第二十四集 合同練習 VS 1組 弐
5月13日 10;00 討魔酒場 訓練場(観客席)
「なんだよあれ!聞いてないんだけどぉ!うわぁぁぁぁぁん!!」
「ほら、落ち着けよ朋実、よしよし。」
「触らないでハゲ!」
「ハ…ゲ……」
あぁついに言っちゃったぁ、龍太郎も可哀想に。
「もう俺、生きていけない…」
「「そんなに落ち込むのか!?」」
龍太郎のやつ落ち込みすぎて端っこで体育座りしちゃってるじゃん、この後の妖術代表で戦えんのかあいつ。
11:00 討魔酒場 訓練場(観客席)
その後、陰陽代表の試合は、割と完膚なきまでに負けた。
理由は簡単、妖気纏いが出来ないから。詠唱無しで呪符を使うことは出来たが、やはり妖気が纏ってるかどうかで火力の差は出てしまった。
そして妖術代表、柿原、龍太郎、松永の3人だが、武術や陰陽とは違い、妖術では妖気纏いが出来るかどうかで天と地の差ができる。
「キャハハハ!妖気纏いがなんだってんだ、勝ってやるぜ!キャハ!」
「妖気纏い…朋実のためにも勝たないと!」
「にゃーちゃん、私たちはもう妖気纏いできるもんねー、にゃー。」
「にゃー!」
なんだよにゃーって可愛いな。それより松永は妖気纏い出来るのか、猫又がいるから出来るのもおかしくないか。
「次、妖術代表準備しろ!負け越してるから、お前ら頑張れよ!」
根元先生もやる気満々だな、個人戦は妖術代表で終わり、休憩を挟んだら午後には団体戦か、嫌だなぁ。でも刻巡の試し斬りが出来るし、ちょうどいいか。
「よしじゃあ行ってくる、最初は俺が出る。」
「キャハ!頑張れよ龍太郎!」
「頑張ってね。」
「妖術代表の試合を始めるぞ。第1試合、初根佳乃子(はつねかのこ) VS 田口龍太郎(たぐちりゅうたろう)!始め!」
そう言えば、1組には干支十二家のやつはいなかったな、珍しいと言うべきかなんなのか。まあそんなに干支十二家のやつがほいほいいたら困る。
相手は初根というのか、なんだか歌でも歌い出しそうな感じの名前だな。武器は槍か、うちのクラスの菊池と同じか。それだと龍太郎が不利だな、刀と槍じゃリーチが違いすぎる、流石の龍太郎でも厳しいと思うんだけど。
「行きますよ!田口さん!」
「ご丁寧にどうも!」
すごい、流石龍太郎、リーチの差をものともしない、ただ互いに決定打がない、このままだと消耗戦になる。
「妖気纏いがなんだってんだ、そんなもん今なくても、お前らに勝てる力はあるんだよ!」
龍太郎が刀の鞘を腰から抜き、擬似二刀流になった。
「なんですか、その戦い方は!」
「へっ!タネが割れる前に仕留めるぜ!一の段!萩(はぎ)に猪(いのしし)!」
「なっ!」
龍太郎が初根に突進して行く。なるほど、前受けた技からして何となくわかってきた。
「まだまだ!二の段!紅葉(もみじ)に鹿(しか)!」
突進攻撃から速度が唐突に弱まり、初根の様子を見始めた。
「この!なめないでください!」
「なめてなんかねぇさ、お前らは強ぇ、それはよく分かってる。だがそれは朋実を泣かせたのとは別だ!三段目!牡丹(ぼたん)に蝶(ちょう)!」
刀を急速に鞘に収め、反撃の構え。
「これにて〆(しめ)の段、花速刀(かそくとう)・猪鹿蝶(いのしかちょう)!」
一段目で懐に入り、二段目で攻撃を誘い、三段目で構え、〆の段で居合。華麗な一連の攻撃だ。
「お前さん、牡丹に蝶の意味を知ってるか、不死不滅の象徴だ。花札ってのは意外と奥深くてね、やるのも好きだけど、意味を深掘りするのも楽しいぞ。」
「そこまで!勝者!田口!」
おお、パチパチパチ、かっこいい。相手が女子とはいえ容赦しない感じ、龍太郎らしい。
「次は任せたぜ、狂夜。」
「キャハハ!任されたぜ!」
「第2試合、竹(たけ)ヶ原理恵(はらりえ) VS 柿原狂夜(かきはらきょうや)!始め!」
今度の相手は、ほぉこれは珍しい、三節棍かぁ。扱いづらいで有名なあの三節棍、持ち方でリーチの長さが変わり、扱えればとても変幻自在な戦い方ができる。さて、柿原は二刀でどう対処するか。
「キャハハ!行くぜぇ!」
「なっははは!面白い笑い方ですね、行きますよ!」
お前人のこと言えないだろ、なっははは!とか初めて聞いたぞ。
「キャハハハッ!そーらそらそらそら!!」
柿原の二刀による連撃、さすがに速い、竹ヶ原ってやつも受け止めるのに精一杯だな。
「なっはは!面白いぞ君!」
「どうした!攻撃してこねぇのか!なら終わらせるぜ!」
「妖気を纏えたらもっと面白かったのに。」
「なに!?」
竹ヶ原のやつ、力ずくで柿原の刀を飛ばしやがった。力があるようには見えなかったけど、やはり妖気纏いの差か…
「なっははは!このままこの棍を首に突いてやってもいいんですけど、どうしますか?」
「チッ…」
柿原が両手を上げた、刀両方とも吹っ飛ばされたから仕方ないや。
「柿原の降参により、勝者!竹ヶ原!」
「なっははははは!」
やっぱりおかしい笑い方だ、にしても器用だ、三節棍を俺らの年で扱えるようになるとは、やはり妖術学校に来るやつらは化け物しかいないのか?
「次!午前の最終試合だ!第3試合、剣城隆臣(つるぎたかおみ) VS 松永茉己(まつながまみ)!始め!」
「行くよ、にゃーちゃん。」
「にゃおぉ。」
「おやおや、猫なんて連れてきて、合同練習にペット同伴は許されていたのかい?」
「うるさい人だね、にゃーちゃんはペットじゃない。」
「それなら失礼なことを言ったね、お嬢さん。」
さてさて午前最後の試合だ、なんだか執事みたいな人だな剣城ってやつ。武器はあーはい、レイピアですか…
「そちらの猫さん…失礼、猫又さんは、妖魔として処理して問題ないかい?」
「問題しかないよ、にゃーちゃんは妖魔じゃない、いい加減怒るよ。」
「これは失礼、僕としたことがお嬢さんをイライラさせてしまうとは。」
「もういいよ、怒った。あなた、嫌い。やっちゃってにゃーちゃん、猫又変化(ねこまたへんげ)・黒豹(くろひょう)!」
「にゃおぉ…アアァァ!」
前と同じ猫又が黒豹に変化した、ただ今更だが疑問が湧いてきた。
「おや、お嬢さん、背後がガラ空きだよ。」
「なに!」
「松永ダウン!勝者!剣城隆臣!」
そう、猫又にばかり戦闘させていたからどうなのかと思っていたけど、やはり松永本人に戦闘能力がほぼないのか。
「アアァァァァァ!!」
ん?嫌な予感がする。猫又があぶねぇ。
「これはこれは、そちらの妖魔はまだやる気かい?ここで討伐してあげよう。」
「そいつは許せねぇな。」
さすがに猫又をやらせる訳にはいかない、俺も妖魔だからって千代川に襲われたからね、気持ちはわかるよ。
「観客席からの飛び入りは許してくれ、この猫又はやらせねぇ。」
「なるほど、ではここで失礼させて頂こう。」
「にゃーちゃんでよかったのか?もう大丈夫だ、松永の所に行ってやれ。」
「アァ…ペロペロ。」
「おっとおっと、くすぐったいからやめてくれー。」
なんだろ懐かれたのかな、それにしても黒豹サイズで舐められるとなんだか襲われてるみたいだな…
「あぁ!魁紀君ずるい!私あれだけ撫でようとしたのに!!」
俺だって好きでこうしてるわけじゃないんだけどね。
「以上で個人戦を終了する、昼食をとってから団体戦を始めるから、それまでに両クラス準備してくれ、解散!」
よーし終わった、飯だ飯ー。
「5組!ちょっと集合!」
えぇ…なに、腹減ったんだけど…
「今から、昼食を食べながら、お前らに妖気纏いを教える!」
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