第二十五集 合同練習 VS 1組 参

  5月13日 13:00 討魔酒場 食堂


  昼飯くらいちゃんと食わせてくれよ…


  って思ったけど、多分無理だ、あの目はやる気だ。


  「よしいいか、もぐもぐ、妖気纏いってのはな、もぐもぐ。」


  「「食ってから喋って!」」


  「あぁ悪い悪い、妖気纏いってのはな、難しいんだ。」


  知ってるよ…わざわざ言わなくてもわかるよ…


  「みんな、まずは妖気流しをやってみろ。そうだな、簡単に今使ってる箸に流せ、そしたらそのままご飯を食え。」


  そんなんやったら食べれないだろうが…まあでもやらせたいことは分かる。妖気を箸に流すと、箸が強化され、食べ物を崩さずにつかめなくなる。でも、流す妖気の量次第ではちゃんとつかめる。これは妖気コントロールの練習になる、妖気纏いを習得するにあたって、妖気コントロールは必須だ、だからこの練習は間違ってない。


  「先生!全然ご飯つかめないです!ご飯が潰れてしまいます!」


  「落ち着け新井さん、ただ流せばいいって訳じゃない、流す量を自分で抑えるんだ。」


  「おぉ!出来た!!夏おっ先ー。」


  「あぁ龍太郎!お前ずるいぞ!」


  何がどうずるいんだよゴリラ、てかうるさい、ご飯くらい静かに食べさせてくれ…


  「とりあえずご飯食べ終わるまで妖気流し続けろ、妖術コースのやつは特にそうだけど、絶対出来るようにしとけよ。」


  まあもうできるから特に気にすることないんだけどね。


  13:20 討魔酒場 食堂


  「まだ出来ないやつはいるか?」


  誰もいない、やはりここにいるやつらはみんな天才なんじゃないの?


  「よし、では次の段階だ、コントロール出来た妖気を外に出してみろ。」


  簡単に言うなー、実際にできる人間から言わせてもらうけど、妖気を外に出すというのは簡単ではない。単純に危ないからってのもあるんだけど、体内に籠ってる物を外に出すということ自体困難である。要するにそうだな、食ったものを吐こうとするのと同じだ、なんか汚いな。


  「なぁ先生、どうやって外に出すんですか?」


  「こうやってだ。ほら、なんか手に纏ってるのが分かるだろ?」


  「「わかんねぇよ!」」


  「ええとだな、纏わせたい場所に集中して妖気を流し、ちょっと力む、そしたらいつか勝手に出てくるぞ。」


  「「…」」


  力むって言うのか…必要なのは妖気コントロールと、集中力。、根元先生が言ってる力むってのも、集中しろってことなんだろ。正確な妖気コントロール、そして纏わせる物に対する妖気の一点集中。


  「ほらほら、とりあえずやってみろ、キーワードは集中だ。」


  「うううう、うああああああ!!」


  「夏、叫ばないでください。そんなので出来たら苦労は…」


  「できたぁ!!」


  「なっ…?」


  すごいな、俺も今度から叫ぼうかな。


  「先生!これでいいんですか!」


  「そうだ新井さん、次に自分の武器に纏わせてみろ、前より遥かに力を発揮出来るぞ。」


  「おおほお!すげぇ!俺の方天戟にこんな力が!」


  武器の力って言うより夏自身の力なんだけどね。


  13:50 討魔酒場 食堂


  その後30分くらいかけて、クラス全員が妖気纏いを習得した。うん、みんな天才すぎるね、俺なんか霞んで見えるよ…


  「よし、全員無事習得できたな、昼食時間中にやった甲斐があった。ただ一つだけ気をつけろ、妖気纏いは常に危険を伴う、纏った妖気に飲まれて妖魔に堕ちたやつもいた。だからお前ら全員忘れるな、お前らには同じ班の班員、同じクラスのクラスメイト、そして先生の俺がいる!」


  「「おー!」」


  「お前らは1人じゃない、だから決して集中を乱すな、絶対にだ!」


  かっこいいじゃねぇか根元先生、一生あんたについて行くぜ!!


  「そんなわけだ、新井さん、五十鈴さん、丑崎さん、1組との団体戦、遠慮せずにやっちまえ!殺す以外なら全部俺が許す!」


  酷いじゃねぇか根元先生、ついて行くかどうかちょっと考えるぜ…


  14:00 討魔酒場 訓練場


  「ではこれより、団体戦を始める、代表者は前へ!」


  いよいよだ、相手には千代川と、張璇ってやつもいる。やはり団体戦には実力者を並べてきたか。


  「1組代表、雪代花奈(ゆきしろはな)、張璇(ちょうせん)、千代川宗則(ちよがわむねのり) VS 5組代表、新井夏(あらいなつ)、五十鈴琴里(いすずことり)、丑崎魁紀(うしざきかいき)、始め!」


  「3人で打ち合わせして戦ったことねぇけど、琴里と魁紀なら問題ないぜ!」


  「ほれ武術代表、早く突っ込めよ。」


  「2人とも、やる気はあるのかないのかハッキリしてください…」


  まあ、こっちのが俺らに合ってるだろ。


  「丑崎、今度こそこの場で殺してや…痛ってぇ!何すんだよ張璇!」


  「阿呆、今はそういう場では無いのだ、口を慎め、でなければお主から斬るぞ。」


  「2人とも、団体戦だから仲良くしてくださいよもー、ケツ揉みますよ?」


  「「あっ、すまん…」」


  なんだあれケツ揉むって、俺も揉みたい。


  「それよりも、相手さんはいいケツしてますね!ぐへへへぇ、あぁヨダレが。」


  「ひっ!?」


  「大丈夫だ琴里、お前のケツは俺が…あぁぁああぁぁぁ!」


  「一遍死んでみますか?夏。」


  あぁ、上手に焼けたなぁ、こんがりゴリラの出来上がりと言ったところか。


  「おぉい魁紀ぃ…見てないで助けろ…」


  「いやお前それは自業自得だろ。」


  なんか、まだ攻撃してないのにあっちもこっちも怪我人出てるの面白いな。


  「失礼した、では参るぞ、丑崎殿!」


  「あぁ、参る!」


  刻巡の初陣だ、試し斬りさせてもらうぜ!


  「おっとと、いいケツしてる5組の皆さん!足元にご注意くださーい!氷呪符(ひょうじゅふ)・縛(ばく)!」


  「そうはさせません!炎呪符(えんじゅふ)・照(しょう)!」


  「サンキュー五十鈴!」


  五十鈴が雪代の術をかき消してくれた間に、まず手強そうなやつを…張璇だな。


  「丑火損(ぎゅうかそん)!」


  「対妖魔剣術(たいようまけんじゅつ)・璇嵐(せんらん)!」


  凄いな、流石1組の2番手、俺の丑火損を竜巻でかき消したか。でもこれは団体戦だ、2対1でも卑怯って言うなよ?


  「夏!」


  「おおよ!初夏(しょか)ノ段(だん)・麦(むぎ)の秋風(あきかぜ)!」


  夏から飛ばされる斬撃を跳んで避けて、張璇に斬りかかったら、さすがにダウンしてくれるかな。


  「流石ですね、妖気纏いができている、1時間半で良くもここまで出来るものだ。ただし拙者には届きませぬ!」


  また弾き返したか、だけどそれも予想の範疇(はんちゅう)だ!


  「そうだろうな!丑火損(ぎゅうかそん)!」


  「俺の出番だな!」


  「ちっ、千代川か。」


  今度は千代川に弾かれた、あんなやつに弾かれるなんてな。


  「千代川、お主に助けられなくてもあれは受け止められたぞ。」


  「まあそう言うなって、こいつは俺が、殺らないといけないからな!」


  流石は1組だな、しかもそれぞれ各コースのトップの実力者だろ、骨が折れるな。


  「丑崎さん!一度下がってください!炎呪符・爆(ばく)!」


  「おっと!」


  「いやぁ丑崎、お前らなかなか強いじゃねぇか、なんで1組に入らなかったんだ?」


  「めんどくさいからに決まってんだろ、それと俺が1組に行ったところでお前に殺されるだろ。」


  「それもそうだな!はっはっは!」


  はっはっは!じゃないわ、こんな堂々と人を殺すなんて宣言できるのも凄いわ。


  「んで丑崎、その童子切は飾りか?」


  「悪いがこいつは今使いたくないんでね、この大太刀で我慢してくれ。まあ俺がちょっとでも本気出したら余裕でお前ら3人に勝てるんだけどね。」


  「言ってくれるな丑崎殿、では拙者の剣、再び受けてみよ!」


  「夏、千代川は任せた。五十鈴、雪代の足止めをよろしく。ちょっと乱暴にやらさせてもらう!」


  「おおよ!」


  「分かりました。」


  こないだはちゃんと使わせてくれなかったからな、今度こそ使わさせてもらうぜ。


  「参る!対妖魔剣術(たいようまけんじゅつ)・璇嵐(せんらん)!」


  またさっきの竜巻か、それと対妖魔剣術とか傷ついちゃうな俺…でもそんなものはたたっ斬る!


  「なんだと!大太刀でそのまま斬っただと!」


 竜巻なぞ斬れないことはない!


  「3人とも一撃で仕留める!丑神(うしがみ)の吽那迦(うなか)よ、我に力を与えたもう!捧げるは我が魂の祈り!突っ走れ!丑気(ぎゅうき)!」


  我らが祖先、丑神様の力だ。止めれるもんなら止めてみろ。


 「丑神の力とはな、受けて立とう!」


 「1人で俺ら3人をやれると思うな丑崎!」


 「なめてくれた分あとでケツを触らさせていただきます!」


 3人とも構えたな、今だ。


 「丑気(ぎゅうき)・丑印善劫(ぎゅういんぜんこう)!」


  3人をなめてるなんてとんでもない、そのためのこの丑気だ。丑印善劫(ぎゅういんぜんこう)、走ったまま大太刀を前に突き出し、当たる前に突きの衝撃波は繰り出す。妖魔相手だったらそのまま刺してるところだが、人相手ならこれくらいが丁度いい。


  「煙で何も見えん!どうなったんだ!」


  「私たちの勝ちですよ、夏。」


 煙が少し舞い上がったが、足元に3人が倒れているのが見える。


  「1組!全員ダウン!勝者!5組!!」


  「「よっしゃー!!」」

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