第五十集 散歩

  6月20日 15:00 らく道旅館 410号室


  今日の試合は全て終了した。明日に洛陽高校との2試合、そして豪達との試合が終われば、俺らの試合は終わり。あとは全試合が終わるのを待って、決勝と3位決定戦をやる。なんか意外と呆気ないな。


  今のところ全勝の所は俺たち5組と豪たち2組、そして申喰と酉脇がいる洛陽高校1年1組。明日の試合ではっきりと順位が決まる。


  にしても…


  「2人とも、疲れすぎだろ。特に夏、お前龍太郎より試合出てないだろ、そんなに疲れたか?」


  何故か第五班の部屋に来て寝転がってやがる。


  「いやぁ…思ったより相手が強かったからな…」


  確かにそうかもしれないけどな…


  「五十鈴、こいつ頼んでいいか?」


  「分かりました、帰りますよ夏。」


  「あぁ…わかった…」


  そんなに疲れたのか…


  「大谷、龍太郎も頼んだ…」


  「うん、龍太郎も帰るよ!」


  「先鋒戦辛すぎるって…」


  毎回1番最初に戦うんだもんな、仕方ない。


  さてと、明日まではとりあえずもうやることは無いから、ぶらぶら散策でもするか。


  15:10 らく道旅館 ロビー


  とは言うものの、ここら辺の土地勘はないからなぁ、どこかに行くにしても迷子しそうで嫌だし。誰か案内が居ると助かるんだけど。


  「誰ぞと思えば、丑崎はんやないか。」


  ん?この喋り方は。


  「申喰か、ここでなにしてんだ?」


  「なに、暇やからぶらぶらしとっただけや。」


  なるほど、同じというわけか。じゃあちょうどいいし、案内でも頼もうかな。


  「俺もさ、暇でぶらぶらしてた所だからさ、ちょっとここら辺案内してくれない?」


  小戌丸とのやり取り見てると断られそうな感じだけど大丈夫かな…


  「ええで、着いてき。」


  よかったー、こいつもしかしたら優しいやつなのでは?


 15:15 らく道旅館周辺


 そういえばずっと気になってたけど、申喰と小戌丸ってなんであんな仲悪いのかな、聞いてみるか。


  「申喰ってさ、小戌丸と何かあったの?」


  「あぁん?」


  「あっはい、なんでもないです…」


  怖ぇ…聞かなきゃよかったー…


  「別になんもあらへんわ、見かけたらイライラするだけや。」


  「お、おぉ…」


  なんとも言えないこの感じ。


  「申喰家と小戌丸家、昔からこんな感じや。親同士仲悪けれりゃ子同士も同じように仲悪い。やから理由は特にないねん。」


  犬猿の仲とは言ったものの、仲が悪いのはずっと昔からなのか。


  「そんで喧嘩する度、鳥が間に入って止めてくれんねん、あいつにはホンマ頭が上がらへんわ。」


  酉脇が1番大変なポジションなんだな、今朝も大変そうだったし。


  「もうわしの話はええやろ、それよか丑崎はんの話も聞かしてくれや。特に、その角についてや。」


 ストレートに聞いて来たねぇ、いやまあいいんだけどさ。


  「酒呑童子の血筋ってだけだ、角が生えたのは後からだけど。」


  なぜかスっと答えれた、前ならもうちょっとは躊躇ったのに、クラスのみんなのおかげかな。


  「なるほど、妖魔やないならどうでもええわ。妖魔やったら今ここで斬っとるとこやったわ。」


  おっかねぇ…


  その後も歩きながらいろいろ話した。それぞれの高校の話とか、家の話とか。申喰はどうやら今の高校生活に面白さを感じないようだ、平和すぎて平和ボケしそうだと言ってた。俺らの時みたいに、妖魔の1匹や2匹乗り込んで来て欲しいとも言ってた。


  「茨木童子か、ここに来てくれたりせぇへんかのう、そん時はわしがたたっ斬ったるわ。」


  威勢はいいけど、そう簡単にいったら苦労しないんだよなぁこれが。


  「前は撃退出来たけど、あれは全部酒呑様のおかげだ。俺らは正直何も出来てない。」


  「なんや情けない、わしにかかりゃ瞬殺や瞬殺。」


  「それは頼もしいな…」


  本当にそう上手く行けばいいんだけどね。でももし本当に、酒呑様の言う通り、玉藻前がもう一度来ることになったら…その時は…


  「なんや丑崎はん、暗い顔して。」


  「いやなんでもない、今日はありがとう。また明日よろしく頼む。」


  「こちらこそよろしゅう頼むわ、手加減はせぇへんで?」


  「望むところだ。」


  23:00 らく道旅館付近


 深夜、らく道旅館の近くに2人。


  「こんな所に呼び出して、何をするつもりだ。」


  「クハハ!まあまあそんなに怒んなって、源。」


  「それで、何の用だ。」


  「作戦を伝えようと思ってな。」


  源と怪しい者が作戦会議をしていた。


  「決勝戦が始まる前に、俺の仲間が会場に入る。そいつに暴れさせるから、その内に丑崎から童子切を奪え。」


  「そう簡単にいくのか?」


  「心配するな、俺も協力するからよぉ!クハハハ!!」


  「わかった。」


  「じゃあまたな、源。」


 怪しい者は姿を消し、どこかに行ってしまった。


  消えた…か。俺は本当にこれでいいのか?頼光様が丑崎家に託した童子切を、俺が取り返していいのか…


  6月21日 11:00 洛陽闘技場


  「さあさあ皆様!本日は妖術学校実力対抗戦2日目!1年生の試合は今日で終了!残り試合は3試合!現在トップを走るのは3クラス!まずは辰仁豪率いる!任田高校、1年2組!」


  「熱いお出迎えだな!あっはっは!」


  「そして!大将の出番がなんと1度のみ!任田高校、1年5組!」


  みんなが頑張ってくれるから楽してるだけなんだけどね。


  「最後に!我らの希望の星!申喰と酉脇率いる!洛陽高校、1年1組!」


  「今日も勝つで、鳥。」


  「当たり前だッコ。」


  さあ俺らにとっては最終日だ、初戦の相手は洛陽高校1年5組、次に1年1組、そして最後が豪の2組だ。よりによって強い奴らが最後に集まってしまった。でも道はただ1つ、全力で楽しんで、勝つ

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