第4話
サガ・ハルミヤは絶望していた。
お前が光の力を受け継いで魔王を倒すのだと言われ、幼い頃から懸命に剣の修行に打ち込んできた。
いつの日か、光の力で太陽の剣を抜くことを夢見て。
それなのに、太陽の剣を抜くことが出来たのは、剣など握ったこともなさそうな細腕の聖女。
サガに残されたのは、事案扱いされるしかない呪われた力。
「ご先祖に顔向けが出来ない……っ! 俺はこの呪われた力を抱えて旅に出る。探さないでくれ……」
「呪われた力って「浄化の力」のこと!? 旅立ってどうするのよ! 私だってこんなごつい剣が抜けるだけの役に立たない力を与えられて途方に暮れてるんだから!」
「そなた達っ、神聖なる「光の力」と「浄化の力」に対して何という言いぐさです! 罰当たりな! 悔い改めなさい! そして私を下ろしなさい!」
「「元凶は黙ってろ!!」」
その時、機を窺っていた男が動いた。
「ちょっと良いか。相談があるのじゃが」
大神官である。サガとルーシーと女神にやりとりを一部始終目にしていた彼は、彼らに重大な話をしなければならなかった。
「この後の儀式はどうする?」
「「「あ」」」
この後の儀式、とは、勇者と聖女が無事に力の継承を果たしたことを祝うセレモニーだ。
王宮前の広場に集まった国民の前で、勇者が太陽の剣を抜きその勇姿を皆に示し、聖女が浄化の火を生み出して人々の心に安堵と安らぎを与えるのだ。
そして勇者と聖女は国王の前に進み出て、魔王を倒す誓いを立てて旅立つという流れになっている。
王宮には朝から人がつめかけ、勇者と聖女が現れるのを今か今かと待っている。今更ドタキャンは出来ない。
「万が一、継承に失敗したことが民にバレたら、国中に絶望が広まり、人々の心は荒廃し世は乱れるじゃろう。このことは決して誰にも知られてはならぬ」
大神官はサガとルーシーにそう言い聞かせる。
大神官の地位に登り詰めた男は、今さら偽装工作ぐらいで動じることはない。秘密を守れる者が組織では上に立つものだ。
どうやってこの苦境を乗り切るか。
三人と一匹(女神)は頭を悩ませた。
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