第五十一集 鍛錬

  6月21日 11:05 洛陽闘技場


  「ではでは皆様!お待たせいたしました!妖術学校実力対抗戦、2日目!第1試合!始め!」


  第1試合、相手は洛陽高校1年5組。洛陽高校は特にこれといって得意な分野はない、だけど逆に言えば全てができるオールラウンダーでもある。それゆえ武術なら接近、陰陽なら遠距離みたいなわかりやすい戦い方はない。


  「こいつ、小賢しい!!」


  そんな感じだから、龍太郎も苦戦するわけだ。相手は最初は近距離で剣で戦っていたが、途中から陰陽を織り交ぜて龍太郎を翻弄している。


  「ちっ、中途半端な距離を取りやがる。だったら!」


  龍太郎が剣を鞘にしまって構えを取った。


  「花速刀・水仙!」


  構えを取った後、気づいたら龍太郎は相手を通り過ぎていて、相手は倒れていた。居合ってすげぇな、剣抜いてねぇだろお前って言いたくなる。


  「距離を取るならこっちから近づけばいいってな。」


  先鋒戦、最初こそは手こずったが、後半で一気に終わらすことが出来た。


  その後の次鋒戦と中堅戦も手こずりはしたが、両方とも勝利に終わった。


  11:40 洛陽闘技場


  休憩、そして他の試合が終わった。


  「いよいよだな、申喰と酉脇のクラスだ。」


  申喰と酉脇に関しては全くわからない。強いて言うなら申喰が二刀流であることしか分からない。そして戦う順番だが、申喰が副将、酉脇が大将だ。実力的に変わらないとは思うけど、申喰のが強そうだったんだけどな、雰囲気的に。


  ただそれまでに順番を回さなければ良いだけのこと、中堅で試合を終わらせられれば問題ない。


  「なにやっとんねん鳥!辰仁なんかに負けよって!」


  「あいつは強すぎるんだッコ…なんならお前も1回やってみろッコ!」


  「んなもんやらんでもわかるわ!わしの圧勝で終わるに決まっとるやろ!」


  「だからその自信はどこから来てるんだッコ!」


  始まる前から喧嘩かよ…って、酉脇が豪に負けた?ってことは今のところ全勝のところは俺たちと豪だけになったということか。ほうほう、これは負けられなくなったな。


  「さあて丑崎はん、次ぁあんたの番や、首洗って待っとき。」


  「あの、戦うの俺だッコ…」


  「うるさいわ鳥!」


  理不尽すぎるだろあれ…


  とにかく、まずは先鋒戦からだ、全ては龍太郎にかかってる。あっ、こんなこと考えてるから龍太郎はあんだけ疲れてたんだな、お疲れ様。


  先鋒戦、豪たちと当たるまで無敗だっただけあって、龍太郎はかなり苦戦を強いられた。それでもうちの龍太郎は期待を裏切ることなく、1勝目を勝ち取ってくれた。


  ただ、続いて次鋒戦と中堅戦。相手も午上と鬼寅と戦ってきたやつらだからか、松永と羽澤が一方的に押されて敗北。


  そして、副将戦。


  「なんや、わしの相手はゴリラかいな。」


  「おうおう、誰がゴリラだ。」


  「お前やお前、わしの相手にお前以外の誰がおるっちゅうんや、アホか?」


  「誰が!アホだってぇぇ!!」


  アホって言われて腹が立ったのか、夏は申喰を急襲した。ただ、申喰はその攻撃を容易く避けた、しかも手をポケットに突っ込んだまんまで。


  「そんなでっかい得物持ってわしを仕留めれる思っとんなら、甘いで。」


  そう言いながら、申喰は腰にかかった2本の剣を抜いた。


  「かかってこいや、干支十二家が1人、申喰藤十郎(さるばみとうじゅうろう)が相手や。」


  「やっと剣を抜いたか、やってやるぜ!」


  申喰の表情は終始変わらない、なんだか冷めた感じの表情だ、昨日見せてくれたちょっとした笑顔が全くない。


  「初夏ノ段・麦の秋風!」


  「申喰二刀流(さるばみにとうりゅう)・猿煌(えんこう)!」


  光だした申喰の剣、雷を纏っているのかなんなのかは分からないけど、夏の攻撃をかき消し、夏はその攻撃を受けて倒れる。


  「ちっ、痛てぇじゃねぇか!」


  「なんや、結構しぶといやないかゴリラ。」


  「だからぁ!誰がゴリラだゴラァ!俺は毎日鍛えてるだけだぁ!」


  それを多分ゴリラだって言ってるんだと思うよ…


  「なめくさんなボケ、わしだって毎日鍛えとるわ!!」


  いや張り合わなくていいだろ別に…


  「おうそうか!なら仲良く出来そうだな!仲夏(ちゅうか)ノ段・黄雀風(こうじゃくふう)!」


  「うっさいわ!一緒にすんなや!申喰二刀流・猿捕茨(さるとりいばら)!」


  「な、なんだこれ!動けねぇ!」


  夏の方天戟と申喰の剣がぶつかった瞬間、夏の動きが止まった。


  「麻痺が付与される技や、思うように動けへんやろ。」


  「だから…なんだ!!」


  「ゴリラやからってなんでもありかてめぇ!」


  夏は痺れて動けないはずなのに動き出した、今なら不意打ちでいける!


  「晩夏ノ段・炎天(えんてん)!!」


  方天戟が燃え盛り、申喰を襲う。だけど申喰は、それすらも分かっていたかのように攻撃を躱した。


  「やるやないか、わしやなかったら避けれてへんでそれ。」


  「なん…だと…」


  「どんなことが来ようと対処する、それができひんかったらわしゃここにおらへんわ。終いや新井夏、わしに剣抜かせた事褒めたるわ。」


  申喰の麻痺がやっと効いてきたのか、夏はそのまま倒れた。そして、俺の番が来ることなく、俺たちは負けた。


  「認めたるで新井夏、ボケやったりゴリラやったり言うてすまんかったのう。」


  それ言っても夏には届いてないけどね…


  「丑崎はん悪いのう、大将まで回さんくて。」


  「なんだよそれ、煽ってるのかよ。」


  「そんなんちゃうで、こんくらいえらい強いクラスやったら、もっと試合見たかっただけや。ほな、決勝でもし会うことがあれば、またよろしゅう頼むわ。帰るで!鳥!」


  「次はちゃんと相手するッコ!じゃあなッコ丑崎!」


  決勝か、俺たちが負けたから、ちょっとは響くんじゃねぇかなぁ…あぁめんどくせぇ…


  12:15 洛陽闘技場


  「1年生の試合も大詰め!最終試合!各校による内輪もめの試合だ!」


  言い方悪すぎるだろ、確かに傍から見たら内輪もめだけどよ。


  「ではでは!妖術学校実力対抗戦、2日目、最終試合!始め!」


  その後の豪達との試合、任田祭での決勝で勝ったのが嘘みたいに、俺たちは先鋒戦、次鋒戦、中堅戦の3戦を取られて、敗北した。

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