第四集 コース選択
4月3日 9:00 1年5組教室
ホームルームが始まった、やばい、あの根元の顔を見ただけで腹立つ、めっちゃイライラする。
「おはよう諸君、改めて、俺がこれから3年間お前らの担任の根元洋海だ、よろしく頼む。」
「「よろしくお願いしまーす。」」
みんな偉いな、ちゃんと挨拶してる。
「では今日の予定について話すぞ、黒板にも書いておくからメモは取らなくて大丈夫だ。」
新入生はやっぱいろいろ忙しいんだろうな、オリエンテーションとか今後の進路のためのコース選択だとか、面倒くさそうだなぁ…
「まず1時間目、みんなには希望のコースを選択してもらう、コースは3種類、妖術コース、陰陽コース、武術コースだ。皆自分の将来のことや、自分の持ってる力をちゃんと理解した上で選んでくれ。」
妖術、陰陽、武術、か。
妖術、主に妖魔に近い術を放つ。故にそれなりの力がなければ扱うことは不可能、ただこの学校に入る人間は少なからず妖気を持っていることが大前提、なのでみんな妖術を扱える可能性はある。
陰陽、陰陽は妖魔に対して絶大な力を発揮する、呪符という札を使って術を放つ。術の効果は様々、攻撃、回復、援護、妨害などといった効果があり、使い勝手も良い。弱点が札を使うのと詠唱が必要であること以外特にない、故に扱う者も多い。
武術、武器や拳、足などをメインとする。力や俊敏な動きに自信のある者が選ぶ。陰陽と比べて自由度は高くないが、詠唱などを必要としない分、陰陽よりも早く手を打つことができる。また武器や身体に妖気を流すことで陰陽よりも力を発揮することができる。
周りがざ少しわつき始めた、初めてのコース選択を周りと相談したくなるもんだろ。俺は妖術かな、武術はもう既に柏井師匠のとこで十分教わったし、陰陽は呪符を扱えるほど器用じゃないし、ほぼ消去法。
「丑崎君はどのコースにするの?」
歌田君が後ろから話しかけてきた。
「俺は妖術コース一択だね、消去法で。」
「消去法なんだ…」
他のコースを選ぶ必要がないからね、仕方ないね。
「歌田君はどうするの?」
「僕は…僕は武器を使う戦い方だから、武術コースかな。」
「おお、武器、どんな武器?」
「この弓だよ。」
歌田君がポケットから小さい弓を取り出した、え?こんな小さいの??
「あっ、もちろんこの小ささじゃないよ、妖気を流せば大きくなる、ほら。」
歌田君が弓を手のひらに乗せると、急によく見る弓の大きさになった。
「凄いな歌田君!これ結構細かい操作が必要なんじゃないの?」
「大したことないよ、正直僕にできるのはこんくらいのことだよ、あとは矢を操作するくらいかな、成功したことはほぼないけど…」
矢の操作?マジかよ、射った矢を操れるのか、成功したら絶対当たるってことじゃん。
「歌田君、その肝心の矢はどこに??」
「あ、ここだよ。」
またポッケから出てきた…ただ知ってる矢の形と言うより、剣のようなものだった。
「え、それ矢って言うより剣だよね。」
「そうだね、もともと剣の修行をしてたんだけど、ちょっと向いてなくてね。」
それで弓にしたのか、剣を矢として使うのも凄い発想だ。
「そして矢はこの1本しかないんだよね。」
サラッとやばいこと言い出したよこの人。
「1本…?」
「うん、でもこの剣は持ち主の所に帰ってくるように陰陽をかけてあるから、射ったあともちゃんと手元に帰ってくるよ。」
やっぱり歌田君凄いや、そんなことが出来るのにこのクラスにいるなんて、やはり成功率が関わってくるのか。
「丑崎君!丑崎君はどのコースにするの!」
朝イチに来た4人の歌田君以外の3人が向かってきた。
「丑崎君の選択を参考にしようっと思って、3人来たの。」
「丑崎君はやっぱり妖術コース?」
南江さん、松田さん、村上君だったかな、名前覚えるのそんなに得意じゃないから一斉に来られると困る。
「俺は妖術コースだよ、消去法だけど。」
「「消去法なんだ…」」
まあそういう反応になるよね。
「コース選択は自分の適正に合わせた方がためになるぞ、無理に出来ない物を選んでも意味が無いからね。」
「なるほどね、でももう決めてるんだよね実は。」
南江さんは何故か自信満々だった。
「私は丑崎君と同じ妖術コースにするの!」
「奇遇だね、俺も妖術コースなんだよね。」
村上君もか、この流れだと全員妖術コースかな。
「えぇ、私陰陽コースにしようと思ってたのにー!」
違った、むしろ違ってくれてよかった、松田さん感謝してるぞ。
「みんな同じにする必要はないから、松田さんはそのままでいいと思うよ。」
「でも…」
「陰陽だって大事だぞ、使えるようになればなんでも出来るんだからな。」
「なんかそれ聞いたらちょっとやる気出てきたかも!」
それはそれでよかったな、うん。
そういえば、細矢君は何を選ぶのかな、聞いてみよ。
反対側の壁側の席に細矢君が座っていた、行ってみよう。
「細矢君はどのコースにするの?」
「ぼ、僕は武術、かな…」
「なんで自信なさげなんだ…?」
「だ、だって僕、力も体力も、ないですから…」
その盾があれば他よりは全然いいと思うけどね…
「その盾を支えられてるんだから力と体力に関しては大丈夫だと思うけどね…」
「そ、そうですかね。」
細矢君は少し嬉しそうに笑った。ちょっと元気が出たっぽい。
前から思ったけど、細矢君の盾ってなんか宿ってそうな感じがする、酒呑童子とは違って優しさを感じる。まあ気のせいかな。
「ちなみに1時間目でコースを決めたら、次は直ぐに模擬戦だ、覚悟しとけよーお前ら。」
根元の一言で教室中が悲鳴で包まれた。模擬戦か、どんなことをやるんだろ。
「知っての通りクラス分けは成績順で分けられる、ここは1番下だ。だからお前達にはひたすら実力を付けてもらう。定期試験でも実力を測るテストを行う、1年生のうちは実力を上げることだけに集中するように。では10分後に1時間目を始める、それまでに一旦休憩とする。」
やっと終わった、飲み物でも買ってくるか、喉乾いたし。
9:05 任田高校教室棟1階 下駄箱前
学校に自販があるのは便利だな、中学の時はなかったもんな、しかも、俺の大好物のオンスターが置いてある、180円でちょっと高いけど美味しいから許せる。
それにしても1時間目コース選択って言ってたけど、もう決めてるからやることないんだよなー、寝るか。
「その大太刀、そして腰にぶら下げてる妖刀童子切、お前が5組の丑崎か。」
誰だよ、飲み物くらいゆっくり買わせろよ。
「そうだけど、なにか御用か?」
「そうか、ならば覚えておけ、俺は1年1組の千代川宗則(ちよがわむねのり)、お前を殺す男の名だ!」
何それかっこいいな、今度から妖魔倒す時そう言おうかな。
なんて思ってたら千代川とやらが既に斬りかかってきた。
「おいバカお前、許可なく校内で武器使うの校則違反だぞ!」
「そんなことは知らん!妖魔を殺すんだ、文句は言われない!」
「俺は妖魔じゃねぇ!って話を聞け!」
この野郎ブンブン刀振りやがってバカなのか?
「俺の家では妖魔は斬るべきものだと教わっている、その教えに従いお前を斬る!」
「だ!か!ら!俺は妖魔じゃねぇって言ってんだろ!早くやめないと先生来るし次の授業間に合わないしで面倒くさいんだよ!」
攻撃を避けながらなんとか言葉で止めようとするがなかなか止まらない。
「なに!?もうそんな時間なのか!?ぐぅぅ仕方あるまい、今回は見逃してやろう、次見かけたら必ず殺す!またな!!」
止まった、というか帰った。
またな!!じゃないわ、会ったらまた殺されそうになるじゃねぇか。千代川って言ったか、ただのバカだろあれ…もしかして1組はバカの集まりなのか?
もうどうでもいいや、教室戻るか…
あれ?オンスターは??
あっ…
真っ二つに斬られてた…
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