お見合いをしたら小学生時代に振られた美少女幼馴染がやって来たんだが、お前、やたら気合い入れて正座してるけど俺のことからかってんのか...?

雲川はるさめ

第1話

お見合いをしたら小学生時代に振られた美少女幼馴染がやって来たんだが、お前、やたら気合い入れて正座してるけど俺のことからかってんのか...?



時刻は午後1時を少し回った頃。

場所は高級料亭の個室。

席料も取られたし、1万円の懐石料理が

途中まで出されたところ。


「なんでお前が来たのか説明願おうか...?」


「は?それがわざわざ正座までしてあげてる幼馴染に対して言うセリフ?

ちょっとは労いなさいよ。こっちは来てやったのよ。

しょうがなくね!」


「どんな風に労えばいいのかお教え願おうか...?」


「...バカね。例えばそうね...。

足を崩してもいいんだぜ。痛いだろ?

痺れたら大変だろう...とかかしら?」


「なるほど。足を崩してもいいんだぜ。

痛いだろ。無理すんなよ...」


「全くもって、棒読みではダメね。

なってないわ。そんなんじゃダメ」


「は?優しくできるわけねぇだろ...。

学生時代、

お前には散々振られて、こっちはメンタルズタボロにされたわけよ。振り返ってみせよう...」

「あれは小学5年生の時だった。

俺は中庭の銅像の前にお前を呼び出し、

お昼休みに告白した...。それなのに」


「あー、小5?そんなこともあったかもしれないわね。でも忘れたわ。そんなこと」


「「私、サボり癖のある男とは付き合えないって言ったな!確かに俺は勉強も体育の時間も

かったりぃと思って適当に流してたけども」


「....さぁ、どうだったかしら」


「俺は覚えてる。俺はその後。お前を惚れさせるべく滅茶苦茶努力した。

髪型とか清潔感とか気を遣って、、!

勉強も頑張ったし、授業中、発言だってした」


「そうね。頑張ったことは認めるわね」


「だけど、お前は振り向かなかった。

なんでだよ?小学生のときの二度目の告白で

またもや、あんたとは付き合えないって

言った!」



「二度目の告白に於いて。小学6年生の私は。

なんか、やっぱりもっともっと努力できる

男子がいいと思って振ったわ!」


「それなのに。なんで、今日ここにいるんだ!」



「それは、今、言わなきゃいけないこと?

折角の懐石料理、冷めちゃうわよ?

高級料亭の個室を借りて、お互いの親には

席を外してもらってる今、ここで答えなきゃいけないわけ?」


「あー、そうだ。答えなきゃいけねぇだろ。

大体、なんで、二度目、俺のこと振ったお前がここにいるよ?どーして、

俺なんかとお見合いしてるよ?」


「....さぁ?」


「さぁ?ってそりゃねぇだろ。

俺は、今、30。もういい年なんだから真剣に家庭を持って

身を固めたいんだよ。何でお前と好き好んで見合いをしなきゃいけなくなってんだよ?」


母親が持ってきた縁談だった。

「才色兼備のお嬢様よ」

などと言われて写真とかは見せられぬまま、

気合を入れてスーツを着て来たのに。


「お前が来るとか!?なんで!?」


「来てやったの。

親があんた早く結婚しなさいってうるさいから

仕方なく」


「いやいやいや、まてまて。

お前は誰とお見合いすんのか聞かされてたわけだろ?違うか?

断れよ、俺のこと嫌いなんだろ!!

ふつーは!お見合いって、初顔合わせで

やるもんだろ?」


「聞かされてなかったよ。

会ってからのお楽しみだよ、って母さんに言われてた」


「マジか...。

そんな見合いがあるのか。。

俺は聞かされてなかったから、今ここに

いるわけで。

お前だってわけもわからん見合い相手の

見合いにくるなんて、おかしくねぇか!


大体、お前が断わらないから!俺とこんなとこで面と向かう羽目になった、そうだろ?」


「そうね」


「もう、いっそ、お開きにしちまうか。。

俺はもう帰りたくなってきたな」


「でも、料理はまだ途中だよ。。

もったいなくない?折角の高級料理だし、、」


「...そうだな。。

確かにまだ料理は途中だ」


俺たちは黙々と料理を口に運んだ。

俺が出してるお金。

確かにこのまま帰ったらもったいないもんな。


「美味しいね、シンジ?

この松茸の土瓶蒸し、、」


「そうだな。うまいな」


「ねぇ、シンジ。

ちょっと聞きたいんだけどさ。

今日の私の髪型とかどうかな?

ハーフアップにしてんだけど、これって、男受けする?」


「メイクだって、これ、私がやったんじゃなくて、有名なメイクアップアーティストに頼んでやってもらったんだけど...」


「ふーん...」


「ふーん...って!シンジ!素っ気ない!!

もっとこう、みちがえるね、とか、可愛いね?とか、ないわけ???」


「みちがえるね。かわいいね...。

これでいいのか?なんかお前に言ってもなぁ」


「その言い方、気持ちが入ってないっ」


「よ、よく考えてよ。ふ、ふつー、なんとも思ってない相手に、

こんな気合い入れないでしょ??

シンジだって、気のない相手とのお見合いだったなら、適当なカッコしていくでしょ??

つまりね...その...」


「実は知らされてたの。

見合いの相手...だから頑張って、、、」


「ん?...それってもしかしてもしかすると、、

俺のこと、実は...」


「もしかしてもしかするわね...」


「好き...??」


ふたりして同時に。

そんな言葉が出て。綺麗にハモった。


「なんだよ。好きなら、好きって

学生時代に素直に言えばよかったじゃんか」



「それに、二年前に俺がお前のこと好きかもしれないってメールで呼び出した時も盛大に振ったよな?」


「年収1500万の男になってから告白しろとか言って、俺にデータサイエンティストの資格を取れって豪語したよな...!」





「そ、そうね。そんなこともあったわね。

で、シンジってば頑張ってその資格をものにしちゃったのよね。...

シンジの成長が楽しくて、好きって言えなかったの!その言葉、なかなか言えなかったの。なんか気付いたら今になっちゃったの!」


「ぶっちゃけると。昔、告白された時も

まさか、シンジに告白されるなんて思ってもみなかったから、好きって返せなくて嫌いって言っちゃったの。


で、正直に言っちゃうと!


今日のこのお見合い、仕組んだの私なの。

おお急ぎお互いの親にセッティングしてもらったの!!」


ガクッ。


力が抜けた。


俺がはぁ。とため息をつくと。


マヒロのやつも、足をへにゃんと崩した。



「んだよ。なんか、一気に力が抜けたわ」


「私も抜けたわよ。長年の想いを吐き出した感じだから」


「で、どうすんの。このお見合い?

もう料理はそろそろデザートが来るんじゃないか?前菜、、焼き物、お造り...ご飯物...水菓子...で終わりだろ?」


俺がそう言うと。

マヒロは思い切ったセリフを吐いた。


「婚約で締める?」


飲みかけのほうじ茶を吐き出しそうになった。


「え、今なんて?」


「今、ここで結婚の約束してあげてもいいケド??」


「え」


「私はもう、他の男のひととお見合いする気はないけど?てか、この先、合コンに行く気もない。

というか。ぶっちゃけた話をするとね。

未だかつて、合コンは行った事ない。

で、お見合いは今日が初めて。

で、大事なことだから、もう一度言うけど今後、一切、

婚活めいたこと、するつもりないからね!」


「...シンジはどーするの?

この先、お見合いしたり、合コン行ったり、

婚活パーティーに顔を出したりするわけ??」


上目遣いで。

俺の方にぐい、と、身を乗り出して。

そんな問いかけをしてきたマヒロ。


俺はそんなマヒロがやたら可愛く見えてしまって。勿体ぶってみた。


「うーん。どーしよっかなぁ。

迷うなそれは。他の女に会って色々喋ってみたいし。そうだなぁ。同い年もいいけど、歳上

の女なら、甘えられるし、一方の歳下は守ってあげたいって、思ってしまうかもしれないし...」



「....な!!な、によ!!私が一途に

愛してあげようって思って言ってんのに!!」


目をうるうるさせて。

なんか、泣きそうな顔したので。

益々、可愛いって思った。


冗談はこのくらいにしておこうと思った。


「ごめん。いまの嘘。俺、今後は婚活めいたこと一切しないよ」


「...ほんと??その言葉、信じていいのね?シンジだけに...」


「...おう」


俺達はこの場で。


結婚の約束をした。


小学五年生。

11歳の時。

俺は美少女幼馴染に振られて意気消沈していたが、実は振られてなかった。


それから19年の歳月を経て、漸く。


「これ、婚姻届。今すぐここにサインして」


「用意周到だな。おい」


高級料亭の個室にて。


俺はボールペンを走らせ、印鑑を押すことになった。


こうして、

俺達は籍を入れ、

恋人の期間なんてろくになく。

もうなんか、そのあれだ。

彼氏彼女の期間をすっ飛ばして夫婦になっちまったわけである。


お見合い後、

ハイスピードに結婚して嫁と旦那になって

しばらく経ったある日の朝。


俺は会社がかき入れどきで仕事が忙しく、妻であるマヒロに残業で

遅くなることを出勤前に告げたんだが、

滅茶苦茶疑いの目を向けられた。


「シンジ!!今日は残業で遅くなるってそれ、ほんと?

もしかして、他の女のとこに行くとか!?」


「行かないよ。俺、マジで仕事なんだよ」


「ちょ、ちゃんと目を見ていいなさいっ」


「今日は残業で遅くなる...」


「うん、よし。じゃ、行ってきますの

キスして?」


「ん!!」


なんか毎日、めんどくさいけど。

ヤンデレ可愛いから、まぁ、よしとするっ!


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お見合いをしたら小学生時代に振られた美少女幼馴染がやって来たんだが、お前、やたら気合い入れて正座してるけど俺のことからかってんのか...? 雲川はるさめ @yukibounokeitai

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