第四十九集 模倣
6月20日 13:20 洛陽闘技場
いよいよ大将戦、妖術学校実力対抗戦において俺の初陣。相手は福天高校1年1組、干支十二家巳扇家の巳扇律である。
1番問題なのが、あいつの蛇眼(じゃがん)だ。遣われたら即行動不能になりかねないから気をつけなければならない。そして気をつけたところでいつどのタイミングで発動するかわからないから、対処のしようがない。
困ったな、アルティメット困った、このままだと試合にならない。ていうかなんだよ蛇眼って、チートすぎんだろ、もういっその事酒呑様に丸投げしようかな。
「どうしたのですか、丑崎さん、私の蛇の眼が怖いのですか?」
正直怖い。だって対処法がわからないからなぁ!あっはっは!あぁいかんいかん、つい豪の癖が出てしまった。
「まあなにを言ったって、やるっきゃねぇな!」
では手始めに。
「丑火損(ぎゅうかそん)!」
「煌めけ!蛇眼(じゃがん)!」
「なるほどなぁって、ちゃんと言えるじゃねぇか二字熟語!」
「そんなことに構っていられるほど余る欲があるのですね。」
よくわかんねぇなこいつ…
それより、俺の丑火損で出した火だけが石にされた。推測だが、普通に見るだけなら石にされることはなく、石にしようという意識が働いたいて初めて石にされるのだと考えよう。そしてその意識というのがあの掛け声だと思う、蛇眼と叫んだら何かが石にされる、と。
「じゃあ結局無理じゃねぇか。」
あぁもういいや、考えるのはやめだやめ。めんどくせぇ、柄にも無いことをしたわ。
「心を配ることはありませんよ丑崎さん、あなたの心の臓を石にすることはないですから。」
おっと、それは安心した。
「優しいな、巳扇。」
「いえ、それほどでも、ある…ないです。」
いや照れんなよ。
ていうか優しいじゃねぇよ、当たり前だよ当たり前、心臓石になったら死ぬだろ。
「それでも手を加えたり減らしたりはしません!蛇眼!!」
どうする、どこを石にしてくる…わからん!もういい!!
「炎呪符・鬼火(おにび)!」
試しに陰陽を飛ばしてみて、それが石にされるかどうかを見よう。
「そんなもの、意の味がないこと!」
何を言ってるかはよくわからなかったけど、飛ばした鬼火が石になった。なるほど、蛇眼の見た物までを直線で結んだとして、その直線の間に何かが入ると、ターゲットはその間に入った何かになるわけだ。
「よし、炎呪符・乱鬼火(らんきび)!」
大量に出してしまえばあとはどうにかなる。
「意と味がないと言ったはずですよ。」
「なに?」
大量の鬼火が全て石になった。つまり、巳扇が石にしようと意識した物全てが石になるということか。うーん、めんどくせぇ!!
「お前さ、めんどくせぇ能力持ってんな。俺にもくれよ。」
「嫌ですね、石にしますよ?」
「おーとっと、それは勘弁してくれ。」
もうこりゃお手上げかなー、無理じゃん、石にされたらゲームオーバーじゃん、諦めても諦めなくても試合終了じゃん。
「もう終わりですか?ならばこちらから行きますよ!」
おっと、やっと数珠丸を抜いてくれたか。だけど悪いが俺は童子切を抜く訳にはいかない、こんな所で抜いてしまったらあとあと使いづらくなる。でもそれ以外に対処法はないし…ああああああああぁぁぁもういい!めんどくせぇ!
「一牛吼地(いちぎゅうこうち)!」
「なっ!蛇眼!」
「ちぃっ!」
右に避けたけど左手が石にされてしまった、凄い感覚だ。感覚は残ってるけど、全く動かせない、動かせようとしたらチクチクして痛い。
でもこれでわかった、狙った物に向かって一直線に飛んで行くタイプだ。物がズレれば狙いもズレる、ならいつも以上に速く動けばなんとかなる、はず。
「種が分かればなんとかなりそうだな!」
「げれど、それでいつまで持つのですか?私にはこの数珠丸と、蛇眼があります。もはやあなたに勝ち目などないですよ、丑崎さん。投げて降りることをおすすめします。」
「嫌だね。勝ち目があるかないかじゃないんだよ、俺がここに立ってて、お前がそこに立ってる。そんで俺の後ろにはみんながいる、だから俺は降りるわけにはいかないんだよ巳扇。」
我ながら痛い発言をした気がする…
「いいぞ魁紀!かっこいいぞ!」
「魁紀の筋肉も喜んでるぞ!」
やめろお前ら、恥ずかしくなるから…
「という訳だ、これでも大将なんでな、投降は出来ない。巳扇が投降してくれると助かるんだけど?」
「それは不で可で能ですね。」
「あのー、日本語喋ってくれない??」
「蛇眼!!」
「おまっ!!」
あっぶねぇ、右足のつま先が石になってしまった。
「お前それはずるいだろ!」
「話してる最も中で攻めて撃ってはならないという決まりはないですよ?」
いやそういう事じゃねぇよ、嫌なこと言われたからって直ぐに怒んなってことだぞ。
右足の踏み込みはもう出来ない、刻巡は両手で持てない、使える技も制限された。どうすっかなぁ…あっそうだ、人のマネをすることで人は進化する、子供だって大人の素振りを見て成長するんだから、ちょっとくらいパクってもいいよね。
確か、こうして体を捻って突っ込む感じだったかな?
「その構え…まさか!」
「借りるぜ豪!画竜点睛(がりょうてんせい)!!」
踏み込みは左足だから威力は格段に落ちる、そして豪と生徒会長は両手で構えてたが俺は片手。圧倒的に違うのは、俺の干支は丑(うし)であって辰(たつ)ではない。
だからまあそうだな、下位互換と言ってもおこがましいレベルだ。衝撃波と斬撃を使った攻撃なのに全く衝撃がないし、回転が少ないから斬撃もほぼない。もうこれ攻撃なのかなって疑問になる。
「それは!辰仁家の技じゃないですか!」
なんでそこだけちゃんと喋れるんだよ。
「ちっ!蛇眼!」
おっとそれはきついってもんだ、でももう突っ込むことしか出来ないんでね!
「もう石になるなんて知らん!はぁぁぁ!!!」
体の色んな所が石になっていく、感覚は残るけど動かすことは出来ない。あとは慣性に任せるしかない。
「なんで止まらないのですか!」
ははっ、それは俺にもわかんねぇや…
「クソッ…」
倒したのかな…ちょっと体動かないのはしんどいけと…あれ?
「よっと、おお体が動く。なるほど、倒したら石が剥がれるようになってるのか、中々安心できる仕様だ。」
「おぉっと!任田高校1年5組対福天高校1年1組!大将戦までもつれた試合は!任田高校!丑崎魁紀の攻撃で終了したぁ!」
「「魁紀ぃぃぃ!!!」」
「おぉお前ら!抱きつくな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます