第8話
「昨日は楽しかった?きっと遅くなると思って準備しておいたんだ。私悠夜のことは何でもお見通しなんだから。」
玄関にいた奏は準備していたものを差し出しながらこう言った。
「あぁ、ありがとう。」
「お義母さん心配してたんだよ?私の家で勉強してたら寝ちゃいましたって言ったら安心してたみたいだけど」
僕の母さんをお義母さんなんて呼ぶ奏にすこし驚くが、僕のためにしてもらったことではあるので感謝する。
「あぁ…それは悪い事をしたな。」
「ついでだから一緒に学校行こうか、どうせ朝ごはんは食べてきたんでしょ?」
そう提案されたが、
「ごめん、玲香に悪いから。」
そう断って走って学校へ向かう。
「先輩待ってました!」
校門の近くで僕を待っていたそうだ。
「桐島先輩がまだ学校に来ていないって聞いてもしかしたらって不安なってそれで待ってました。」
「奏はいたけど、特に何も無かったから…安心してくれ。それじゃ行こうか。」
「二人で一緒に遅刻するってなんかドキドキしますね先輩。」
教室に着くと窓から校門方面を眺めていたクラスメイトにドヤされながら、授業に参加する。
僕が着いてからしばらくして奏も教室に入ってきた。
「もう悠夜のせいで全然寝れなかったんだよ。」
そんな爆弾を教室に投下しながら。
「えっ!お前朝一緒に来てた子じゃないのか!?」
そう窓際の男子が叫ぶ。
「えっ、それって二股してるってこと?」
その近くの女子がこちらをゴミを見るような目で見ながら言う。
「ち、違う!僕が付き合ってるのは奏じゃない!後輩の泉玲香って子だ!」
そう弁明する。爆弾を投下した。奏に目をやると、楽しそうにこちらを見ながら授業の準備を何事も無かったかのように始めている。
「おい奏!なんか言えよ!」
そう言うと、奏はニヤリと笑って立ち上がる。
「ここで私が悠夜と付き合ってるのにその後輩に寝盗られたって言ったらどうなっちゃうんだろうね?」
そう耳元で小声で言う。
そんなこと言われたら僕の学校生活はもう終わってしまう。そう考えて顔を青ざめていると
「じょーだんですーっ!昨日1人で私は寂しくゲームしてたわ。どっかの誰かさんを誘ったのに後輩とお泊まりデートだなんて言うせいで!」
そう教室全体に聞こえるように奏は言った。
なんだよつまんねぇなとか、言葉を吐きながら周りのクラスメイトは消えていく。
「あーぁ、チャンスだったのにな。」
そう奏は小さな声で呟く。
「悠夜の学校での居場所がなくなって学校とか辞めたくなって大丈夫だから。私がずっと養ってあげるから。どんなに都合のいい女になってもいい。最後に悠夜と一緒にいれるなら。」
そう僕だけに聞こえるように言って。自分の席に座る。
僕はそれを聞いて、何も答えるわけでもなく、机に突っ伏して外を眺めた。
「玲香に早く会いたいな。」
その呟きは誰にも聞こえなかった。
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