第3話 宝具の一族の歴史

  北山から颯爽と下ったグレンは西の門を潜り村へと戻ってきた。

 朝よりも人々が行き交う姿があり、際立って盛り上がっている箇所では野菜や肉などの売り買いが行われていた。


 その横を通り過ぎ、村の中心へと向かう先に長老が住む屋敷があった。


「おーーい、じいちゃん!グレンが来たぞ〜!」


「ほっほっ、来たかグレン。ほれ中へ入れ」


  村の長老の名はリュウゲンという名で、グレンの実の曾祖父であり、2代前の当主でもある。

 80歳の見た目であるが、実年齢は205歳という年齢であり150歳まで当主をしていた。身長は170cmと村の中では小さいが、裾から見える腕には無駄のない筋肉が着いている。

 白髪で彫りが深く鼻の下の髭を左右に伸ばし、顎の髭は長く伸びていた。顎の髭を触り杖をつきながら歩く姿は年相応ではあるが、威厳や目の奥の瞳に力強さが残っている。


  リュウゲンの後を追い、中に入ると大きな広間があり、その中心に庵があった。そのままついて行くとこじんまりとしたリュウゲンの部屋まで行き着いた。


「ほれ、そこに座れ。もう少ししたらセンとレイが来るはずじゃ」


「え、父さんと母さんも来るの?」


「そうじゃ、お前の大事な話しだからなあ。現当主も呼ぶじゃろ。それまで茶でも飲みながら鍛錬の話を聞かせておくれ。」


「なんか大事みたいで、なんかなあ。あ、俺は麦茶で!そうそう今日やっとレグさんに勝てそうだったんだよね〜そしたらさ……」



 グレンは今日の朝の話をリュウゲンに話し、お茶を飲みながらボリボリとお菓子を食べて話す。

 リュウゲンも顔を時折くしゃくにしながら、笑いグレンの話しを聞いている。

 一刻も立たない時に、外からセンとレイの声が聞こえてきた。


 ガラガラと戸を開けると、グレンと同じ綺麗な銀髪で彫りが深く、ゴツゴツとした大きな筋肉を持った190cm程の巨躯で額に大きな傷を持った父親のセン。そして黒髪で涙袋にホクロがありる奥ゆかしい顔立ちの美女で、出るところは出るメリハリのある身体を持ったギャップのある母親のレイが部屋に入ってきた。


「じいさんお入るぞ」


「リュウゲンさん、失礼します。センさんこの上に座って? グレン、朝の鍛錬頑張って来た?」


「父さんおはよ。母さん、朝早すぎるし、眠いしでもうクタクタだよ」

 グレンは軽口を叩くが、父親のセンにキッと睨まれ首をすくめた。


「ほっほっ、グレンは色濃く一族の血を引いておるが、言動はワシに似て自由じゃなあ」

 そんなやり取りを見てリュウゲンは笑うのだった。



「じいさん、早速だか分かったことを話して欲しい。この話が終わったらまた山に入るかもしれん。東の山の方で魔物か、魔獣らしきものがいるみたいなのだ。他の狩人がそいつを追っているが、まだなんなのか検討もつかん」


「ほーそうか。狩人達が追えんとは高位の魔物か魔獣かのう。村の方に向かってこんなら、魔獣かもしれぬが。それなら早速話すとしようかのう」


 神妙な面持ちで、グレン家族はリュウゲンの話をまつ。


「単刀直入に言うとな。グレン。お前さんは宝具は今後も使えないことじゃ。これはグレンが1番分かっていることかのう」


 父のセンと母のレイは顔を顰め、顔を下に逸らす。これまでこのように断定して言われた事がなく、まだ何かしらの道があるのではないかと期待していた分、落胆も大きかった。


「前にグレンにはまだ早いが、こんな時だ。一族に関してワシから話そうかのう。これは成人の義を終えたものから代々聞かされることじゃ。この村の一族に関してからじゃ。まず我ら一族の祖先は魔獣と魔人族との混血だと言われており、生粋の戦闘民族じゃ」


 グレンは神妙な面持ちから、ビクッと目を開く。まさか自分に流れる血がそんな大層なものだとは思っていなかった。


「ほっほっ。びっくりしたじゃろ。まさか魔獣と魔人族とはのう。ワシも先代から聞いた時は信じられんかったわい。しかしのう、グレン。人間が書いた本を見たことがあると思うが、我らの中に人間には無い力があるじゃろ。ワシのように長寿であり、体の奥底から溢れ出る力やぐつぐつ熱くなる血が」


 心の中で人間とは違うことは、グレンにも分かってはいた。人間が書いた本にはじいちゃんみたいに長生きする人や、戦闘になると血が滾ることあったからだ。ましてや、北山のような所を何も使わず生身の体でスイスイと登れるはずもない。


 リュウゲンは曾孫のグレンの頭がキレることをよくしっておひ頷くと、続きを話した。



「昔の一族らは何千と住む都が大陸の中央にあったそうじゃが、ある時を境に、極小数になってしまった。

 その時に起こったのは全大陸を含めた戦じゃのう。いくつもの種族がその時に消えたとも言われおる。最初我らは魔族側であったようじゃが、その前から人間とも交流はあってのう、魔族側の長がそれをよしとせず、我らを義賊だと評し、根絶やしにしようとしたのじゃ。

 その時の長は徹底的に対抗したのじゃが、流石の数には負け一族の大半は人間の陣地に逃げのびた。そして元々交流があった人間、バレンティア王国の王が助けてくれたのじゃよ」


 ふぅーとリュウゲン息を吐くとお茶を啜り、頭をフル回転させているグレンを見る。

 グレンもリュウゲンやセン、レイをみて次から次へと入ってくる情報を消化しながら頷く。


「ほっほっその様子はちゃんと着いてこれてるのうグレン。お前さんは頭が良いのう。センやレイはこれを聞いた時、何が何だかと質問攻めされた記憶があるのう」


「さて続きを話そうかのう。バレンティア王国も魔族や他の種族に領土を奪われていたのじゃが、バレンティア王国の王、バレンティア・フリードは、手堅く親身になって助けた。

 人間にとっては、一族は自分だけの武器を作り、肉体は強靱で畏怖の対象ではあったため魔族の手先だ奴隷にと反発が大きかったそうじゃ。しかしその前にフリードの親だった先王を魔物から助け都で介抱し王国に返させたことがあったためその反発の声を沈め手を取りあったのじゃ。


 お互いに協力し人間は盾に、一族は矛になる盟約を結んだそうじゃ。フリードと共に協力し、魔族を次々と打ち返した一族は他の貴族と共に領土を奪還し今のバレンティア王国の領土となった。

 そのため例外に一族に辺境伯としての身分と、この北西にあら広大の山を授け、魔獣を狩ることを託したのじゃよ。それが今我らが住むこの場所じゃ。


 そのためバレンティア王国にも我らの祖先が祀られておる。今も少なからず交流はあるのじゃ。それが月に1度来る行商でも分かるじゃろ?あれは、王都で有名な物などが運ばれておるのよ。そして我らは魔物を排除しそれらを渡しておる。これが大まかな我ら一族の歴史じゃよ。」


 グレンは自分の知らなかった一族の歴史を知り、祖先を誇りに思った。

(俺にも流れる血が、そんな歴史を歩んできたのか……。こんな山奥で過ごす理由も今なら理解出来る)



「ちなみに、我ら当主の一家は、貴族としてアビスという性を持つのじゃよ。そしてここからがグレンお主の力に関してでもある。魔族をどのように打ち返したのか、それは我らの強靭な肉体や力だけではない。我らの大いなる力は己自身が作り出す宝具じゃよ。

魔獣と魔人族の血が混ざりあい、新しくできた血が力であり、この世界ではわしら一族しか持つことが出来ない力なのじゃ。この血が流れる以上、宝具を化現させることが出来るはずだとワシも思っておったが……グレンの1番の理由は先祖返りが濃厚だと考えておる」


 目を開きながら、センはリュウゲン聞き返した。


「じいさんの話を聞くに、2つの種族の混血によって、今の俺らの力が出来たと言った。しかし先祖返りだ?何百年も経ってるのに先祖返りするなんて、有り得るのか?? グレンの流れる血も俺と同じであるのはグレンの力を見ても分かることだ。先祖返りってのはどっちかの血が色濃くでることだろ?」


 

(先祖返り……? よりによってなんで俺なんだ、!)

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