言わんばかりに炸裂!

 その途轍もない一撃の余波は、烈風となって三人へと吹きすさぶ!


「ヒ、ヒエェ~~~~! (´;ω;`)」

「うひゃあ~! スゴイスゴイ! (*´Д`)キャッキャッ」

「(*´ω`*)サスマ」

 

 振り下ろされた正義の拳が消え去った後には、ガスを放出してシワシワに萎んだカエルみたく、ダルダルに伸びきったおバカさんたちが汚く転がり、死屍累々の様相を呈しておった。

 

 かくして、純白の戦女神が放つ穢れなき威光により、おバカさん達は成敗された。

 

 だが、祈り(物理)によって女神を現世へ下天させたおなごらもまた力を使い果たしてしまった。

 がくりと地に膝をつき、肩で息をしよる。


 どうやら、立ち上がることすらままならぬ様である。


 突然の最終戦争アルマゲドン勃発に、三人が驚き戸惑っていると、騒ぎを聞きつけた引率教師らが宿からすっ飛んできなすった。


 何をしでかしたかは知らぬが、あれだけどったんばったん大騒ぎしていれば雷様かみなりさまのお怒りがもーっと頼ってもいいのよと下るのは当然のことであろう。


 倒れ伏すキモイ男子らに、心中でm9(^Д^)プギャーとNDKねぇどんな気持ち?wwwwする三人。


 だが、三人の予想とは裏腹に、お小言の矛先はこのおバカさん達では無く、あろう事か助け起こされたおなごらに向かった。


 数多の犠牲を払ってまで天に仇なす邪を払ったおなごら。

 だがあわれ、残念ながらその功績を認められなかった。

 

 そればかりか、むしろ騒ぎの元凶と看做されてお縄になってしまったようである。


 如何なる理由があれど、中庭でアユレディガイズ!?(ウェーイwww)とレッツパーリィしていた事に変わりは無い。

 故に先生方からしてみればどっちもどっちで、一緒くたに成敗、となるのもやむを得ぬ。


 気力を使い果たした上、更なる叱責を受けるおなごらの表情はとても辛そうである。


 が、所詮は他人事。


 オオウ(´・ω・`)ソッカー(´・ω・`)チカタナイヨネ(´・ω・`)

 

 三人はこう思いつつ、合掌して兵どもが夢の跡を偲んでから、興味を再びめだかの学校へと戻そうとした……。


 と、その時、不思議なことが起こった!


「……へっへっへっ……(ビンビン)」


 何と、滅びた筈であったキモい男子共が再び勃ち上がってきよったのだ!

 

 神聖なる戦女神オカンの怒りですら致命的な致命傷とならなかった。

 果たして、この者どもはZethurinだとでもいうのだろうか。


 その欲望はとうとうドス黒い瘴気となって身から溢れ出し、周囲に穢れを振りまきよる。


 キモい!

 そして臭い!

 

 あまりの悍ましさに呻きをあげることすらままならぬ約呼と蔵智。


 ミラリィもまた、このやっこらが放つ劣情の中に、不倶戴天の敵である不届き者ども……即ちスペースローグである……につらなるであろう邪悪の萌芽を感じ取り、髪の毛がちょっとだけ「フワッ……」と広がった。


 浮かべていた笑みは消え去り、その表情に一切の油断はない。

 【準備完了!】これでミラリィは、人々に愛されるお調子者から一転し、闇に潜んで武器を構える暗殺者と化した。


 悪の走狗になり下がった者へ刃を突き立てることに、最早一切の躊躇いなどない。

 ひとたびお上にスペースローグと断じられたらば最後、その者は物理的に天の川を渡河することになるだろう……。

 

 一方、そんなやべー奴に目をつけられた事など露知らず。

 

 調子が有頂天になった悍ましき煉獄の修羅共。

 口々に怨嗟めいたうわ言をツイートしながら中庭の一角に向かって一斉に駆け出しよった!


 突然の予期せぬ急展開!

 想像とは全く逆の方向に走り去ったおバカさんたちの行動に驚きを禁じ得ない。

 

 これには約呼と蔵智のみならず、さすがのミラリィもちょっとビクッ♡とする。

 

 この連中が目指す場所こそが、神楽舞いを奉納する美しき女神、即ち理仁亜が居る所である。

 だが、植え込み等で遮られ、ミラリィ達からは死角となっていた。

 

 ゆえに、三人には、このキモい連中が、何故突然駆け出しよったのか理解出来なかったのだ。

 

 とはいえ、そんな理由など些末な事に過ぎない。

 

 あの様な邪悪をこくげい船内へ解き放つ訳に行かぬ。

 その事実だけは揺るぎない。

 

 しかしながら、この連中を討てるであろう戦乙女らは奮戦空しく地に膝をつき、更には冤罪によって磔刑に処されてしまった。


 おお、なんとした事か!

 

 この場には最早、忌むべき地獄の亡者どもを打ち払える力を持った戦士が居らぬではないか……!


 さすがにこれはマズい。

 やるなら今でしょ!

 俺が……ガ〇ダムだ!


 そう判断したミラリィがお上の指令を待たずして武力介入を開始すべく、ちょっとケツを浮かせた……。


 と、その時、不思議なことが起こった!(2回目)


「あなた達ぃ……いい加減にしなさーい!(スターッタップ!99)」


 何と、駆け付けた女教師が中庭を覆う絶望の闇を切り裂く程の気炎を放ったではないか!

 そして熱く煌めく紅炎をその身に纏う気高き戦乙女となって、愚か者どもへ攻め入るや、陣中を縦横無尽に駆け巡った!


「はあぁぁぁぁぁ…………っ! ったあ――――!(ズババババ!)」


 音をも置き去りにして翔ける美しき焔は紅蓮の剣閃となって妄執を断ち切り。

 真紅の鏃と化した蹴りは穢れた澱を貫き、焼き尽くして浄化せしめた。


 これぞ、クリムゾン・まこと・スマッシュ=ストリームだ!


「…………成敗!(3・・・・2・・・・1・・・・)」


「「「「「ほっぎゃあああぁあ――――っす!!!!!」」」」」(チュドォン!∅)


 突如現れた紅炎纏う戦姫は、おなごらが手を焼いた愚か者どもを一瞬で葬り去った。

 強烈無比の一撃を受け、全員「ズシーム!」と地に倒れ伏す。


「お~! やったぁ!(パチパチ)」

「すっごーい!(*'ω'*)(キラキラ)」

「(`・ω・´)ワザマエ!」


 成り行きを見守っていたギャラリーと共に沸き立つ三人。

 こくげいに再び平和が戻ってきたのだ。


「ここは何時もの体育館じゃないのよ! 学生最後のイベントだからといっても限度があります! お説教よ! 全員そこに直りなさい!(タイムアウト!‥‥リフォメーション)」


 どうやら、悪運強き下手人らも、とうとう命運尽きたようだ。

 聖なる炎に追い立てられて縛につき、お白洲へと引っ立てられた。

 今までの無駄な精力はもはやなく、ただシオシオと大人しく萎えるのみ。

 

 一方、健気に戦い抜いたおなごらは、ようやっと認められ、手当を受けることが出来たようだ。


「これにて一件落着! ってね!」

「よかったねぇ~(*‘ω‘ *)」

「(´・ω・)ヤレヤレダゼ」

 

 その様子を見た三人も一安心。

 警戒を解き、再びその意識を英知の泉へと向ける。

 

 当然そのディスカッションは、先ほどとは比べようもない程に加熱!

 先ほどよりも更に危険な領域へと加速するのに時間がかからなかったのは言うまでもない。


 …………


 だが、至福の時もそう長続きしなかった。

 再びこの静寂を乱すものが現れたのである。


「失礼しま~す。お菓子をどうぞ!」


 食堂のセッティングに来た中居さんである。


「ン……? あっ、どうも!」

「ありがと~(*‘ω‘ *)」

「ウマーイ(*´Д`*)(ムシャア)」


 三人は口と同時に手もしっかり動いておったようである。

 いつの間にか食らいつくしたお菓子が補充され、再び積みあがった。


 早速これに手を伸ばす。(太るぞ!)


 と同時に、ふと違和感を覚えた蔵智がぽつりとツイートした。


「アレ~? なんか~、忘れてる様な気がしな~い?( ^ω^)キョトン」


 お菓子を頬張りつつも首をかしげる約呼とミラリィ。


「ンン~? あ~、確かにそういう感じがしますねぇ~?( ^ω^)キョトン」

「?( ^ω^)キョトン」


 ハテ、何じゃったかいのう? と首をかしげる三人の脇を、学生らが談笑しながら横切ってゆく。

 

 どうやら、玄関に集合しているらしい。

 午後のスケジュールが迫っているのだろう……。


 ……?

 ……スケジュール?



 

 ( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)……………………。



 Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 彼女らは思い出してしまった。

 自らが、穢れなき乙女を守護する大役を任されていた事に。


「はうあ! 護衛の事をすっかり忘れていました!」

「はにゃあ~! 理仁亜ちゃんどころか、学生さん達まで居なくなってるよぉ~(´;ω;`)」

「ヽ(;ω;ゞ=ヾ;ω;)ノオロオロ」


 慌てて周囲を見渡すも、時すでに時間切れ。

 フェスティバルレイター、即ち後の祭りである。


 食堂は先程まで人であふれていたのがうその様に静まり返っておった。

 中庭もまた、先んじてこの宿へ来たばかりの時と同じく、しじまが支配するのみ。


 今この場には、うっかり者たちが狼狽える叫びだけが響いていた。


「あうぅ~>< 約呼ちゃん、早く追いかけようよぉ~」

「\(゜ロ\)(/ロ゜)/イソゲイソゲ」

「そうだね! 学生さん達は一旦玄関前に集合してるはず! 今ならまだ間に合うよ!」


 そうなればハリアップグッドパーソン、即ち善は急げ。

 即座に三人は玄関へと駆け付けるや、そっと下駄箱の陰から表の様子を窺う。


 するとそこには、列をなして点呼をとる学生らの姿があった。

 どうやら間一髪、間に合ったようだ。


「ほっ、よかったぁ~ 間に合ったみたいだねぇ~(*‘ω‘ *)」

「(*´Д`)ヒトアンシン」


 そういって胸を撫でおろし、プルンッとふるわせる蔵智とミラリィ。

 だが、集合する学生らを見渡す約呼はとんでもない事を発見してしまった。

 

 その顔色から、みるみる血の気が引いてゆく。

 

「うん! ……ってアレ? 理仁亜ちゃんは?」

「( ^ω^)( ^ω^)……………………。Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)!」


 約呼が気づいてしまった通り、集合する南稜高校修学旅行御一行様の中に、理仁亜の姿はどこにも見当たらなかった!

 蔵智とミラリィも同じく気づき、再び狼狽えよる。

 

 数百人いる学生の中で、銀髪は理仁亜唯一人。

 彼女の美しさも相まって、兎に角目立つ。


 ゆえに、見当たらない事が一発で見当たってしまうのである。


「はにゃあ~! 理仁亜ちゃんが居なくなっちゃったよぉ~! 早く探しに行こうよぉ~(´;ω;`)」

「ヽ(;ω;ゞ=ヾ;ω;)ノオロオロ」


 前のめりになりつつも、約呼の手を引っ張って理仁亜の捜索を主張する蔵智。

 ミラリィもまた、今にも飛び出さんと身構えよる。


 だが、更なる胸騒ぎを覚えた約呼は、そんな二人を一先ず押しとどめた。


「う、うん! でも、ちょっと待って! その前に確かめなきゃ……!」

「え~!? どうしたの~約呼ちゃん?」

「?( ^ω^)キョトン」


 そして、当然の疑問を覚える二人を脇にやって食堂へ舞い戻るや、今だセッティング作業をしていた中居さんに質問を投げかけた。


「あの! すいません! 先ほどの中庭で騒ぎがあったのって、何でですか?」


 突然声をかけられビクッ♡となるも、己が職務通りに答える中居さん。(優しい)


「はひっ!? えっ、ああ~、さっきの。あれは何か、男の子達が興奮しすぎちゃったみたいで。それで怒られちゃったみたいですね~(*´Д`)ホッコリ」

「へ、へえ~……、なるほど。……っていうか、随分と落ち着いておられますね……」

「毎年この季節になれば、どこの宿でも起こる風物詩みたいなものですからね~(*'ω'*)」


 テンションが滾りすぎてどったんばったん大騒ぎするおバカさんは万国共通、どこにでも居るのだ。

 とはいえ、それは約呼が聞きたい事ではない。


「しかしまた、彼らは何故そんなに漲ってたんでしょうか? 一体何を見たんですかね?」

「多分あれかなぁ~? ワタシがお掃除してたとき、中庭で銀髪のどえらい美人が、これまたすごく綺麗なダンスを踊ってたのを見ましたねぇ~。まるで神さんみたいでしたよ! 長いことこの仕事してますけど、あんな美しい舞を見たのは初めてでしたね!(*´Д`)ウットリ」


 もう一度言うが、修学旅行に参加している学生の中で銀髪は理仁亜しかいない。

 これは確定的に明らかである。


「理仁亜ちゃんだ……! 体操やってるとは聞いてたけど、しかしまた、何でダンスを?(;´・ω・)」

「さぁ? 兎に角、銀髪のコが踊り始めたら、みるまに他の学生さん達が押し寄せてきて、押し合い圧し合いになってましたね~」

「それであの騒ぎに繋がった訳ですか……」


 どうやら、あの地獄の亡者めいた餓鬼達は、穢れなき女神に喰らいつこうとしていたらしい。

 だとしたらとんでもない事であるが、彼らの尋常ならざる悪鬼羅刹っぷりには合点がいった。

 クラスメイトの乙女らが必死になって戦っていたのも頷ける。


 彼女らは体を張って、理仁亜を護っていたのだ。


 しかし、まだ約呼の疑問は晴れぬ。

 ボンクラーズ共はその後、紅炎纏う凛々しき戦姫に成敗されている。


 気高き乙女の御身は穢れに触れる事なく、清らかなままの筈。

 それがなぜ、突然姿をくらませたのであろうか……?


「ボク達からは見えない場所で踊ってたんだねぇ~(。-`ω-)」

「そうみたいだね……。その、踊ってたコってどこ行ったか見てますか?」

「あ~、あの綺麗なコなら、ちょっとむっちりした先生に連れられて何処かへ行ったみたいですね」

「な、なんですって!Σ(''Д'')」


 なんと言うことだろう!

 理仁亜は担任の女教師と共に別行動し、既にこの場には居なかったのだ!


「あわわ……大変だよぅ! 約呼ちゃん、早く探しにいかなきゃ~!(´;ω;`)」

「ヽ(;ω;ゞ=ヾ;ω;)ノオロオロ」

「う、うん! あの! 二人がどこ行ったか、分かりますか!?」


 思わず中居さんの肩を「ガシッ!」と掴んで問いただす約呼。


「はひっ!? も、申し訳ありません、流石にそこまでは存じません……。二人を見てすぐに食堂のセッティングに入りまして、それから中庭を見ておりませんので……」


 約呼の剣幕にまたもやビクッ♡とドン引きしながらも、やはり己が職務を忠実に全うし、質問に答える中居さん。(優しい)

 天は何故、真面目に生きる彼女にこの様な仕打ちを齎すのであろうか?

 

「そ、そうですか……。お仕事中ごめんなさい、ありがとうございました……」

「いえいえ……。では失礼します。ごゆっくりどうぞ!」


 突然テンションがダダ下がりし、ショボリンヌしよった約呼らを慮りつつも、自らの持ち場へと戻る中居さん。

 一方約呼は茫然自失となり、その場にへたり込んでしまった。


「あぁ、なんてこと……! 理仁亜ちゃんがこのこくげいから……星永さんから離れちゃったら、今度こそ危険が危なくなっちゃう! 一体どうすれば……!」

 

 理仁亜を縛るとんでもない不幸体質デバフは先日、嫌という程体験した。

 

 ほんの僅かな時間であの有様である。

 一時間以上もの長時間離れてしまえば一体どうなってしまうというのであろうか!?


 途轍もない失態に思考回路はショート寸前。

 絶賛大混乱中の約呼であった。


「うわーん! ボクのせいだぁ~! 理仁亜ちゃんが氏んじゃうよぉ~(´;ω;`)(ダバダバ)」

「アワ((゚゚ω ω゚゚ ))ワワ!!(ダバダバ)」


 蔵智とミラリィもまた、自らがもたらしたピンチのあまり、パニック走り状態になった。

 その勢いは凄まじく、ローテーブルに足を引っかけ、柱に頭をぶつけてもなお、止まることはない。


「にゃわ、にゃわわ! ……あっ……(プツン♡」


 だがそんなバステも長続きはしなかった。

 

 自責と慚愧、懺悔の念が、精神の閾値を振り切った二人。

 突然、糸が切れたかの様に立ち止まるや、「バッタリ」と前のめりに突っ伏した。


「はうあ! ちょ、二人とも大丈夫!?」


 前後不覚に陥っていた約呼であったが、二人の凄まじき狼狽っぷりをみて、なんとか意識を取り戻した。

 慌てて倒れ伏す二人を介抱するも、精神ダメージは甚大で、ただただうわ言を繰り返すのみ。


「にゃわわ……ごめんなさい、ごめんなさい……><」

「……!? ……><」

「ふ、二人のせいじゃないよ! 気を確かに!」


 約呼の言う通り、これはすべて阿賀原きらりって奴の仕業である。

 ほんの気まぐれでここまでの悪行を成す、とんでもないやっこであった。

 

 理仁亜の不幸体質デバフと結びついたきらりの暴食は、恐ろしい災いのブラックホールと化した。

 それによって齎された危機はもはや留まる事を知らず、あらゆるものを喰らい尽くし、蹂躙してゆく。

 さわこらのみならず、この三人もまた、災厄の濁流に飲み込まれようとしていた。


 ああ、宇宙聖女は、このまま周囲の同胞共々に平らげられてしまうのであろうか!


 否!

 

 断じて否!

 

 希望はまだ残されている!

 

「ううっ……。このままだと理仁亜ちゃんが……! ……ハッ、そうだ! 兎に角今は星永さんに連絡を!」


 この恐ろしい魔物に立ち向かえる唯一人の英傑を、我々は知っている。


 地獄の闇に差し込む一条の光が如き歴戦の古強者、哲人。

 それはまるで、天界から齎された蜘蛛の糸であるかのように約呼の中で存在を激しくアッピルしていた。

 

 この難所なんどころさんを乗り切れるのは、あの人しかいない!

 そう確信した約呼は、なんとか震える手で、そのか細い糸をフルパワーで掴むのであった。

 

 to be continued.... なんじゃあ!

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