共通の友人が「焼き鳥ジャンケン」をやろうぜって言ってきた

クマ将軍

これで俺はどうやって戦えばいいんだ

(……どうしてこうなった)


 俺は今訳の分からない状況に陥っている。

 丸テーブルを囲む三人の男。

 一人は俺で、残りの二人は後藤の奴が連れて来た赤の他人。

 そう、所謂後藤という共通の友人を通じて知り合った友達の友達という関係だ。


 確か右側に座っているのは斎藤という奴で、左側に座っている男が前原だったか。

 俺達が今、何故こんな事になっているか。

 それも全て共通の友人である後藤のせいだった。


(これも全てアイツが焼き鳥ジャンケンをやろうぜなんて言うから……!!)


 そしてなんでこの状況でいなくなったんだよくそおおおおお!!!

 この気まずい中、どうすれば良いんだよ!!

 焼き鳥ジャンケンって一体なんなんだよ!!

 見ろよ斎藤って人の顔を! あの人も俺と同じでめっちゃ混乱してんじゃねぇか!!


「……!」


 俺は改めて後藤が用意した物を見る。

 目の前には皿が一枚に焼き鳥串が四本。

 皿の隣にはトランプのデッキがあって、そのような状況が二人にもある。

 焼き鳥はまだ分かる。

 焼き鳥ジャンケンって言うから焼き鳥とジャンケンが関わってくるんだろう。

 

(でも何だよトランプって!?)


 何で各自トランプのデッキがあるんだよ!?

 一つだけで十分だろ!?

 それに何で中央に大量のポテトチップスが載せられた大皿があるんだよ!? あれも関係してくるのか!? 来ないのか!? ただのおもてなしか!? どっちだよ!?


(いやダメだ……! 気まずい……気まず過ぎる……!)


 そもそも後藤の関係で集まって来た仲だ。

 いつも突拍子の無い事を言う後藤だから、俺以外の二人も後藤に振り回されて来たに違いない。ならばここは分からないから解散という線で行くかしかない。


 チラッ。

 チラッ。


 よし、斎藤さんは俺と同じ考えだ!

 これなら後腐れなく解散に持ち込める――そう考えた時。


「……それじゃあ始めますかー」

『!?』


 え、ま、前原さん!?

 始める!? 何を!? 焼き鳥ジャンケン!? 何故!?

 そもそもルールが分かるのか!?


「それじゃあ先ずは中央のポテトチップスを取って、ドロー」


 ドロー!? 自分のトランプのカードを!?

 ポテトチップスは関係してたのか!? 麻雀みたいに牌山から麻雀牌を取るルール!?


「……えーっと、それじゃあ僕はこれでターンエンド」


 ターンエンド……え、ターン制……?

 ポテトチップスを取ってトランプのカードをドローして、終わり? 何故?


(いや、待てあれは……!?)


 前原がドローしたカードを表向きに置いている!

 そのカードの絵柄はダイヤの三だ!

 いや待て……どうしてダイヤの三を引いてターンエンドをするんだ? ダイヤの三だと何も出来ないからか……? 逆にトランプのカードで何が出来るんだよ!?


「次は斎藤さんどうぞー」

「!?」


 ターン進行を仕切ったぞ!?

 時計回りで進むというのかこの焼き鳥ジャンケンは!?

 ヤバイ、斎藤さんが困惑しているぞ。

 だが、いや、まさか。斎藤さんが中央のポテチに手を伸ばしている!?

 やるつもりなのか、この焼き鳥ジャンケンを!?


「……ドロー、ダイヤの四」


 ダイヤの四を引き、そのまま固まる斎藤さん。

 そして次の瞬間、斎藤さんはそのままポテトチップスをもう一枚取って自分の皿に置いた!


(何故!?)


 はっ! いや、そうだ。

 気付いたぞこの焼き鳥ジャンケンのルール!

 それは中央のポテチを一番誰よりも多く取った方が勝ち!

 そしてドローしたカードが右隣の人よりも多ければ取れるルールなんだ!


 前原が引いたカードはダイヤの三。

 そして斎藤さんが引いたカードはダイヤの四!

 その差の数は一!

 つまり一枚多くポテトを取れるという事!!


 恐らく斎藤さんは知っていたんだ、この焼き鳥ジャンケンというルールを!

 だけどこの遊びを見ず知らずの人たちでやるのが気まずいから解散しようとしただけなんだ!




 ◇SIDE 斎藤


 え、何これ知らん……。

 適当にやってるけどこれで良いの……?




 ◇SIDE 前原


 あーよかったー……気まずかったから思わず始めちゃったけど大丈夫だよね。

 ルールも分からないし適当にやったけど、誰も言わないし多分これで合ってる筈……。

 ついカードを表向きで置いちゃったけどゲームは進んでるから良いよね……?


 あとこれ、どうやって勝てば良いんだろう。




 ◇




「……ターンエンドで」


 斎藤さんがターンを終わらせた。

 ついに来たぞ俺のターンが! 俺はポテチを一枚取ってカードをドロー!


「!?」


 スペードのエースだと!?

 何てこった他の二人より遥かに小さい数字だ! 最弱と言って良い!

 右隣の人より小さい数字を取ってしまった場合どうすれば良い!?

 まさか自分のポテトを中央に戻すのか?

 いや、自分の皿にポテトは一枚だけ! まさか支払い不能で俺の負けになる……? 負けるのか? かつてゲーセンの大会で優勝した栄光を持つこの俺が?


「はっ!?」


 そうだ。スペードのエースといえば他のトランプルールでは最強の扱い! ならばこのカードにも最強たる効果があるに違いない!


「……スペードのエースの効果発動」

『!?』

「最弱の数字は反転し最強の数字になる……! 俺はこれで中央のポテトから十三枚自分の皿に入れる……!!」


 これでこの場のポテチライフは俺が一位だ……!


「これで俺はターンエンド!」

「……僕のターン、一枚取ってドロー!」


 前原が引いたカードはハートの三。


「……ワンペアの達成で計六枚のポテチを手に入れる」


 ワンペア!? まさか、この焼き鳥ジャンケンにポーカーの要素が!?


「これで僕のターンエンド」

「……ドロー、引いたカードは……スペードのキング」


 この場で一番デカいカードだ……!


「(……何か焼き鳥冷めてるし勿体ないな)……パク」


 !?!?!?

 斎藤さんが、焼き鳥串を一本食べた!? 何故!?

 いや、そうだ……! 焼き鳥串は四本。トランプのスートは四種類。

 それぞれの種類のキングを出せば焼き鳥を食べられるという事!

 そして焼き鳥を全部食べ切った者の方が勝ちなんだ!!


「俺のターンドロー!! 俺はここでハートの八の効果を使い、この場にある全ての手札を捨てる! そして八は無限の象徴……俺は捨てた枚数分のカードをドローする!」

『!?』


 合計で六枚ドロー。

 だがドローしたカードは……ブタだ!

 役なしという事で俺はここでターンエンドしかない!


「……ポリポリ」

「!?」


 前原が……ポテチを食った!?

 何故!? どうして貴重なポテチライフを減らすような真似を!?


「ゴクゴク……」


 今度は斎藤さんが水を飲んだ……だと!?

 一体その行為にどういう意味があるっていうんだ!?


 まずい……この場に置いて俺は圧倒的な素人!

 だが、かつてゲーセンの大会で優勝した栄光を持つ俺に負けは許されない!!


「うおおおおお!!! 行くぞおおおおお!!!」




 ◇




 用事から帰って来た後藤は、そんな彼らの様子を扉を少し開けて見ていた。


「……え、何やってんのあれ……こわっ」

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共通の友人が「焼き鳥ジャンケン」をやろうぜって言ってきた クマ将軍 @kumageneral

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