第三十六集 復活
5月20日 13:00 任田高校 グラウンド(観客席)
食堂から戻ってきたら、1組と2組の団体戦が行われていた、勝敗は4対5で2組が優勢だ。予想していたより拮抗してる、だけど豪がいるなら負けることはそうそうないだろ。
「あっはっは!さすがに強いな!花奈、張璇、宗則!」
どうやら豪も少しは手こずってるようだ、だけど凄い余裕そうに見える。
「だが俺は対抗戦に出たいのでな!勝たせてもらう!」
3組相手に使った辰圧(りゅうあつ)の構えじゃない、また別のものか。
「行くぞ鬼丸!辰星光底(りゅうせいこうてい)!」
流星のように一瞬の閃光のような斬撃だった、張璇だけギリギリで受け止めたようだけど、他の2人はダウンだ、これで4対7、2組の勝ちだな。
「さすがは辰仁殿…強い…手合わせできて…よかった…」
バタッと、張璇も倒れた。
「これにて決着!8対4で2組の勝利!」
「あっはっは!」
化け物じみた強さだ、決勝でまたアイツらとやり合うのか、勝ちたいは勝ちたいが、現実はそう甘くない、どうしたものかな。
「少し休憩を挟み、決勝を行いたいと思います、2組と5組のみなさんは準備をお願いします。」
いよいよだな、豪達との決戦だ。
「みんな、集まってくれ。」
根元先生のお呼びだ、集合集合ー。
「いいかみんな、相手はまたあの2組だ。」
「「全力で楽しんでこい。」」
もはやクラス全員分かっていた。
「いやそうなんだけど、勝ち負けは気にするなとはもう言わん、勝ってこい、その上で全力で楽しんでこい!いいな!」
「「はい!」」
「よし、先生は観客席で応援してるからな!」
その一言さえなければかっこよく終わったのに、もったいない。
13:30 任田高校 グラウンド
「では1年生の決勝戦を始めます。そして今年からは、決勝戦だけ特別ルールで行いたいと思います。」
特別ルールだと、なんだなんだ、何も聞いてないぞ。
「各クラスから5人、先鋒から大将を決めて3本先取の試合を行います。従って、今から2組と5組のみなさんには、クラスから5人選抜して頂きます。」
こういう時素直に班長5人にすれば1番いいと思うけど、羽澤が居ないんだよな、どうしようか。2組は確実に卯道以外の十二家の奴らが出てくる、龍太郎は確実に子浦とやりたがるだろうね。そんで相性とかを考えると小犬丸の相手は松永だ、ほぼ勝ち確。残りは…
「みんな、もう1回集まってくれ、作戦会議を始めるぞ。」
根元先生からの招集だ、こればかしはちゃんとみんなで決めないと勝てないからな。
「先鋒から大将、合計で5人を決めるんだけど、まず大将は丑崎さん、お前だ。他に文句のある人はいるか?」
「いやいやいやいや、文句大ありですよ、なんで俺なんですか。」
「辰仁さんの相手に丑崎さんが1番適任だからだ、はいじゃあ大将は丑崎さんね、次は先鋒から順番に決めてくぞー。」
この反論を許さないこの感じ、やれってことか…はいはい、わかりましたよ、やればいいんでしょ…
「先鋒は田口さん。2組なら確実に子浦さんを最初に出してくる、田口さんもリベンジしたいでしょ?」
「ああ、やってやる!」
リベンジのチャンス到来、ってところか。
「次鋒は松永さん。相手が小犬丸さんだったら確実に勝てるけど、たぶん午上さんか鬼寅さんが出てくる、そこに松永さんの猫又をぶつける。やれるか?」
「はい、任せてください。頑張ろうね、にゃーちゃん。」
「にゃおー。」
小犬丸なら副将辺りに来るだろう、実際に見たことは無いけど、実力的に鬼寅より上だと思う。
「中堅は…」
「中堅は、私にやらせてください。」
この声は…
「羽澤さん!もう大丈夫なのか!」
羽澤だと、いつの間に来ていたんだ?
「はい、私ならもう大丈夫です。それよりも…丑崎、今までの事、本当にごめんなさい。許してなんて言わない、ていうか言えない、だからせめて償わせて、そのために私はここに帰ってきた、第三班班長、羽澤幽奈(はざわゆうな)として。」
正直もう気にしてなかった。最初に突っかかってきたり、模擬戦で殺されかけたり、なんなら最後実際に殺されそうになったし。でもあの時の羽澤を見たら、そんなことどうでも良くなった、家族のためだもん、よく分かるよ。
「もう気にしてない、償いなんてしなくてもいい、だから今度はちゃんとみんな仲良くやりたい、そう思ってる。」
今は本当にそんなことでいいんだ、クラスが成績で分けられただろうと、俺を殺すために同じクラスにされただろうと、今あるこのクラスがいいんだ。みんなバカして、騒いで、んで仲良く試合に勝って次に進む、そんな学生生活がいいんだ。
「ありがとう…」
うん、今はこれでいい。
「それと卯道さんからの伝言なんだけど、私の家がもう茨木童子に破壊されていたらしいから、しばらくは丑崎の家に泊めてもらってって。」
「は?」
待て、どうなってんだ。卯道さん、あんたにはお世話になってるけど、ここまでやる義理はないんだけれども!?!?
「というわけでよろしくね、魁紀!」
「い、いや、俺聞いてない…」
「だって今話したからね。」
「違うそうじゃない…ええとそうだ!うちの親は…」
「それならもう卯道さんから話が行ったよ、快く同意してくれたって。」
何してんだよお母さん!まだあなたの子供はただの男子高校生なんだよ!?いいの!?違う家の女の子なんて家に連れ込んで!しかも親が!
「あぁ…わかった…よろしく…」
「いいな、俺も魁紀の家行ってみたい。」
「私も、行ってみたいな。」
「夏、南江、今は黙ってて、脳内整理が出来てないから。」
まじで、え?なんで?どうして?
「話は終わったかな、じゃあ中堅は羽澤さんということで、次に副将だが、新井さん、お前だ。」
「よっしゃ!やってやるぜ!」
「もともと南江さんに中堅をやらせようと思ったんだけど、羽澤さんがせっかく帰ってきて自分からやってくれると言ってくれたから、今回は我慢してね。」
「いえいえ!私経験不足ですし、あとはうちの魁紀君がやってくれますから!」
羽澤が…うちの家に…
「というわけだ、先鋒田口さん、次鋒松永さん、中堅羽澤さん、副将新井さん、大将丑崎さん。以上5人で決勝に向かう!」
「「おー!」」
大将なんて柄じゃないんだけどなぁ…それよりも羽澤がうちの家に…
「準備はよろしいでしょうか、これより、1年生の決勝戦を始める!この試合の結果次第で、対抗戦の組み合わせが決まる!」
実況の人の口調唐突に変わるじゃん、スイッチが入ったのか。しかも結果次第で組み合わせが決まるか、あぁなんかあの感じかな、他のとこの1位とうちの2位が戦う、みたいな。説明が下手くそすぎてしんどい。
「では先鋒戦を始める、両者前へ!」
「ヒッヒッヒッ!また会いましたね、田口龍太郎。」
「あぁ、会いたかったぞ、子浦。」
頼んだぜ龍太郎、先鋒の勝ち負けでこの戦いの勝敗が大きく変わることもある、頑張れ!
「始め!」
「ヒッヒッヒッ!罠(わな)展開!」
「また罠か、だけどそんなもん知ったことか!」
あのバカまた突っ込むつもりか、前にあれだけやられてたじゃん。
「ほら、そこにはもう罠が張られてますよ?」
「そうかい!だが知らん!」
爆発が起きたけど、龍太郎が怯むことは無い。
「ではこうしましょう、あなたをなめたようなことはもうしません、全力で行かさせて貰います。」
子浦の妖気が増えていく、あれが来る!
「子神(ねがみ)の魕理孔(きりく)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の悟り!騙れ(かたれ)!子気(そき)!」
なんか、何とも言えない見た目になったな。鼠(ねずみ)なんだろうけど、なんか子浦には似合わないあの耳と尻尾…笑っちゃいけないのは分かってるけど、笑いそうになるのは許して…
「なんだその見た目は、やっぱりなめてるのか?」
「そんなわけあるはずがないじゃないですか、言ったはずです、なめたようなことはもうしませんと。それに私はこの姿になるのは嫌いなのですよ、見た目が微妙すぎるからです!なので素早く決着をつけさせて頂きます!」
「ははっ!そうかい!決着つけられるのは同意だ、もちろん俺の勝利をもってして決着をつける!」
龍太郎も刀を抜いた、そして刀からも妖気が溢れ出る、妖刀・花怨(かえん)である。
「その刀、確かに強力でした、認めましょう。ですが、此度は私が勝ちます。」
「ならやってみろよ、まあ勝つのは俺だがな!」
「行きますよ、全罠射出(ぜんびんしゃしゅつ)!鼠花火(ねずみはなび)!」
爆発する罠が龍太郎を襲う、花火と言う割には綺麗じゃないが。
「そんなもん、避ける必要はねぇな!怨(えん)・花速刀(かそくとう)・鳳仙花(ほうせんか)!」
龍太郎が放った斬撃は、子浦の爆発に触れることなく、子浦に向かって行く。このまま当たれば確実に子浦はやれる。
「そう来ると思いましたよ、鼠壁(ねずみかべ)!」
子浦の目の前に網の壁が現れた、簡単に斬れるような網ではないと思うが、龍太郎の斬撃で斬れるのか。
「これで終わりですよ!田口龍太郎!鼠鋏(ねずみばさみ)!」
龍太郎を囲うように周りにはさみのようなもどが現れる。
「そうするだろうな、だが問題は無い!もういっちょ!怨(えん)・花速刀(かそくとう)・鳳仙花(ほうせんか)!」
鳳仙花をもう一度放ち、斬撃が斬撃を押す。すると斬撃は、いとも簡単に鼠壁を斬り裂いた。
「ヒッヒッヒッ、上手くいかないものですね、田口龍太郎。」
子浦が後方に吹っ飛ばされ、ダウン。同時に鼠鋏も消滅した、あと数秒あれば当たっていただろう。
「子浦ダウン!勝者、田口!」
「しゃあ!」
歓声が湧く、なるほど、これはこれで悪くないな。こんだけ人が見ているということは、歓声次第でやる気が漲るというものだ。
「続いて次鋒戦、両者前へ!」
俺まで順番が来てくれればいいんだけど、正直来て欲しくない、俺の番が来る前にみんなに勝って欲しい…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます