第四十八集 猪突猛進
6月20日 12:45 洛陽闘技場
第3試合がもうすぐ始まる、4試合連続で進めるため昼休憩は存在しない、なかなか厳しい日程だ。まあ、俺未だに試合出てないけど。
相手は福天高校(ふくてんこうこう)なんだけど、武術を得意とする高校で、十二家の巳扇律(みおうぎりつ)と亥尾真琴(いおまこと)がいる、2人には特に警戒しないといけない。
巳扇の蛇眼(じゃがん)は見たものを石にできるという伝承で聞くようなことができる。石にすると言っても完全に石にすると対抗戦の規定違反になってしまうから、見たものを石で固めると言った方が正しいかもしれない。
そして亥尾については、わからない。なんでかというと常に何を考えてるかわからないからだ。だってあれだぞ、いきなり豪に求婚するようなやつの思考なんて読めるわけが無いだろ、猪突猛進の権化だろあれ。
この2人が福天高校との2試合目で出てくる、つまりその試合は俺が出ることはほぼ確実、嫌だな。
実力だけで考えた場合、おそらく巳扇が大将に来るだろう、数珠丸(じゅずまる)を持ってるだけで亥尾よりは上だと考えられる。それでも亥尾は侮れない、何も考えずに突っ込んでくるとしても実力はあるはずだ。
「はぁ…考えれば考えるほど頭痛くなるなぁ…」
まあ、巳扇達の前に福天高校の3組が待ってるから、まずはそこに勝たないとね。
「待たせたな諸君!妖術学校実力対抗戦、1日目!第3試合!始め!」
先鋒戦、龍太郎は妖術コースだがほぼほぼ武術と言っても過言ではない。だから相手が武術得意だからと言って、引けを取ることは無かった。圧勝とまでは行かなかったものの、龍太郎の勝利で終わった。
次鋒戦、獅子に変化したにゃーちゃんの攻撃が全部いなされてしまったが、松永の陰陽による援護でなんとか勝利。
中堅戦、これはそもそも相手が羽澤に近づくことすら出来なかったため、羽澤の圧勝であった。
これで勝ち点が9点、今のところ他に全勝してるところは豪達2組、申喰と酉脇がいる洛陽高校1年1組の2つ。続いて福天高校の1年1組が勝ち点6点。このまま勝ち進めれば俺たちは決勝に1歩近づく。
だからとりあえず次も勝たないといけないんだけど…
「先の程ぶりですね、丑崎さん。」
「さっきぶりだな、みお…うああああ!!」
「ガハハ!魁紀だな!!私と結婚しろ!!」
「こ!と!わ!る!!離せ!お前は見境なしに求婚してんのかよ!」
さっき会った時も思ったけど、いきなり抱きついて求婚するとかどんな頭してやがんだこいつ!
「えええええええ!!もう今日だけで4回も振られたぁぁぁぁ!!!」
「無い理(ことわり)ですよ、亥尾さん。いきなり結ぶ婚を求めるなんて。」
4回ってことは、さっき申喰と酉脇にも振られてるのか…てか巳扇、なんだこいつ、何言ってんだ?二字熟語言えないタイプか?それともそう言った方が伝わるとても思ってるのか?無理と求婚でいいじゃねぇか。
「試み合いはまだ先ですので、私は少し休んできますね。ではまた。」
「また後でな!魁紀!!」
「お、おぉ…」
なんだよ試み合いって…
試合までもう少しだ、俺もちょっと休んで集中力を高めないとな。1試合も出てないけど。
13;40 洛陽闘技場
「さてさてさーて!今トップを走るのは3校!我が洛陽高校1年1組!そして任田高校1年2組と1年5組だ!」
豪達と戦うまで、負ける訳にはいかねぇな、頑張るか。
「では!妖術学校実力対抗戦、1日目!最終試合!始め!!」
1つずつ丁寧にやっていきたいところ、まずは龍太郎に賭けるしかない。
先鋒戦、相手は素手、有利と言えば龍太郎が有利だ。
「行くぜぇ!」
「うるせぇなこのハゲ。」
「あぁ?テメェ今なんつった?ハゲって言ったよなぁおい!!」
あ、これはもう龍太郎の勝ちでーす。はい、あいつにハゲって言って許されるの大谷くらいだから、はい。
「な!どこに消えやがったあのハゲ!」
「ここだよ、3枚に下ろしてやってもいいが、これは試合だからな。峰打ちで許してやるよ。花速刀(かそくとう)・三光(さんこう)!」
目の前に急接近した龍太郎の圧勝で試合終了、ダメだよー簡単に人が言われて嫌なことを言っちゃ。これを機に次からは丁寧な言葉遣いをするように。
「全く…なにをしているのですか彼は…」
「でもさでもさ!実際ハゲじゃん!!」
「あぁ??」
亥尾ー、そこら辺でやめとけー、こっちまで聞こえてるぞー。
「あっ!こっち睨んでる!にっげろー!」
「どこに逃げるのですか、あなたの中が堅い戦が残ってますよ。」
「はーい…律って時々何言ってるかよくわかんないよね…」
「なんですか?」
「な、なんでもないよ!へへへ!」
亥尾の方は大丈夫そうだな、一瞬巳扇の目が光ったのはきっと気のせい気のせい。
そして次鋒戦、松永とにゃーちゃんだが、にゃーちゃんの猫又変化が対応されてしまい、その上松永に呪符を使わせないまま松永がダウンしたため、松永の敗北となった。
続いて中堅戦、羽澤対亥尾。
「あ!話に聞いた魁紀と同棲してる羽澤っちだね!よろしく!」
「なんでそんなこと知ってるのかなぁ?」
「羽澤っちのことなら十二家全員知ってるよ!」
「どうして…」
そうなんだよね、お母さんに伝わってるってことはもう既に十二家全員に伝わってるってことなんだよね…あの人たちの情報網には敵わんよ…
「ではよろしくね!羽澤っち!」
亥尾の武器は斧、ただ大きさとしては手斧みたいな小さいものだ。そんな危ない武器どう使っても怪我すると思うんだけど大丈夫なのだろうか。
「うぉぉ!走るぞ走るぞ!」
亥尾が斧を持って走り出した、スピードは速いとは言えない、躱せるくらいには遅い。
「そんなんじゃ当たらないよ!雀呪符(じゃんじゅふ)・一気通貫(いっきつうかん)!」
だけどそれは亥尾には当たらなかった。最初こそは遅かったが、どんどんスピードが上がっていく。
「ハッハーー!!そのままそっくりお返しだ!そんなんじゃ当たらないよ!私に攻撃を当てない限り!私の猪突猛進は止まらないからねぇ!!」
「くそっ!」
その後何度も陰陽で攻撃を試みたが、羽澤の攻撃は1つも当たらなかった。
「攻撃を当てないならこっちから行くよ!出力最低限!猪妖殺法(いのししようさっぽう)・一本背負(いっぽんぜお)い!!」
亥尾は羽澤に急接近し、胸ぐらを掴んで持ち上げ、地面に叩きつけた。
そのまま羽澤に起き上がれる気配もなく、ダウン。
「えっへん!勝利!!ブイブイ!!」
中堅戦は亥尾の勝利で終わった、ずっとただ走っていただけなのに羽澤の攻撃を全て避け切った、やはり十二家のやつは一筋縄じゃいかんな。
「みんなごめーーん!!!」
「大丈夫だ羽澤、次はあの筋肉ゴリラがなんとかしてくれるよ。」
そう、夏なら副将戦くらい落とさない、はず…
「さあ行くぜぇ!今日も俺の筋肉は熱いぜ!」
暑苦しいうるさい。
「ほら、あんな感じだから大丈夫だ。」
「うん、応援する…」
よし。
「こっちももうあとが無いんでな、勝たせてもらうぜ!燃えろ筋肉!燃えろ俺の夏!!」
何が俺の夏だ、あいつ最近キャラブレブレじゃね?
「なぁ魁紀、夏のやつ大丈夫か?」
「ちょうど俺も今心配してたところだ、あいつのキャラ大丈夫だよな?」
「わからん、最近は筋肉やら夏やら言い出してるし。」
「龍太郎はそうならないでくれよ。」
「いや流石に俺はそうならねぇよ。」
夏を他所に、男2人でくだらないことを語った。
「よし勝ったぁぁ!」
「「お、なんかいつの間に勝ってる。」」
龍太郎と話してる最中に夏が勝っていた。全く、誰にも試合風景伝えれなかったじゃねぇか。
「お前らもっと俺の活躍をちゃんと見ろよ!あとこの筋肉を!」
そんなカッチカチだぞみたいに言われてもなぁ…
まあともかく、これで2対2だ、ようやく俺の出番ってわけだ。
「やっと私の出る番ですね、手を加えたり減らしたりしないので、覚えて悟ってください。」
だから何言ってんだお前。
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