第三十二集 リベンジ
5月17日 10:00 討魔酒場 訓練場
なぜ日付がこんなに進んでるかと言うと、豪と戦ったあと思いっきりくたばったからである。頭のネジが飛んだのかどうかは知らんが、豪のやつがこんなに戦えるのは久しぶりだって言って夜中まで付き合わされた。
そこまではいいとして、終わったし大浴場でも行こうと思ったらもう既に時間外らしく、それに絶望した俺はそのまま大浴場の前で倒れて寝込んだらしい。なおその後は五十鈴が部屋まで運んでくれた、さすが五十鈴、いつも夏を運んでるだけはある。
それはさておき、任田祭前の最後の練習日、2組にリベンジする日だ。今度こそはボコボコにしてやるぜ。
「よしお前ら、2日間みんないろいろ練習してきたと思うから心配はしてない、言いたいことは1つ、本気で楽しんでこい!」
「「おー!」」
「あっはっは!相手さんはだいぶやる気のようだ、俺たちも負けていられない、行くぞ!」
「「おー!」」
本番前最後の練習だ、楽しませてもらうぜ!
10:10 討魔酒場 訓練場(観客席)
「では第1試合、午上蘭(うまがみらん) VS 日高紀衣(ひだかのりえ)!始め!」
「午上さ〜ん、今回もよろしくね〜。」
「その喋り方、どうにかならないわけ?」
「昔からだから〜、どうにもならないね〜。」
「あっそ、前みたいにつまんねぇことしたら、今度こそ痕(あと)付けるからな。」
うわこっわ、痕付けるって女子にとっちゃやばいでしょ。
「できるもんならね〜。」
「へー、2日経って言うようになったじゃん。」
2人の舌戦が続く、口喧嘩よりも普通の喧嘩のが見たいんですけどーってそういうことじゃない、早く2日間の成果というものが見たいのですよ。
「じゃああたしからやらせてもらうよ!それ!」
鞭が飛び出る、前と同じ戦法なら鞭で動きを制限して、そこからの鞭による乱舞って感じなのだが。
「そのパタ〜ン、もう効かないよ〜。」
そう言いながら足に鞭をわざと巻いて午上の動きを止めた。これは凄い、相手の動きを逆手に取って動きを制限した。
「へー、やるじゃん。でもあたしには意味ないけど!」
午上は鞭をそのまま引っ張り、日高を回転させて空中へ浮かせた。
「お〜っと、だけど〜、これも効かないよ〜。」
体幹が凄すぎる、回転した後綺麗に着地した。
「今度は〜、私の番〜!鷲勇脚(しゅうゆうきゃく)!」
両手で体を支え、両足を回転させて攻撃する足技、スカートの中が見えてしまうのではないかと心配していたがスパッツでした。ちょっと残念。
「前よりは面白いじゃん!」
2人ともなんやかんや楽しそうでなによりだ。
10:20 討魔酒場 訓練場(観客席)
その後10数分試合は続いたが、日高が先に力尽きたため、午上の勝利となった。
「あんたなかなかやるようになったじゃん、褒めてやるよ。」
「ありが…とう〜…」
「その喋り方だけはどうにもならないわけね。」
ここからはハイライト、第2試合、真田克幸(さなだかつゆき) VS 早川翠(はやかわみどり)、真田はなんとあの真田幸村の兄、真田信之の子孫らしい。早川は前回手も足も出なかったが、今回は勝ってみせた。
第3試合、切久保栄蔵(きりくぼえいぞう) VS 大谷朋実(おおたにともみ)、こちらも大谷が善戦したものの、27分を経て敗北。
陰陽代表第1試合、射越雅也(いこしまさや) VS 新谷圭(しんたにけい)、元々中田だったが新谷に変わった。この試合は先生が狙ったのかどうか分からないけど、射越が水系統の陰陽を得意としているが、そこに雷系統の陰陽が得意な新谷をぶつけた。その結果、10分もしないうち、新谷の勝利となった。
第2試合、小ヶ倉魚子(こがくらななこ) VS 井上七海(いのうえななみ)、今度はこっちが属性不利だったため、井上の敗北。
第3試合、晩田凛花(ばんだりんか) VS 水間氷(みずまひょう)、元々松田だったが、水間と交代。水間の得意な陰陽があの雪代と同じ氷だったおかげで、危なげなく勝てた。
ここまでの戦果は3勝3敗、前回とは大違いだ。根元先生がメンバーを入れ替えたおかげもあるし、みんなの実力が上がったってことだ。
妖術代表第1試合、これは龍太郎と子浦が2人ともまだ戦える状態ではなかったため、無効試合となった。
第2試合、鵜狩茂喜(うがりしげき) VS 南江遥(なんえはるか)、柿原の代わりに南江が入り、班長の意地なのか、最後に渾身の一撃を鵜狩に入れることができ、勝利した。
第3試合、小戌丸正(こいぬまるただし) VS 松永茉己(まつながまみ)、さすがに前みたいに小犬丸がずっとにゃーちゃんを撫でて終わることはないと思っていたが、やはりにゃーちゃんの誘惑が強かったか、小犬丸は全く集中出来ずに敗北。
13:00 討魔酒場 食堂
「いいぞみんな!勝ち越したぞ!これで団体戦の結果はどうあれ、練習で2組に勝ったぞ!」
もう既に5勝取った、あとは午後の団体戦、これはさすがに勝てないとは思うけど勝ちには行く。
問題は豪と鬼寅だ、2人の火力に押されたら負け、そしてもし押し返したとしても卯道の回復が待ってる。うん、大変だわこれ。
「新井さん、五十鈴さん、丑崎さん、3人ともよく聞いてくれ。」
なんだなんだ、勝つための戦略でも教えてくれるのか?
「勝とうとするな、だからと言って負けようともするな、ただただ全りょ…」
「全力で楽しんでこい、だろ?先生。」
「新井さん…それ俺の決め台詞…」
夏に決め台詞を取られてかなり落ち込んでる先生であった。
14:00 討魔酒場 訓練場
前は鬼寅にあんなこと言って負けたことになったけど、今度こそは実力で勝ってみせよう。
「夏、五十鈴、俺らが2日でどんくらい成長できたか、あいつらに見せてやろうぜ。」
「あぁ、前は簡単に攻撃を消されたからな。」
「はい、総班長の名にふさわしい活躍をしてみせます。」
2日間でどんだけ成長出来るんだって話だけどね、でもこの2人なら大丈夫だろ、何気にこのクラス天才多いし、アホもバカも多いけど。
「では団体戦、始め!」
「突貫する!」
まずは卯道を仕留めに行く、その後に豪と鬼寅をどうにかする!
「ひぇ!私を狙ってきてますぅ!」
「あっはっは!最初に結菜を狙うとはいい趣味してるな魁紀!」
「ちぃ!」
豪が俺と卯道の間に入って俺の攻撃を止めた。だがここでは終わらん!
「五十鈴!狙ってくれ!」
「わかりました!炎呪符(えんじゅふ)・爆(ばく)!」
「まとめて吹き飛ばす気か、なるほど!だがそうはいかない!真由!」
「私に!命令しないで!」
鬼寅が陰陽を打ち消しに来たな、ならまずこれでチェックだ!
「夏!」
「あいよ!ごめんな卯道、これも試合なんでな!初夏(しょか)ノ段(だん)・麦(むぎ)の秋風(あきかぜ)!」
これで卯道は倒れてくれるはずだ、そして残り2人は火力でゴリ押す!
「あっはっは!そう簡単にうちの結菜はやらせないよ!龍轟(りゅうごう)!」
クソっ仕留め損ねた、おまけに龍轟とやらで俺と夏が吹っ飛ばされた、そしたら次はっ!
「五十鈴、次だ!」
「はい!炎呪符(えんじゅふ)・牢(ろう)!」
「へぇ、これはこれは。」
「閉じ込められたわね。」
卯道以外の2人を閉じ込めた、今なら卯道を叩ける!
「丑火損(ぎゅうかそん)!」
「防呪符(ぼうじゅふ)・壁(へき)!」
「そうするだろうな!だがこの丑火損は、そんな壁ごと壊す!」
丑火損が卯道の陰陽を貫通、卯道はこれでダウン、あとは…
「あぁ!魁紀君いけないんだ!女の子にあんな声出させて!」
南江は今黙っててくれ。
「いやはやここまでやられるとはな、さすがは魁紀だなあっはっは!」
「笑ってる場合じゃないでしょ、なにかやらなきゃ負けるわよ。」
「なぁに、今度は俺に任せろ真由。」
よし、五十鈴に牢を解いてもらって、その瞬間に俺と夏で不意打ちを…
「悪いな魁紀、練習だとしても俺は負ける訳にはいかないのでな。それ以前に負けたくないからな!」
なんだこの威圧感は…
「これは…!妖気の威圧ですか…?」
「琴里!大丈夫か!」
「あっはっは!辰圧(りゅうあつ)!」
干支の中でも唯一現実に存在しない辰(りゅう)、それが放つ威圧は他の干支とは大きく違う。絶対的強者が放つ威圧は他者を受け付けず、圧倒する。それが辰仁家、そしてこれが辰仁豪だ。
てか威圧を放てるやつなんて限られてるけどね、俺だって丑圧(ぎゅうあつ)みたいなの欲しい。でも考えてみて、牛の威圧とか弱そうでしょ?そういうことだ。
「魁紀!本気で来い!俺も本気で応えよう!」
まさか俺に童子切を抜けってのかよ、さすがにそれはちょっと許可を頂かないとなぁ。
(酒呑様、今こんな状況だけど、力を貸してくれるか?)
(カッカッカッ!久しぶりに話しかけてきたと思ったらそんなことか。よかろう!売られた喧嘩は買わなければなぁ魁紀よ。)
(んじゃ、お言葉に甘えて。)
童子切を抜くと、酒吞様の力が湧いてくる。
「おお!来るか!三大妖魔の一柱、酒呑童子!」
正直この状態は長くは続かねぇ、しかも丑気と一緒には使えない、だからこれで豪に勝てなかったらもう俺は豪に勝てない。
(カカッ!相手は辰仁家か、魁紀が勝てないのも頷けるものだ。)
(まだ負けてないんだけどね…)
(何を言う、前に一度負けたであろう、我は見ていたぞ?)
なんでそんなこと見えるんだよ。
(魁紀よ、瓢箪の中の酒を呑むが良い、いつもの倍以上の力が出るぞ。)
(いやいや、俺未成年だし。)
(なんだ、今はそんな規則があるのか?なぜ人間は面倒な規則ばかりを決めるのか我には理解出来ぬな、これほど美味だというのに。)
酒呑んで力が出るとか、やはりさすがだな酒呑様、だけどそればかしは無理だ…
「行くぞ豪、これで最後だ。」
「あぁ!辰神(たつがみ)の普剱瓏(ふけんろう)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の怒り!轟かせ!辰気(りゅうき)!」
俺は童子切を振り上げる。
「断朧(だんろう)!」
豪は体をひねって回転しながら突っ込んできた。
「画竜点睛(がりょうてんせい)!!」
2人の技がぶつかる、その瞬間、言葉では表現出来ない爆発が起きた。
「凄い煙だ、試合はどうなった!」
聞こえる根元先生の実況、だけど体は動かない。
「あっはっは!俺の勝ちだ!魁紀!」
「ちっ…」
「5組全員ダウン!2組の勝利!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます