第四十二集 任田祭終幕
5月21日 10:00 任田高校 グラウンド(観客席) 羽澤幽奈サイド
今日は任田祭最終日、3年生の試合だ。今年が最後というのもあってか、3年生の皆さんはとてもやる気に満ちている、特に生徒会長の辰仁さん、殺気のような気迫だ。ちなみに魁紀と龍太郎君は上手に焼けすぎたから、私、羽澤幽奈が代わりに話してるよ!
「ところで羽澤、2人はどうした…」
「ほら、あそこで焦げて寝てるでしょ!今日はよろしくね、解説の夏君!」
「あ、あぁ…一体何があったんだ…」
女の子の下着を触るということはこういうことになるんだぞ、男の子諸君は気をつけるようにね!
10:00 任田高校 グラウンド(観客席) 丑崎魁紀サイド
あぁ…熱い…これで火傷まで行ってないのが不幸中の幸いと言ったところか…
羽澤のやつ…手加減を知らないのか…?
「今…どうなってる…グラウンドか…」
なるほど、ちゃんと学校まで来れてるようだけど、歩いてきた記憶が無い…
「お!魁紀起きたの?」
羽澤…そんな笑顔で見るな…昨夜焼かれたことを思い出す…
「ここはどこ…俺は誰…」
「お前は龍太郎だ…」
「そうか俺は龍太郎…お前は魁紀か…」
「そうだ…」
何だこのしょうもない会話は…でも龍太郎も意識があってよかった、死んだらどうしようかと思った。
「あっはっは!なんて格好で寝てるんだ魁紀!」
「うるせぇ…いいから卯道を呼んでくれ…ダメージが酷い…」
「任せろ!」
豪に卯道を呼んでもらって、回復してもらった。全く、癒呪符が使えるやつは凄いな、あのダメージが一瞬で治った。
「2人とも、大丈夫でしたか?」
「もう大丈夫だ、ありがとうな卯道。」
「おー!ありがとうさん!」
よし、これで試合を見れる、特に1組の豪の姉、辰仁鱗の試合は絶対に見なければ。
13:00 任田高校 グラウンド(観客席)
午前の試合は終了、残りは決勝戦、1組対5組。
「いよいよだな、姉上の最後の任田祭。」
「なぁ豪、お前の姉さんどんだけ強いの?」
「そうだな、一言で表すなら、最強だ!あっはっは!」
なるほど、今までの俺の認識が間違ってたということか。てっきり鬼丸が豪の手に渡ったから最強の座も変わったのかと思った。
「俺が任田に入学するまでは、鬼丸は姉上が持っていたが、入学祝いとして俺にくれたのだ。だが姉上は鬼丸がなくとも十分最強の呼び名に相応しい。ここだけの話、姉上との一騎打ちでは1度も勝ったことがないぞ、あっはっは!」
それだけお姉さんが強いということか、なるほど怖い。
「先鋒戦を始める!両者前へ!」
「あっはっは!やはり姉上の考えてることはわからん!いきなり先鋒で出てくるとは思わなかったぞ!」
確かに、1番の実力を持ってるなら大将のはずなんだけど、なぜ今出てくる。
「校長先生、1つわがままを許していただきたい。」
唐突になんだ?
「いいでしょう、言ってご覧なさい。」
「ありがとうございます。では3年5組の皆さん、全員でかかってきて下さい、私一人が相手をします!」
「はははっ…あっはっは!さすがだ姉上!考えてることがわからん!」
「でもよ豪、これはさすがになめすぎじゃないか?」
いくら許されるとしても5組の人達のプライドがだな。
「姉上なら問題ないさ、これまでに1度も虚言を吐いたことがないからな、絶対やれるさ。」
「わかりました、ただし辰仁さん、あなたが負けた時は1組の敗北、そして対抗戦への出場を取り消しさせていただきますが、よろしいですか?」
「はい、構いません。」
「よろしい、では始めなさい。」
許されちゃったよ、ただお姉さんの気迫は変わらないどころかさっきより増してる。
「それでは、辰仁鱗(たつにりん) VS 5組!始め!」
「さぁ、見ものだぞ、魁紀!」
「我が辰仁鱗の名にかけて!行くよ無双丸、参る!」
薙刀、名前は無双丸。聞いたことないけど、きっと相当な業物なんだろう。
「無双丸、我が家に伝わる名器だ。剣ではないから天下五剣の名に連なることはないが、それに匹敵するレベルの業物だ。そして使いづらいと思われる薙刀だが、姉上にとってはおもちゃに等しい。」
「おもちゃって…遊んでても使えるってか?」
「そうではない、姉上はかなり要領が良いのだ。なにかをやり始めたら、1時間以内には常人のレベルを超える。」
「それ、人間なのか?」
「そうだな、俺も時々疑うよ、あっはっは!」
あっはっは!じゃねぇって。やばい姉を持ったもんだな。
「どうした5組、かかってこないのか、相手は1人だぞ!」
挑発、ではない、もはや威圧だ。
「ならばこちらから行くぞ!辰神(たつがみ)の普剱瓏(ふけんろう)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の怒り!轟かせ!辰気(りゅうき)!」
え?雷?雲ひとつないのに雷の音が…
「やれやれ、さすがは姉上だ、俺とはレベルが違う。」
「どういうことだ?」
「姉上の辰気(りゅうき)こそ本物の辰気(りゅうき)だ。本当の力は自然にも影響を及ぼす、姉上の力はその次元に達しているのだ。俺も頑張らなければな。」
なるほど、つまり俺もまだまだ強くなれるということだな、いいことを知った。
「この姿こそ、我が力の全て!参る!画竜点睛(がりょうてんせい)!」
お姉さんは回転しながら5組に突っ込んで行く、回転は早すぎるのかなんなのか、雷と風を纏う。あれはもはや天変地異のレベルだ、やられたらただじゃ済まない。この後の片付けが大変そうだ…
衝突時に爆発が起き、煙りが落ち着くと、そこには立っている女性1人、倒れてる人5人の姿が見えた。
「圧倒的!!勝者!辰仁鱗!!」
「私は、まだ止まる訳にはいかないのだ、済まないな、お前たち。」
圧倒的だった、これがうちの生徒会長様か。
「どうだ魁紀、俺の姉上は。1度やり合って見たくはないか?」
「勘弁してくれ、あんなのどうやって戦えばいいんだよ。」
「そうだな、俺もわからん!あっはっは!」
お前もどうにか出来ないやつを俺がどうにか出来るわけないじゃん。
「これにて!任田祭の全試合が終了しました!みなさんご苦労さまでした!そして対抗戦への切符を手に入れたクラスのみなさん!対抗戦は6月末から始まります、それまでにみなさんで切磋琢磨し、連覇を目指して頑張ってください!以上!」
初の任田祭が終了し、初の対抗戦が待っている。1ヶ月も先なのか、待ち遠しいのか全然待ってないのか、でも楽しみなのは確かだ。他の十二家の奴らにも会えるしな。
「では校長先生の話です、校長先生、よろしくお願いします。」
「皆さん、任田祭どうもご苦労さまでした。皆さんの戦いぶりは、とても見応えがありました。そして対抗戦に出場するクラスのみなさん、我が校の代表として、誇りのある戦いを。私からは以上です、皆さん、本当にお疲れ様でした。」
暖かい拍手が校長先生に送られた。本当に3日間疲れたよ、戦った後に新居の片付け。次の日には焼かれるんだもんな、わけわからないよ。
「ではな魁紀、俺は帰るぞ。またどこかでな!あっはっは!」
いや学校で会うだろ。
「さてと、俺も帰るとするか。」
「魁紀帰るの?じゃあ一緒に帰ろっか!」
「一緒に帰るも何も家同じだろ。」
「全く魁紀君は、そんなこと言ってると、女の子が傷つくかもしれないんだぞ?」
「なんでだよ、悪口とか言ってないだろ。」
「はぁ…こりゃ魁紀君のことが好きになった子は大変そうだねぇ…」
訳の分からんことを。
ともかく任田祭はこれにて終幕、俺たち1年5組は対抗戦が控えてる。それまでの予定は分からないけど、通常授業と訓練は欠かせないだろう。俺は師匠の修行もあるしね…
「ここまで来たんだ、やるからには、対抗戦のてっぺん取るぜ!」
17:00 姫路城 天守閣
「もうすぐやな、対抗戦。」
「そうですわね、今年もこの時期になってきましたわ。」
「今度は失敗しいひんでな、茨木。」
「クハハッ、お任せを。」
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