謎の転校生!

ぬまちゃん

お笑いと言えば上方か

「みんなー、静かにしなさい!」

 担任がいつものように生徒に向かって声を上げる。


 ガタガタ、ガタガタ。


 後ろの友達と喋っていた男子達が席を直して担任の方を向いて口を閉ざす。やっと教室の中が静かになったと思ったら……


「ヒュぅー」

「おぉ」


 やっと静かになった男子達から別の声が漏れた。担任の横には見慣れない女子が立っていたからだ。


「ほらほら、静かにしろ! 今から転入生の紹介をするんだからな」


 担任はそう言って浮き足立っていた彼らに視線を向けて牽制する。それから黒板に向いて大きく名前を書き出す。


 『佐倉魔美』


「えー、ご両親の都合でこのタイミングでの転入になった。関西からの転校生だ。じゃあ佐倉さん、簡単な自己紹介をしてくれ」


 担任はそういうと横にいた女子と立ち位置を入れ替えた。


「ワタシ、佐倉魔美言うねん。お父ちゃんの都合で東京に引っ越して来たんや。東京初めてやから分からんことばかりなんやけど、楽しみでもあるねん。どうかみんな、よろしゅうね」


 ベタベタの関西弁で自己紹介してから、彼女はツインテールの頭をピョコンと軽く下げた。


「はーい、質問でーす。やっぱり関西の人は、みんなお笑い芸人なんですか?」

 教室の前の方にいるいつも軽いノリの男子が、手を思いっきり上げながら質問してきた。


「そーやね。ウチらあんま意識してはおらへんけど、ボケとツッコミは息するのと同じくらい普通やね」

 彼女はニコリとしながら軽快に答えた。


「例えばやね……、串カツの二度ズケは禁止やけど、魔法の二度がけはオッケー、とか」

「……」


 彼女の不思議な発言に、クラスメート達は一瞬息を呑む。


「ほら、そこで誰かつっこまな! ナニ、わけわからんこと言ってるんじゃい。中二病じゃあるまいしー、とかな……」

 彼女がそう言ってクラスメート達におどけて見せる。


「おー、なーるほど」

「あは、あははは」

「わはははは、そっかー、そーだよな」


 教室内はそこでやっと砕けた雰囲気に戻った。


 * * *


 あーあー。

 なんでこんなタイミングで関西魔法少女協会から転校生なんか来るのかしら。しかも、よりによってアタシのクラスなんかに。

 その上、自己紹介でいきなりボケかましてるし。こうなったら後で体育館の裏にでも呼んで締めなきゃね。


 * * *


「はいはい、じゃあ自己紹介はそこまでにして、と。佐倉さんは角川君と野辺良さんの後ろの空いてる席でいいかな」


 関西弁の彼女は担任の指示を受けると、俺たちに向かって歩いて来る。そして俺と隣の彼女の前でえへへとポーズをとりながら「角川君と野辺良さん、これからよろしゅうね」、そう言って後ろの席に座った。


 隣の女子はツンデレだけどテストのヤマカン最強だし、後ろの席は中二病かかった関西弁の女子だし。ああ、コレからの俺の人生って楽しくなる予感しかしない。


 神様ありがとう、生きてて良かったぜ。


 ──コレから隣の魔法少女と後ろの魔法少女に学校生活を翻弄されることになるとは、この時の彼には知る由もなかった。\(//∇//)\


(了)

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