第十三集 謎の紙切れ

4月19日 7:00 討魔酒場 302号室


  朝目覚めると、なぜか違う部屋にいた、そして周りには第五班のみんなではなく、夏、龍太郎、梁、通、健太がいた。夏と龍太郎はなぜか顔にもみじが付いてる、何があったんだ…


  洗面所に行って歯磨きでもしようと思ったら、俺にももみじが付いてた、気づいた瞬間からヒリヒリしだした、めっちゃ痛てぇ…


  状況の整理をしよう、昨日俺たちは確か女子風呂を覗くと作戦を立てたはずなんだけど、その後の記憶が無い…1番大事なとこの記憶が無いとか最悪じゃねーか。ともかく、寝てるみんなを起こして話を聞いてみよう。


  「おいお前ら、朝だぞ、起きろー。」


  「ん?魁紀じゃねーか、なんで同じ部屋って痛った!!」


  「やかましいなまだ寝てる最中だろってなんでお前らここにいんだよ!?つーかめっちゃ頬痛いんだけど!?」


  夏と龍太郎はそうなるよな、うん、違う部屋に投げ出されてるわけだから。おまけに頬にもみじついてるし、こりゃ南江の仕業だな。


  「な、なんで、夏君と龍太郎君が、ここにいるの?」


  「俺も聞きたいわ、てか昨日の夜記憶が無いんだけど、確か俺ら女子風呂覗こうとしたんじゃなかったか?」


  「そのはずなんだが思い出せない、あっ、琴里のやつの仕業だな…」


  「五十鈴の仕業?」


  記憶でも消せるのかな。


  「あぁ、あいつ時間の規定はあるが人の記憶を1部消せるんだよ。」


  だから俺ら浴場に入った後の記憶がないのか、ここで夏と龍太郎が寝てるのは多分女子が男子にやらせたんだろうな。


  「ちくしょー、せっかくJKなりたての琴里の生まれたままの姿を見れたというのに…」


  「ああまったくだ、嗚呼朋実…」


  おいやめろ、その言い方だと大谷死んだみたいになるじゃねーか。


  「まああれだ、ともかく、全員着替えろ、朝ごはん食べに行くぞ。」


  「「あぁ…」」


  お前ら2人はいつまでしょぼくれてんだ…俺も悲しいは悲しいけど、因果応報って言われればそれまでだからな、仕方ない。ご飯食べて、今日も今日とて任務だ。


  10:00 討魔酒場前広場


  「夏君と龍太郎君、顔色悪いね。」


  「そうだな、てか南江、なんでお前と松田別の部屋行ったんだ?部屋勝手に変えて大丈夫なのか?」


  「琴里ちゃんと朋実ちゃんと遊びたかったからねー、仕方ないね!てへぺろ!」


  てへぺろじゃないわ、まあ1ヶ月もあるんだし、こんくらい自由にさせてもいいか、これでも我らが第五班の班長だからな。


  「それより魁紀君、頬のもみじ、似合ってるよ!」


  「どうせお前がやったんだろ、ったく少しは手加減しろって…」


  「てへ!」


  うわうぜぇ、てかマジで痛いのが引かないんだけどどうすんのこれ…


  「全員集まったな、今日も任務を行う、それだけだ、明日からは最初から各自の班で集まって任務を受けて来るといい、では解散。」


  シンプル、毎日毎日同じことやってたら実戦の感覚がないもんな。


  「南江班、行くぞ。」


  「「はーい。」」


  相変わらずのやる気のなさである。


  「今日は自分達で任務を選んで来い、簡単なやつにしたらキャンセルするからそのつもりで。」


  「えぇ…」


  そんなにガッカリすることかよ、普通だろ普通。だいたい実戦で簡単なもんしかやらなかったら俺らこれからも模擬戦とか実戦とかしかやらせてくれないぞ。


  「みんな、なににする?」


  「そうだねー、遥ちゃんはどういうのがやりたい?」


  「簡単な…」


  「却下だよ?」


  よくやった松田、こういう時はお前じゃなきゃ南江は止められない。


  「簡単すぎず、難しすぎずのものがいいね。」


  「そ、そうだね、僕もそっちのがいいかな。」


  「なら魁紀、一本踏鞴より強くて、鴉天狗より弱い妖魔って言ってらなにになる?」


  そうだな、一本踏鞴より強くて鴉天狗より弱い、となると、あれだな。


  「山姥とかどうだ?ちょっと山奥まで行かないといないと思うけど、ちょうどいい手強さだと思う。」


  「山登りいやだぁぁ!!」


  「はい駄々をこねないの。」


  「千尋ちゃんが…怖い!」


  松田もああいう1面あるんだな、顔は笑ってるけど絶対笑えない、気をつけないと。


  「じゃあ決まり、梁、南江の代わりに任務受けてきてくれ。」


  「うん、わかった。」


  よし、南江は松田に任せるとして、山を登る準備をしなきゃな。


  …


  「すみません、この山姥討伐の任務をお願いします。」


  「はい、かしこまりました、場所は東京八王子にある高尾山です、山登りはケーブルカーがございますので、そちらをお使いください。では、ご武運を。」


  「ありがとうございます。あれ、なんだこの紙切れは。」


  (先生に気をつけて、丑崎を守って)


  「なんだこれ、もしかして羽澤さんとぶつかったあの時に…」


  みんなに話すべきかな、それとも僕で解決すべきなのか…羽澤さんがどういう意図でこれを僕に渡したかわからないけど、決して嘘を伝えるために渡した訳では無いはず…うん、みんなには話そう。


  「健太君、任務は受けてきたよ。それで頼みがあるんだけど、魁紀君をどこかに連れてって引き止めてくれないかな。」


  「それはいいけど何かあったの?」


  「また後で話すから、とにかく今はお願い!」


  「わかった、ただ長くは引き止められないから、そこだけよろしく。」


  そう言いながら健太君は魁紀君の元へ向かった。


  「よし、ちょっとみんな聞いて欲しいことがあるんだけど、いいかな。」


  「お、梁君珍しいじゃない、なになに?」


  「この紙切れを見て欲しい。」


  「先生に気をつけて、丑崎を守って。どういう意味だ?」


  「わからない、羽澤さんが渡してくれたんだけど、たぶん魁紀君が狙われてるんだと思う。」


  もし前に松田さんが見えてた悪いオーラが正しくて、羽澤さんが善意でこの紙切れを渡してくれたということなら、全てを操っているのは根元先生ってことになる。だけどこれは全て仮定だ、羽澤さんが嘘で渡した可能性だってある、先生と一緒に企んで魁紀君を陥れる可能性だって。だけど、あの時の羽澤さんの顔はそんな誰かを陥れようっていう顔じゃなかった、だから…


  「これは全部可能性の話なんだけど、先生が羽澤さんの弱みを握っていて、表向きには助けて欲しいとか、気をつけてとか言えないんじゃないかな。」


  「あっ!思い出したことがあるんだけど、羽澤さんのオーラがね、最初の模擬戦の時、先生のオーラは黒に近い紫だったんだけど、羽澤さんのはちょっと弱々しい紫のオーラだったんだよね、なにか悩んでるっていうかそんな感じ!」


  だったら本当にその可能性はある、先生に裏で操られていて、魁紀君を殺させようとしてる。ならあとは…


  「み、みんなで魁紀君を、守ろう。」


  「うん、通君の言う通り、僕もそう思う。」


  「なら今から先生を殴りに行こう!」


  「ダメだよ遥ちゃん!」


  「なんで!だって先生が黒幕なんでしょ?」


  「そんなことしたとして私たちが勝てる相手だと思う?もし隠し球があるんだったら私たち全滅だよ?」


  「そう、だね…」


  南江さんらしいけど今回は松田さんの言う通りだ、だから守りに徹するしかない、このことを後で健太君にも伝えなきゃ。


  …


  「よお、戻ったぞ。」


  「おー、おかえり。」


  何やら集まって話してたっぽいけどどうかしたのかな。


  「みんななんか話してたのか?」


  「そうそう、羽ざんーーんーーー!!」


  「山登りどうしよっかって話をしてたの。」


  松田めっちゃ南江黙らせてるじゃん、どうかしたのテンションいつもよりおかしいのかあいつ。


  「なるほどね、確か高尾山ってケーブルカーあったはずだからそれで行こう。」


  「そうそう、僕らもちょうどそれで行こうかって話をしてたんだ。」


  なんだろ、こういう時ってなにか隠してるんだろうけど、まあいっか、同じ班の仲間を疑うもんじゃないな。


  「じゃあもう行こうぜ、山奥だし、昼にも山姥は現れるだろ、チャチャッと終わらせて帰ろ!」


  「「おー!」」


  「んー!」


  なんで南江の口にテープ貼ってあるんだ…


  12:00 高尾山ふもと


  新横浜から約2時間、高尾山についた。天気は曇りだからちょっと気味が悪い、健太程ではないけど妖気が漂ってるのを感じる。


  「ごめんみんな、今回俺役に立たないかも…」


  「健太君どうしたの?気分悪そうだし肩貸そうか?」


  「ごめんね松田さん、ありがとう。」


  凄い気分悪そうだ、二日酔いしてる人かのような感じがする。


  「ここ妖気が濃くて、いつも以上に妖気を感じるからちょっと酔っちゃった…」


  なるほど、元から妖気の流れが感じやすかったから濃いとダメなのか。


  「よし、じゃあ今回の作戦はこうしよう。」


  なんか思いついたみたいな顔してるけど、そういうセリフを言うやつはだいたいいい作戦立てれないって決まりだぞ。


  「通君を先頭にしてケーブルカーのところまでゆっくり歩こう!」


  うん、よかった、こういう時ちゃんとしてくれててよかった!


  「じゃあお前ら、俺はここで待ってるから、山姥を倒したらすぐに戻ってこい、いいな。」

 

  着いてこないのか、正直助かる。


  「でもお前らの妖気に少しの乱れでもあったら直ぐに行く、無事に帰ってこい。」


  「「わかりました。」」


  では、行こうか。

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