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「ええと、鶏肉は、どこにしまったかな……」

 馬鹿でかい冷凍庫から、本日の材料を用意する。使用する食材は、いつも必要最低限。贅沢なことは、言ってはならない。使えるものを、使えるだけ。余すことなく使う。

「しかし、困ったな……。ドーム状の卵から、カレーのルーが出てくるように、だと……?」

 料理を作るのが得意な俺は、カレーぐらいならば簡単に作れる。大雑把な学友とは違い、スパイスの入れ方から米の炊き方まで、全てこだわり抜いている。……本当のことを言うと、元々は料理が大の苦手だった。しかし、如何せん暇でひまで仕方ないのだから、せっかくならば得意になってみようと奮起したのだ。その結果、店が開けるぐらいには、腕を上げたというわけだ。

「とにかく、まずはカレーのルーだ。チキンに合うスパイスを、必要な分だけ用意しよう」

 先ほどまでわふわふ言っていた犬が、尻尾を振りながらやって来る。犬はにおいに敏感だが、俺が料理を始めると、いつも右足にすり寄って来た。

「……そう言えば、肉を使った料理は、随分と久しぶりだな。おまえにも、肉の切れ端を分けてやる」

 俺が犬の頭を撫でると、やつは嬉しそうに「わん」と吠えた。心なしか、いつもより活き活きとしている。

「さて、と。ルーはこれでいいとして、問題は卵だな。上手くドーム状にして、その中にルーを入れる、と……」

 空腹を満たせる程度の米を、電気コンロの上にセットする。ぐつぐつとルーを煮込みながら、俺はドーム状の卵をどうやって作るか、それをずっと考えていた。

「卵を丸く焼くのはできるが……、その中に、ルーを入れなきゃいけないんだよな……。いや、もしかして、信号を聞き間違えたか……?」

 思考に試行を重ねた結果、俺はカレーパンを思い浮かべた。卵白をパンのようにして、スプーン入れて中を割ったら、ルーと黄身が流れるようにしよう……。

「やれやれ……。出来上がったら、あいつに文句を言ってやろう……」

 そう思いながらも、俺は決して、悪い気はしなかった。料理をして気分を紛らわせるのは、純粋に楽しかった。

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