第三十四集 任田祭開幕
5月20日 10:00 任田高校 グラウンド
任田祭当日、会場は任田高校グラウンド。待てよ、こんな人数の前で試合するのか、完全に忘れていたが2、3年生もいるんだった、しまった…
「おいおい魁紀!どうした!待ちに待った任田祭だぞ!」
「お前は楽しそうだな夏。」
「当たり前だろ!学校のみんなの前で実力を見せれるんだぞ!」
うん、本人が良ければ全てよしってやつだ。
「俺は人の前に出るのは苦手なんだ、4組戦は任せたぞ、俺は後ろで見てるから。」
「おーよ!任せろ!」
人の前に出るのが好きな人間にはちゃんと前に出てもらおう、そして俺はサボる。
「それより龍太郎、もう大丈夫なのか?」
「あぁもう大丈夫だ、今度こそあの子浦を完膚なきまでに叩き潰してやるぜ。」
まあ子浦が本気を出したらどうなるんだろう、なんて考えるのは野暮だな。龍太郎だって強いんだから、丑気を使わなかった俺とほぼ互角だしね。
「今日も妖刀を持ってきてるのか?」
「そうだ、そろそろこいつに慣れないといけないからな。」
妖刀(ようとう)・花怨(かえん)、どういう由来かは知らないけど、花の怨霊でも宿ってるのかどうなのか。
そして前に龍太郎が使っていた技、怨(えん)・花速刀(かそくとう)・水仙(すいせん)。居合の技だけど龍太郎がその場から動くことは無かった、つまり妖気を纏った斬撃を飛ばしていたのだろう。
あと心配なのは、まだ帰ってこない羽澤だ。もうあれから3週間も経つ、まだ帰って来れない程精神がやられていたのだろう。
何はともあれ今日が本番だ、練習でやれた以上のことをここでやらなきゃな。
「生徒全員、待機場所に集まって下さい。校長先生と生徒会長からのお話があります。」
アナウンスが入り、みんな各クラスの待機場所に行った。開会の言葉的なあれか、長くなるのは嫌だな…
「みなさんおはようございます、校長の藤原蓮火です。」
今日は頑張ってくださいで終わらないかなぁ。
「まずはお詫びの言葉を、1年5組の皆さん、例の件について誠に申し訳ございませんでした。私としたことが妖魔の悪巧みを許してしまい、今にも責任を取って校長を辞任したいところです。」
またそんな話か、もう根元先生が謝ってくれたから気にしてないんだけど。
「お話中失礼します、1年5組総班長の五十鈴琴里と申します。その件ですが、もう私たちは誰一人気にしていません。仲間の1人が未だに帰って来れないこと以外に心配事はしてませんし、根元先生がもう既にその件について謝罪してくれました。なので校長先生もそんなことを言わないでください。失礼しました。」
さすがは我らが総班長、もはや代弁者である。
「ありがとう五十鈴さん、お言葉に甘えてもう謝罪はしません。ではみなさん、1年に1度しかない戦いの祭典、任田祭を楽しんでください。3年生は此度で最後、1年生は初めてなので是非楽しんでください。」
なんか途中から近所のおばちゃんみたいなテンションになったけどこれが普通なのか?
「校長先生、ありがとうございました。続きまして、生徒会長、辰仁さんのお話です。」
「みなさんおはようございます。生徒会長の辰仁鱗です。1年5組のみなさん、私からも謝罪を、申し訳ございませんでした。次にもし何かありましたら、私かそこの豪を呼んでください、力になります。」
さりげなく豪を巻き込んだなこの姉上、あと別に何かあっても呼ばねぇよ。
「今年は私たち3年生は最後の任田祭となりますので、みんな張り切って参りましょう。そして代表となった2クラスには是非対抗戦でも頑張っていただきたいと思っております。今年も連覇を目指してやって頂きたい。」
連覇ってことは去年優勝してんのかよ、どんなメンツが揃ってるのやら。
「あっはっは!俺も頑張りますよ姉上!」
「豪、あなたは黙っていなさい。」
「はっ!はい!」
あの豪でも太刀打ちできない姉上なのかよ、なに、怖すぎない?
「というわけで、各学年から2クラスずつ代表クラスが決まりますので、みなさんはせいぜい頑張ってください。私からは以上です。」
あの高圧的な態度は前からそうだったのか、てっきり茨木童子がそうさせたと思っていたけどそんなこと無かったみたい。
「辰仁さん、ありがとうございました。それでは1年生から順番に試合を行っていきますので、1年生は準備をお願いします。」
よりによって俺らからかよ、でも順番的に俺らは2試合目かな、それより時間的に一日で終わるのかこれ?
10:15 任田高校 グラウンド(観客席)
「第1試合、1年2組 VS 1年3組、武術代表、前へ。」
早速始まってしまった。え、3人一気に出てくる感じなのね、3人がそれぞれ違う所で戦う感じ、はいはいよく分かりました。
「始め!」
2組の武術代表つったら午上(うまがみ)が居たな、まあ落とすことは無いだろ。こんなこと言ってるとフラグみたいに感じるかもしれないがそんなことない、十二家の者が特に気を抜いてる時じゃない限り問題ない。
5分後
実力差がありすぎるのか一瞬で終了、武術代表は2組の全勝であった。
「次、陰陽代表、前へ。」
陰陽は想像力だって根元先生が言ってた、既存の術より強い術とか作ってみたいけど、俺には無理だ。
「始め!」
爆発が起きた、爆風で何も見えん、どっちが放ったのかもわからん。
「おっとこれは!2組全員ダウン!」
おおお凄い、2組の全員が負けたか、3組は呪符に全てかけた感じなのかな。前から思っていたけどこの学校って陰陽弱いよな。
「次、妖術代表、前へ。」
子浦は無事そうだな、小犬丸はにゃーちゃんがいないからたぶんちゃんと戦ってくれるはず。
「ヒッヒッヒッ、田口龍太郎、待っていなさい、必ず私が!」
「また…にゃーちゃんをもふもふしたいです…」
ちゃんと戦うんかな…
「始め!」
「あなた達に構ってる暇はないのですよ!」
「オイラと大典太の力、ここで示しましょう!」
子浦はいつも通りだとして、小犬丸はようやくやる気になった感じだな。
数分後
「3組全員ダウン!」
2組の3人の勝ち、団体戦で全員倒されなければ負けることは無いか。団体戦は練習の時とは違い、倒れた人数分点数が入る。じゃなきゃ同点とかになると決着つかないからね。それでも全員倒れた場合は、新たに団体戦メンバーを選んで再戦するかそのまま再戦するかのどっちかだ。ちなみに決着着くまで続くらしい。
「次、団体戦代表、前へ。」
いよいよ本命の登場だ、辰仁豪、卯道結菜、鬼寅真由。この3人を突破するのは至難の業だ、さあ3組はどう戦う。
「始め!」
「あっはっは!辰圧(りゅうあつ)!」
一瞬の風が走り、そして3組全員が倒れた、相変わらずのチートっぷりだ。
「なんと!一瞬!3組全員ダウン!これにて決着、9対3で2組の勝利!」
圧倒的と言わざるを得ないな。
「次に第2試合を始めますので、4組と5組のみなさんは準備してください。」
次は俺らか、まあ油断しなければ勝てないことは無いだろ。
「5組のみなさん、集まって頂けないでしょうか。」
五十鈴か、どうしたどうした、今更になって全員集めるなんて。
「全員集まりましたね、では、ゴホン。い、いよいよ本番の任田祭です、今までにれ、練習してきたことを、思う存分発揮しみゃしょ…」
噛んだな今、俺は聞き逃さないからな。
「発揮しましょう!」
「「おお!」」
言い直したぁ!まあこれこそ総班長って感じの振る舞いだな、あと緊張してるのも仕方ないね、こんな時だし。
「では、参りましょう!」
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