第3話 ご褒美

「早くつけてって……できるか!」


 くわっと言って、俺は丸つけ♡された首筋を押さえた。


「つーかな、こんな人目につくとこに付けるなよな!? こういうのは誰にも見られないところにつけるのが、大人のエチケットなんだよ!」

「私、子供だし」


 急に唇をとがらせ、子供ぶる、さより。

 こういうときだけ、ずるいだろ!? 散々、人のあそこ揉みまくっといて、今さら純情ぶるな。可愛いわ、この野郎!


「じゃあ、大人の斗真くん。改めまして……」


 一呼吸置き、さよりはおもむろにTシャツの襟をぐいっと引っ張ると、前かがみになって、


「見えないところにつけて?」

「なっ……!?」


 思わず、言葉を失くした。

 目が釘付けになってしまう。目の前にこれ見よがしにさらけ出された、その膨らみに――。

 清楚な薄水色のブラに収められた、真っ白な双丘。ふわりとして、張りがあって。ああ、きっともっちもちなのだろう、と想像が勝手に膨らんでしまう。

 今にも吸い付きたくなる――が!


「で……できるか!」

「ええ!? 斗真くん、ノーコン!」


 ノーコン……? なぜ!?


「仕方ないなぁ。も〜、世話が焼けるんだから」


 なぜか、憐れみのこもった笑みを浮かべて、Tシャツを脱ぎ出すさより。

 って、なぜ、脱ぎ出す!?


「ぎょあ!?」と奇声を上げ、俺は慌てて目を両手で覆って自主規制。「なんで、脱ぐ!?」

「的を大きくしてあげようと思って」

「的!?」


 ゴソゴソと布が擦れる生々しい音がして、


「はい、できたよ。もう斗真くんの目の前には、人目につかないとこしかありません」


 ――おかしいだろう!?


「お前、ほんと……何してんの!? 勉強しろよ!? 俺、家庭教師なんだけど!?」


 口ではそう言いつつも、下半身は全く逆の主張をしていた。

 目隠ししながら、アソコをおっ勃て、『家庭教師です』なんて言っても、我ながら説得力など無いだろう。

 情けない。情けない……が。体は正直なのである。


「だから〜……ご褒美でしょう? ちゃんと丸つけてくれたら勉強するから」

「……」


 そうか。ご褒美をしたら……ちゃんと勉強するのか。

 ならば……仕方ない。


「じゃ……じゃあ……」


 って、待て。ご褒美はいいとして……このまま、手を外したら、見えてしまうのでは? 教え子のあられもない姿が――。

 それはもう……どっちのご褒美なのやら、分からなくなるだろう!?


「だ、だめだ……! やはり、できない! 俺は、この手を外すわけにはいかん!」

「斗真くん、面倒くさ〜い」とさよりはケタケタ笑う。

「お前が言うか!?」

「じゃあ、後ろ向くよ。背中なら平気でしょ」

「ああ……」


 なるほど。確かに……と思ってしまった。

 背中ならばなんの凹凸も無い。特に見てはいけないものもないだろう。

 名案だ――と思ったのだが。


「は〜い。ちゃんと後ろ向いたよ」


 本当だろうな? と若干の疑いと期待を抱きつつもうっすら目を開けると、


「はぐあ……!?」


 ハッと目を見開く。

 その瞬間、自分がとんでもない誤算をしていたことを思い知らされたのだった。


 たかが背中、されど背中――なのである!


 初雪の如く、白く艶めく肌。きめ細かく、滑らかで……思わず舐めたくなってくるその質感。そして、きゅっと引き締まったくびれに、ほっそりとして頼りない背中。

 ああ、だめだ。理性がガクンガクンと揺すぶられ、目眩さえ覚える。

 今すぐガバッと抱きついて、その身のいたるところに俺の印をつけたくなる。


「斗真くん……」さよりは、急に弱々しい声を漏らし、「早く。――寒いよ」


 ぶるっと震えるその身体がいじらしくてたまらない。


 自然と手が伸びていた。


 爪を立てるようにそっと指先で触れただけで、さよりは「んっ……!?」と妙な声を上げてビクンと身体を跳ねさせる。その初々しい反応が、また俺の中で良からぬ何かを駆り立ててくるから――。


「やっぱり、しねぇ!」

「ええ、なんでよ!?」


 ばっと振り返ったさより。ぷるんと弾む膨らみと、つんと立った桃色の先端がチラリと見えて、俺は咄嗟に自主規制。


「俺は……男である前に、家庭教師であって、お前に勉強を教えるためにお金をもらってここにいるんだ!」

「だから……ご褒美ちょーだい、て言ってるの! そしたら、やる気になるから」

「じゃあ、もっと真っ当なご褒美にすればいいだろ! たとえば……シールとか、だな……」

「シール!?」とさよりは声を裏返す。「斗真くん、私のこといくつだと思ってんの!?」

「高三! だから、まだ手は出せねぇ!」


 さよりがハッと息を呑むのが分かった。

 しんと部屋は静まり返って、


「『まだ』って……ことは……」


 思わせぶりに聞き返してくる声に苦笑が漏れる。

 つい……ではあったけど。まあ、自白したようなもんだよな。


「大学……ちゃんと合格したら、そんときは好きなだけご褒美やるよ」

 

 観念したように言うと、きゃあ、と甲高い悲鳴のようなものが聞こえて、がばっとさよりが抱きついてきた。


「必死に勉強する! すんごいやる気でたー!」

「ああ、そう。そりゃ、良かったわ……」


 はは、と笑って、手を下ろせば、むにゅっと胸元に押し付けられた白い双丘が。

 ああ……そうだった。こいつ、服着てなかったな。

 服越しに伝わってくる、生の感覚のなんと柔らかい――。

 どうしようもなく、ムクムクと下の方で起き上がってくるものがあって、


「あ……斗真くん」とさゆりが耳元でハッとしたように言う。「またエッチな気分になってるな? 私がお口で――」

「勉強するんじゃなかったのかよ!?」


*微エロを書きたいだけで実験的に書いてみた作品だったのですが、ダラダラ続けても蛇足になるか、と思ったので、これにて完結とさせていただきます。

 『調教英単語』という話も考えてはいたのですが、ちょっとアホすぎる気がするので……それはまた機会があれば、ということで。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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家庭教師をすることになった年下の高校生(幼馴染)が、勉強以外に積極的すぎて困る……! 立川マナ @Tachikawa

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