第三十一集 最強ゆえのの孤独
5月15日 8:30 討魔酒場 304号室
あぁ、目が覚めてしまった。起きたくない、昨日は夏と五十鈴の練習に付き合って、21時くらいに風呂に入って、部屋に戻ってみたら龍太郎と夏が喧嘩しててもう大変だった。
龍太郎に関しては、医療室が薬臭いって言って嫌がってたから、卯道さんからちゃんと安静にするなら部屋に戻っていいという制約付きだ。
だけどこの様だ、そのせいで第五班の部屋にお邪魔させてもらった、まあほぼ俺の部屋みたいなもんだから問題はなかったけど。
「か、魁紀君、もう8時半、だよ、そろそろ起きないと。」
「大丈夫だぁ…あと1時間…」
「魁紀君起きてぇ!!」
「ああああぁぁぁぁ!!」
ビンタされた、こんな起こし方は無いだろ。普通は起きなきゃチューするぞとかそんな甘い起こし方できないのですかね南江さん!
「痛ったぁぁ…1発で目覚めたわ…」
「効くでしょ、私のビンタ!」
えっへんって感じで言うんじゃないよ、クソいてぇ…
「それより魁紀君、今日は誰と練習するの?私が相手しようか?」
「いや、相手なら決まってる、ていうかお前代表メンバーじゃないでしょ。」
「うーん代表じゃなくても体動かしたいの!他の班長はみんな参加してるのに私だけ参加出来てないから悔しいじゃん!」
南江の言うことはごもっともだ、でも妖術はな、優秀な奴が多いから、仕方ないよ。
「むぅ、誰か交代してくれないかな。」
「ありえないことは無いぞ。例えば、もし羽澤が帰ってくるのであれば、団体戦の五十鈴は陰陽代表行きで、羽澤が団体戦入りする。妖術代表なら、柿原と変われるんじゃないか?今のところまともに戦って1番戦績悪いの柿原だし、陰陽代表ももしかしたらメンバー入れ替えるかもって昨日先生が言ってたぞ。」
陰陽代表は一勝もしてないからね、先生が悩んでたのもわかる、いっその事陰陽代表全員バトルロワイヤルやって生き残ったやつが代表でいいのではないだろうか。それだと時間かかるからダメだな。
「マジで!?私先生と柿原君に相談してくる!」
南江は走っていった。その後、彼女の姿を見たものはっと、それだと南江死んじゃうなやめよう。
「よし通、朝飯行こうか。」
「う、うん!」
1ヶ月半経って、今更かもしれないけど、通ってたまに女の子の部分が出てくるよな、別に顔立ちが女の子寄りとかでは無いし、みんな大好き男の娘っていうわけでもないけど、なんか女の子っぽいんだよな、誰かわかって欲しい。
9:00 討魔酒場 食堂
「にしても南江のやつ、本当に変わるつもりなのかな。」
「ど、どうなんだろ、南江さんだったら、やりそう。」
「そうだよなぁ、まあ団体戦と関係ないからいいんだけどさ。」
みんな勝ちたいだろうし、柿原には申し訳ないけど、勝ちに行くとなると実力のある班長の南江がいいと思う。
「ただいま!」
「お、おかえり。」
「おー、よくここにいるって分かったな、それでどうなった?」
「柿原君も班長の私が変わってくれるなら喜んでって、このまま負けてばっかだとみんなに申し訳ないって。」
いいやつだなぁ、あんななんか狂人っぽい戦い方するのに割と善人だった。
「じゃあ南江も頑張れよ、練習相手にはならないけど。」
「えぇぇ手伝ってよ!」
「今日はもう約束してるからな、それが終わったあとは相手しなくもないぞ?」
鬼寅と練習するって言ってもそんなに時間かかる訳じゃないからな、30分くらいやったらちょうどいいだろう。そもそもお互い本気出してやり合ったら30分も持たないけどね。
「本当!?やったぁ!じゃあそれまでは通君に相手をお願いしようかな!」
「え、えぇ…!僕なの…!」
「うん!盾構えてずっと私の攻撃に耐えてくれるだけでいいから!」
めっちゃサンドバッグ扱いじゃん、通も大変だな、端っこで見守るとしよう。
「う、うん、頑張るよ、南江さんの、ためなら。」
「ありがとぉぉ!」
よし、ご飯食べ終わったし、そろそろ行くか。待ち合わせ時間は決めてないけど、もし鬼寅が待ってたら大変だ、殴られるだけで済むならいいけどだめなら殺される…
「じゃあ俺は行ってくる、2人も頑張れよー。」
「「うん!」」
9:15 討魔酒場 訓練所
訓練所に行くと鬼寅が腕を組んで待っていた。
「おお鬼寅、待たせたな。」
「おっそい!どれだけ待たせるつもりなのかしら?」
「いやーすまんすまん、そんなに怒んなって。」
めっちゃ怒ってるじゃん、やっぱりちゃんと時間決めるべきだったのかな。
「怒ってないわよこのバカ、さっさと準備しなさい、練習するわよ。」
「はいはーい。」
怒ってないならいいんだけど絶対怒ってるって。
「んじゃ今日もよろしく頼むぜ。」
「ふん、かかって来なさい、今日もぺちゃんこにしてやりますわ!」
「ぺちゃんこにされた覚えはないけどな!」
それから1時間弱、鬼寅と練習をした。今度は丑気(ぎゅうき)を使わずに、どこまで長く戦えるかを実践してみた、約1時間も戦えるなら十分だろうし、実戦で1時間も戦うことは無いからちょうどいい。
「よし、今日もありがとう、いい発見ができた。」
「あっそう、なら私はもう帰らさせてもらうわ。」
「おー!ありがとなぁ!」
「ふん、ちょっとは引き止めなさいよ…」
「なんか言った?」
「なにもないわよ、さよなら。」
さよならまでは言わなくていいだろ…
「明日もよかったらまた頼む!今日と同じ時間で!」
返事は帰ってこなかったが、きっと伝わっただろう、時間もちゃんと決めた、今日みたいなミスはもうしないぞと。
その後、南江、夏、張璇、千代川とも練習をした。南江は相変わらずセンスが高くて厄介だ、夏はただのゴリラで、張璇は正統派って感じの一刀流、千代川は…まあ相変わらずの殺気だった。
14:00 討魔酒場 食堂
「あぁ…今日は大変だった…めっちゃ疲れた…」
「なぁ魁紀、龍太郎のやつは大丈夫なのか?」
「なんだ、夏しては珍しいじゃん龍太郎の心配とか。」
「いやほら、一応お互い代表メンバーだし、心配くらいするだろ。」
なるほど、確かにそれなら心配するのもわかる。
「龍太郎なら大丈夫だ、朝だって2人で喧嘩してたでしょ、そんくらいには元気だったろ。任田祭には間に合うと思うよ。」
「なら、大丈夫か。」
本当、槍でも降るのかな。
14:00 討魔酒場 305号室 田口龍太郎サイド
「ハックション!!あぁなんだ、季節的に暑くなるはずなのに冷えてんのか?」
15:00 討魔酒場 訓練場 丑崎魁紀サイド
さて今日最後の練習にしようか、誰誘ってこようかな。
「あっはっは!困っているようだな、魁紀!」
あぁこの高笑いは…
「豪、こんなとこで何してんだ。」
「いやいや、俺は練習の誘いが全く来ないからな、こうしてみんなを見て回ってるんだよ、どうだ、俺が相手してやろうか?あっはっは!」
「いや、強すぎて練習にならないって…」
「まあそうだよな。辰仁家だからかみんなから避けられがちなのだ、無理もない。すまんな、邪魔した。」
豪は悲しい顔をしていた、十二家最強の辰仁家に生まれたから故の悲しみなんだろ。気持ちは理解出来る、俺だってこんな角があるから迫害されたことだってあるからな、まあ性質は全然違うけど似たようなもんだろ。
なら俺が豪に出来ることは…
「待てよ豪。」
「どうかしたか。」
俺は刻巡を抜き、構えて豪に言う。
「本気で来い、俺の本気で受け止めてやる!」
「プッ!あっはっは!面白い!本気の顔だな魁紀、なにやら気を使わせてすまないな。だが、誘われたのなら断るのは野暮というもの!」
豪は俺に振り向いて腕を組んだ。そして豪から妖気が溢れ、衝撃となって訓練場を轟かせる。
「悪いが魁紀、本気とはいかないがそれに近い力で相手をしよう!」
この気迫、さすがは辰仁豪だな…手が震える…
「辰神(たつがみ)の普剱瓏(ふけんろう)よ、我に力を与えたもう、捧げるは我が魂の怒り!轟かせ!辰気(りゅうき)!」
ははっ、こりゃ無理ってもんだ。だけど自分で売った喧嘩だ、逃げる訳にはいかねぇ。
「かっこいいじゃねぇか!」
「おおとも!これがみんなに認められし力だ!」
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